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足りないきみは風を喰む5
|「皆んなでお弁当、食べましょうか!」《命子》
全て彼女が作っているという綺麗な弁当を、それぞれ広げている。
|「んぇー、肉食べたあい…あ、そうじゃんここ、腐るほど肉ある… んにゃ、すこぉしばかりおさんぽでも行こうじゃないか〜 美味しそうな子いーないっかな〜。美人ほど美味しいのよねぇ〜。あー考えるだけで食欲そそるゥ。ふんふーん」《サヴェル》
一段目に詰められた辺り一面の野菜を見つめながらも、微笑み鼻歌を口ずさみながら受付を越えて病棟へ走り出してしまった。
|「あーあ、開けたらちゃんと入ってるのに…ねえ、彼の分まで誰か食べない?」《命子》
弁当の二段目の中心を飾る大きなハンバーグに魅入られ、迷わず声を上げる。
|「あ、俺食べます…ハンバーグ、好きなので」《五喜》
|「ふむ、あなたはハンバーグが好きなんですか?素晴らしいですねえ。ワタシもです」《アリス》
|「じゃあ、半分にしましょうか」《五喜》
少しずつ箸で割っていると、中から髪の毛が伸びた。その途端によぎった嫌な考えを忘れるためにも、髪の毛を引き抜いて床に投げる。
|「ねえ、あんさんが雫を殺したの?」《メルテス》
背後に座っていた彼女が、こちらに体を向けずに話しかけた。
|「ごめんなさい、ごめん、なさい」《五喜》
|「雫は仲間だった、すいーつ仲間」《メルテス》
|「__ ごめんなさい __」《五喜》
|「…このままだと、命子の奴隷になっちゃうよ?いいの?」《メルテス》
答える前に、弁当を持ちながら他のナースに話しかけに席を立ち上がっている。
|「叶飛!みーつけた!これあげる」《メルテス》
|「お、マジ?さんきゅ」《叶飛》
|「んはっ、やっぱお前良い奴だよな。」《叶飛》
それからしばらくの間、楽しいはずの食事の時間が続いていた。