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第7話:試される絆
ファントムへの疑念を抱きながらも、彼らは次の任務へと駆り出された。ターゲットは、裏社会の情報屋だ。高遠修二暗殺の裏側を知る人物であり、彼らの手によって情報を封じ込める必要があった。
今回の任務は、アジトへの潜入がメインとなる。雷牙は外からの監視、仄、白藍、玲華の3人が内部へ侵入する計画だ。
「ターゲットのアジトは古い雑居ビル内。内部は迷路のようになっている。警戒は厳重だ」
雷牙が情報を共有する。
「私と仄で撹乱し、白藍がターゲットを確保する」
玲華が指示を出す。
「雷牙は、もしもの時に備えていつでも撃てるように」
計画通り、3人は雑居ビルに侵入した。内部は予想以上に複雑で、警備員も多かった。仄は素早い動きで警備員を次々と無力化していく。白藍は、仕込み杖を駆使して接近戦を制し、ターゲットの部屋へと向かう。
その時、予期せぬ事態が発生した。
「雷牙! ターゲットの部屋に、別の組織の人間がいた!」
白藍からの緊迫した無線が入る。
「どうやら、私たちより先にターゲットを確保しようとしているようだ」
「くそっ!」
雷牙が舌打ちをする。
「ターゲットの抹殺を最優先しろ!」
白藍はターゲットと、もう一人の男がもみ合っている部屋へ突入した。男は白藍に気づき、ターゲットを盾にしようとする。
「邪魔するな!」
男が叫ぶ。
白藍は、仕込み杖の刃を抜き放ち、男に向かって突進した。しかし、男は予想以上に強く、白藍の攻撃をいなして反撃してきた。
一方、仄は別ルートからターゲットの部屋へ向かっていたが、途中で待ち伏せに遭ってしまう。複数の敵に囲まれ、絶体絶命の危機に陥る。
「仄、大丈夫か!」
玲華が駆けつけようとするが、彼女の前にも敵が現れる。
その時、雷牙は外から事態を把握していた。仄と白藍が危険に晒されている。
「くそっ、間に合わない!」
雷牙の脳裏に、幼い頃の孤児院での記憶が蘇る。年下の子供たちを守るために、必死で戦った日々。血は繋がっていなくても、彼らは彼の家族だった。
雷牙は、感情を抑えきれず、冷静さを失いかけた。
「お前ら、絶対に死ぬな!」
彼はスコープを覗き込み、仄を囲む敵の一人を狙う。引き金を引くと、男は即座に倒れた。その隙に、仄は残りの敵を次々と倒していく。
白藍もまた、男と激闘を繰り広げていた。男のナイフが白藍の頬をかすめ、血が流れる。
「白藍!」仄が叫ぶ。
その声を聞いた白藍は、ふと幼い頃の仄の顔を思い出した。自分を信じてくれる、唯一の存在。
「絶対、守る」
白藍は、仕込み杖を力強く振るい、男のナイフを弾き飛ばした。そして、一瞬の隙をついて男の胸に刃を突き立てる。
任務は完遂された。しかし、彼らは皆、自分の中に湧き上がってきた「仲間を失いたくない」という強い感情に戸惑っていた。それは、ファントムが禁じたはずの「人間的な感情」だった。
隠れ家に戻った後、4人は互いに怪我の手当をしながら、静かに向き合った。
「私たち、感情的になってた」
玲華が口火を切る。
「ああ。あれはプロの動きじゃなかった」
雷牙も認める。
白藍は、仄の顔を見た。
「でも、後悔はしていない。君たちを守るためなら、何度でも感情的になる」
仄は、白藍の言葉に頬を染めた。彼らの中に芽生えた感情は、偽りの楽園への執着よりも、もっと本質的なものだった。それは、互いを思いやる心、そして「絆」だった。
この日を境に、彼らの中で任務とプライベートの境界線は、少しずつ崩れ始めていった。
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