公開中
あの日。
|彼奴《アイツ》の悲鳴が聞こえる。
体を切り裂かれ、目を抉られた音がする。
オレは手を伸ばす。伸ばしたが…
届かなかった。
後少し早かったら。自分がこの街を離れなかったら。もう少しだけ、賢かったら。
こんな事にはならなかったのかも、しれない。
そんな後悔が頭に過る。|腸《はらわた》が煮え繰り返る気がする。怒りと、憎しみと、悲しみと…後は知らない。
ただ一つだけ言えることとしたら、これは異常な事だ…何故ならここまで付き合いの短い相手だというのに喪失の意が遺り続けているからだ。
天秤座曰く、オレは千年は生きているそうだ。*最もそれは確かかは解らないが。*
それだけ長く生きていれば出会いも別れもある。勿論幾度となく経験した。はずなのだ。
それだというのに、どうも業が煮える。
この感情の代償は…|奴《蛇使い座》に払って貰うとしよう。
…あれから数週間が経った。
被服師に言われて中枢で待機しているが、奴の来る気配はしない。だがその機会は直ぐに訪れると予感していた。
その時の為に己が刃を研ぎ澄ます。座禅を組み目を閉じ周囲の気配を感じ取る。
ふと背後から人気を感じて直ぐ様武器を振り被った。と、
「うわあ危ないな!?」
間抜けな声が聞こえた。被服師だった。
あまりの殺意に冷静さを欠くとは此如何に。
「いや…何日もここから動いたとこ見てないから心配で…」
…気がついたらそんなに時が経っていたのか。心外だ。
「張り詰め過ぎないでおくれよ…いつも通りの君でいいんだ。君は強い!」
「今更上げられてもな。」
「沈みきるよりマシだろう?…まあ、心中お察しするけどさ。」
「…」
胸騒ぎがする。その時が来たようだ。
再び座禅を組み集中力を高める。
「頼んだよ蠍座……君が、この世界で最後の希望だ。」
足音がする。奴が現れた。
明確な殺意と緊張が伝わって来ている。
奴を始末するまで………
そうかからないだろう。