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③まずい事実
その日。晴れていたけど台風が来たから散歩はお休み。あの少女も台風の日はさすがに来ないだろう。
そして、台風情報を見るためテレビをつけた。
どうやら台風は、規模も大きくなりながら私の住んでいる場所に接近しているそうだ。
九州の一角はもう浸水しているらしい。死者が出ないことを願う。
すると、いきなり気象予報が速報に変わった。
『速報です。午後、〇〇県〇〇市でトモキ君という小学生の男の子が同級生に突き落とされ、ひかれて死亡する事故が発生しました。警察は突き落とした同級生や運転手に事情を聞き、突き落としの動機を調べています。』
テレビには『〇〇市で突き落とし事故 小学生男児死亡』のテロップと、晴れた事故現場の映像。
まだこの地域には台風が来てないのだ。…じゃなくて!この事故、なんか聞いたことあるぞ。
「あ、前のノート!」
前に読んだノートの内容を思い出す。
王様役のトモキ君が理不尽なお嬢様・マリアによって突き落とされる事故が起きた…という内容だ!
「たまたま…だよね?」
名前も、事故の背景も一致している…?
背筋が凍るように震えていると、ニュースキャスターがまた話し始めた。
『えー、さきほどお伝えした事故の情報が入ってきました。トモキ君を突き落としたMさんは「王様ドッジで王様役になっててにくかった。私が王様」と言っていると言うことです。以上、速報でした。では、台風●号の情報をお伝えします。』
ニュースキャスターは平然とした顔でそう言い切り、画面は台風の進路予報に変わった。
もし、これがノート通りになるなら、水酸化ナトリウムの悲劇も起こるんじゃ………
また背筋が凍りような悪寒がして、私は慌ててチャンネルをいつも絶対見ないアニメに変えた。
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翌日、カラッとした晴れだった。
台風は九州を襲った後に日本海側に進路を変更。私たちの街は壊滅を免れた。
そして、散歩をしていると車道を救急車がサイレンを鳴らして通って行った。
そして、お決まりの公園に着いた後、ベンチにまたあの少女がいた。
いつもは遠くからで容姿ははっきり見えなかったが、やっとわかった。
真っ黒の上着を羽織り、真っ黒のズボンと真っ黒のスニーカー。光のない黒い瞳に黒い艶のない髪。
まさに「黒ずくめ」。
少女は青ざめながらもニコニコ笑い、万年筆をノートの走らせていた。
人は死んでほしくない。
でも、少女の書くリアリティー満点バッドエンド物語を読めないのも嫌だ。
私は何もせず、突っ立ってることしかできなかった。
そして、怪しまれるかもと遠くへ行き、少女の様子を伺った。
少女はしばらくすると万年筆のインク瓶を取り出し、その中に万年筆を浸からせた。その途端…
**少女は、消えた。**
でも、いつも通りノートは置いてある。私はまたベンチに座って、ノートを読んでみた。