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元素記号ものがたり
秋雨きのこ
野田弘樹 H(水素)…身重168センチ。陽キャでチャラ男。
神田洋平 C(炭素)…身重180センチ。Carbon図というバンドでボーカルをやっている。
おーちゃん O(酸素)…身重163センチ。陰キャだがかわいい。
「おーちゃん、つきあってください!」
わたしは自分の目と耳を疑った。だって相手は陽キャでチャラ男の野田弘樹。その弘樹が、真剣なまなざしでこちらをみている。
「も、もちろん!」
弘樹がにこっとほほえんだ。
「よかった、おーちゃんにOKしてもらえて」
会話を反芻しながらスキップして家にかえると、ドアのまえにふたりのおんなの子がたっていた。ふたりとも肩につかないくらいの金髪を、のばしっぱなしにしてたらしている。前髪はセンターパートというのか、おもすぎる触角というのか、とにかくおでこをだしている。なんの変哲もない、白い服を着ている。顔のほりがふかくて目がおおきい。くっきりとした二重で、まつげもくるんとながい。
「こんにちは。いきなりすみません。びっくりされましたよね。わたしはシェリー、この子はナンシーです。イギリスからの帰国子女です。」
背が高いほうの子がいった。
「いえいえ、こちらこそどうぞよろしくね。私はおーちゃん。102号室にすんでいるの。」
わたしのすんでいるマンションは空きがおおい。どこに住んでいるのだろうか。
「あっそうなんですか!わたしたちは103号室にすんでいます!」
おとなりに住んでいるのか。これまではとなりにだれもいなかったし、一階に住んでいるというのもあって、一軒家とおなじようにすごしていたが、これからはきをつけなきゃ。
「おーちゃんがやさしくてよかったです。ほかのへやにもあいさつにいったんですけど、外人ってだけでなんかよそよそしくされちゃうのが、わたしたちは悲しかったし、つらかったんです。」
信じられない!生まれでひとを差別するなんて!プリプリしながらへやにもどると、弘樹から電話がきた。もちろんワンコールですぐでた。
「もしもし、おーちゃん?じつはおれ、Carbon図っていうロックバンドでドラムをやっているんだ。ジャンルはU.K.ロック。」
Carbon図?知らないなあ。
「ごめん、わからない…。」
弘樹を傷つけてしまっただろうか。でも知ったかぶりしてあとでばれるほうがきずつけてしまう。
「ううん、しらなくてあたりまえ。なんせ、テレビにもいちどもでたことないんだから。でもライブハウスへの出演や、路上ライブは積極的にやっているよ。今夜6時にも駅前でライブするんだ。よかったら見に来ない?」
絶対たのしそう!
「もちろん!見にいくよ!」
それにしても、さっきシェリーが外人というだけでよそよそしくされるのが悲しいといっていたが、ちゃんと日本人もイギリスにあこがれをもっているじゃないか。そうだ、ふたりをさそって、ライブを見に行けば、弘樹もよろこぶだろうし、ふたりだって元気がでるはずだ。203号室のチャイムをおした。
「私のカレシがCarbon図っていうUKロックバンドのドラマーをやっているんだけど、まだぜんぜんうれていないみたい。今夜6時に駅前でライブするんだって。日本人はイギリスにあこがれをもっているんだよ。まだふるい偏見をもっているのは、一部のひとだけです。よかったらいっしょにいこうよ。」
ふたりはとてもよろこんでくれた。
駅までいく途中、わたしたちはいろんなことをしゃべった。
「わたしたちはイギリスと日本を往復して転校することがおおかったの。日本語はふつうにしゃべれるけど、ぺらぺらみんなみたいにしゃべることはできないから、みんなの話のなかにはいっていくのはむずかしいの。わたしたち陰キャだしね。英語も中途半端だったから、イギリスではもっとひどかった。」
シェリーがながいまつげをふせる。
「わたしだって陰キャなんだよ。」
そう言うと、ふたりがなぜかおどろいている。
「うっそ~!あんなに初対面のわたしたちとはなせて!?」
わたしは初対面のひととはなすのはべつにニガテじゃない。陽キャのノリについていけないだけだ。
そうこうしているうちに、駅についた。弘樹がドラムのセッティングをしている。わたしたちにきづくと、手をふってくれた。
「あのひとがおーちゃんのカレシ?イケメンだね。」
うれしいはずなのに、なぜかこころがざわついた。
「はじめましてこんにちは、Carbon図です。よかったら聞いていってください。」
演奏がはじまった。なかなかいい演奏だ。弘樹のドラムにも、いっすんのくるいもない。弘樹があせだくになりながら、ネックレスを揺らしてドラムを演奏する。弘樹は、見た目や言動はチャラいかもしれない。でも、ほんとうはすごくまじめな人なんだ。弘樹のことがもっとすきになった。弘樹がしめのシンバルをならす。すべての演奏がおわった。わたしは2曲めがすきだったな。なやんでいる人の背中を押す応援ソングで、ストレートな歌詞がぐっときた。作詞をしているのはボーカルのひとらしい。きっといい人なんだろう。
「きてくれてありがとう!」
弘樹がわたしたちにあいさつした。
「こんなかわいいこをふたりもつれてきてくれてありがとう!」
シェリーとナンシーはかおをあからめている。
「わたしたち、おーちゃんのへやのとなりに引っ越してきたものです!わたしはシェリー、この子はナンシーです。すごくかっこよかったし、げんきをもらえました。これからもがんばってください!」
シェリーもナンシーもほんとにうれしそうだ。それはきっと、Carbon図の演奏がよかったからだけではないだろう。
「おーちゃん、きょうはさそってくれてありがとう!自分のくにの音楽を、あんなにたのしそうに演奏しているひとをみて、なんだか感動しました。今日1日で、自分が外国人であることへの引けめはだいぶなくなった!おーちゃんのカレシもかっこいい!」
うれしそうに話すナンシーをみて、すごく心がモヤモヤした。ひょっとして、わたしはすごく性格がわるいのかもしれない。ナンシーとシェリーは自分のコンプレックスをなくせたし、弘樹だって、わたしがふたりをつれてきたことでとてもうれしそうにしていた。だいすきなひとがえがおなのに、なんでこんな不安でさびしいキモチになるんだろう。
そんな中、わたしの友だち、神崎蘭子とCarbon図のでるライブにいくことになった。蘭子は、自分のすきなアーティストがでるからずっといきたかったらしい。
「そういえば、あんたのかれしって、Carbon図のドラマーなんだったっけ?」
蘭子がうわめづかいできいてくる。
「うん、そうだよ」
蘭子はわたしとおなじく、初対面のひととはなすのは二ガテじゃない。だけど、趣味がけっこうな陰キャだ。蘭子のすきなバンドも、メンヘラ系のサブカルバンドだ。そして陽キャのことはけっこう好きらしい。れんあいにも積極的で、かれし募集中だ。恋バナをふってくることもおおい。
「ねぇ、どんなひと?」
蘭子が、おちてくるかみをみみにかける。蘭子も、ナンシーやシェリーとおなじください髪型だ。そのかみがたが、よけいに陰キャに見せているのかもしれない。
「チャラ男って感じ。金髪で、ピアスやネックレスをしてて、ふくもはでで…。」
蘭子が身を乗り出した。とたんに、蘭子のどくどくなかおりがする。蘭子は水泳選手なので、プールのニオイがする。
「えっ陽キャってこと?!いーなぁ、かっこいい。」
とたんに不安になった。わたしが口をひらいたところで、蘭子のすきなバンドが出できたから、蘭子はのりのりになった。そしてそのあとに、Carbon図がでてきた。
「やっぱかっこいいね」
弘樹がはげしくドラムを演奏する。やっぱりわたしは、Carbon図がすきだ。
ライブがおわると、わたしたちは楽屋にむかった。蘭子はさっそく、弘樹と話している。ふたりに手をふったものの、きづいてくれなかった。とても心細いキモチになった。だれもわたしのことなんて気にしていないんじゃないか。泣きそうになりながらたちさろうとしたとき、
「きょうは見に来てくださりありがとうございました。のりのりになっているのが舞台のうえからもわかりました。リアクションおおきいとやっぱうれしいんだよね。そういえば、あのときも弘樹は、あなたじゃなくて、貴方がつれてきてくれた女の子と話していましたっけ。ひどいなぁ。」
Carbon図のりのりボーカル、神田洋平がはなしかけてくれた。それにしても、なぜ洋平はわたしと弘樹がつきあっているのを知っているのだろうか。
「弘樹がわたしとつきあっていることをいったの?」
洋平は、なぜかちょっと申し訳無さそうな顔をした。
「うん。じまんげにはなしていたよ…。」
よかった。弘樹にとってわたしは、じまんのカノジョなんだ。
「Carbon図ほんっとにいいです!歌詞も好きです!洋平さんがかいているんですよね?」
洋平のかおがぱあっとあかるくなった。
「ありがとう!かしをほめられたのはじめてで…。これからもよろしくね、Carbon図と弘樹を。しっているだろうけど、あいつチャラくて女の子ともすぐ仲良くなれちゃうから注意してね。でも、音楽にはすごく一生懸命なんだ。」
そのよる、わたしは弘樹のキモチをききだすために、弘樹をいえによんだ。
「今日、蘭子とたのしそうにはなしていたね。手を振ったの気づかなかったくらいに。このまえもナンシーとシェリーに、かわいいって言っていたね。弘樹となかよくしゃべる女の子は、わたしだけでいい。」
弘樹につよくだきしめられた。
「ごめんな、そんなおもいさせて。おれはおーちゃんだけしかみていないから。」
そして、頭をぽんぽんされた。
それから、弘樹とは一週間連絡をとらなかった。弘樹にあおうと、弘樹のいえにむかっていたら、むこうからナンシーと弘樹が、手をつないで歩いて来る。
「ちょっと弘樹?なんでナンシーといっしょにいるの?なんでてつないでるの?」
ナンシーは申し訳無さそうな顔をして弘樹のうしろにかくれたが、弘樹はわるびれもせずにこういった。
「なんでって、デートしているからにきまってんだろ。なーナンシー」
ナンシーのかたに手をまわす弘樹。
「わたしとつきあっていたんじゃなかったの?」
あまりせのたかくない弘樹だが、きょうはいちだんとおおきくみえる。
「え、あれつきあっていたっていうか?まあ遊びだよ。美人の陰キャをおとすのってホントたのしい。いっかいヤッたらもうあきちゃったよ。いまの本命はこの子。またライブ見にきてね。」
わたしはショックでショックで、なきながらはしった。でもCarbon図のことは嫌いになれないし、これからも弘樹の演奏するドラムにあわせてリズムをとってしまうんだろう。ああくやしいわ。公園でいきをととのえていると、「おーちゃん?」とこえをかけられた。Carbon図のボーカル、洋平がたっていた。「おーちゃん?なんでないているの?はなしならきくよ?」
ないているところを見られてしまった。はずかしい。
「じつは弘樹にふられたんです。それも、呼び出されたとかじゃなくて、わたしのともだちと手をつないでいるところをみちゃって。その子はナンシーっていうイギリスからの帰国子女で、駅前での路上ライブにつれていった子なんですけど。それでといつめたら、わるびれたようすもなく、わたしとはつきあってなかったっていうんです。遊びだって。美人の陰キャをおとすのはたのしいって。でも、いっかいヤッたらもうあきたって。ナンシーも、わたしにきづいたときは申し訳無さそうな顔をして弘樹のうしろにかくれたけど、肩をだかれたときはすごくうっとりしたかおしていた。はじめてCarbon図を聞いたときとおなじようなかお。このまえ、ほんとにわたしのことがすきなのかといつめたら、おーちゃんのことしか好きじゃないっていってくれたのに。その日がさいごだったな、わたしが弘樹のカノジョだったの。でも弘樹は、はじめからそのつもりなかったのか。そのよるにね、初体験をしたんです。すごく上手だった。でも、初体験は、ほんとにわたしをあいしてくれるひととしたかったなぁ。」
だいすきなバンドのボーカルに、いったいなにをしゃべっているのだろうか。
「ぼくだったら良かったのにね。弘樹にさきをこされたか。たしかにあいつは、セックスは上手だけど、やっぱり初体験はあいしあっているひととやったほうがいい。ぼくが、おーちゃんのはじめてになりたかった。弘樹にずいぶんひどいことされたんだね。ぼくだったらおーちゃんのことなかせたりしないけどな。」
正直にいおう。ちょっとひいた。でも、その100倍、うれしかった。こうして、わたしは洋平のカノジョになった。
わたしたちは同棲をするようになった。しあわせなまいにちで、なやみなんてほぼない。ひとつをのぞいては。
3か月間、生理がきていないのだ。そしてきょうは、つきあって3ヶ月の記念日。もしや…。ドラッグストアにいって、妊娠検査薬を買ってきた。トイレにはいって、おしっこをたらしてみると、予想どおり陽性になった。かおがあおざめていくのが、自分でもわかった。
「おーちゃん、まだぁ?ぼくもトイレはいりたいんだ。」
のんきな洋平のこえが、ドアの外からきこえてくる。
「洋平…!どうしよう…!これ…!」
妊娠検査薬を洋平にわたした。
「…おろそう。弘樹にれんらくして。」
弘樹の連絡先をさがして、でんわをかけた。もうしばらくつかっていないから、連絡先はいちばんしたにあった。そのうえにはナンシーの連絡先をふたりのアイコンが並んでいるのがムカついた。ちなみにいちばんうえは洋平。
「どう、つながった?」
わたしは首を横にふった。
「つながらないの!」
洋平は、いかりにふるえているようだった。くちびるをぎゅっとかんでいた。そして、何かをけっしんしたように「よし」といった。わたしはかおだけで「?」と言ったら、弘樹のいえへとつれていかれた。洋平がチャイムをおす。「お、洋平だ」といったのがきこえた。バンドのメンバーが来たので、べつにあやしんだようすはない。きっと新曲のデモができたのとでも勘違いしたのだろう。ドアがあくなり、洋平は弘樹の襟首をつかんだ。
「オイテメェ!おれのおんなに何してくれてんだ、あ?」
わたしは急にこわくなった。いまにも洋平が弘樹を殴りそうだったからだ。そんなことしたら、Carbon図は解散になる。曲を作っているボーカルが脱退したら、バンドはおしまいだ。そうしたら、もう二度とCarbon図の音楽はきけなくなる。
「や、やめろよぉ…。わるかった…。」
弘樹が弱々しいこえをあげても、洋平は手をはなさなかった。
「あやまってもコイツのきずはいえないんだよ!もう二度とコイツにちかづくな!」
いえにかえると、洋平がギターをもって、きいたことのない曲を歌いはじめた。
「なにがあったってきみをまもるよ~♪愛してる~♪」
すごくぐっと来た。
「それ新曲?すごくいい」
いつのまにか涙がでてきた。
「おーちゃんのお陰でいい曲出来ちゃった。これはおーちゃんへのラブソングだよ。」
その夜、わたしたちはセックスした。正直、洋平は弘樹よりはうまくなかった。でも、弘樹との初体験をなかったことにしたくなるほど幸せだった。
翌朝、チャイムのおとでめがさめた。ドアをあけると、ナンシーがいた。
「ごめんおーちゃん!おーちゃんの彼氏取ったりして!こんど結婚式をあげるんだ。わたし、このマンションにきたとき、なんか居心地悪くて、とても不安だった。だけど、おーちゃんはなかよくしてくれたし、それどころか、自信をつけようとしてUKロックのCarbon図のライブまでつれてってくれた。おーちゃんがいなかったら、わたしこんなに自信もつことはなかった。それなのに弘樹をうばって…。かんがえてみたら、人気のでてきたCarbon図のみんなと仲よくできるのも、全部おーちゃんのおかげなんだよね。わたし、こどももいるんだよ。結婚式、洋平さんさそってきてね。あとおーちゃんが結婚式あげるときはよんでね!」
よかった、仲直りできて。
「洋平、ナンシーと弘樹が結婚することになったんだって。結婚式は一ヶ月後。いっしょにいこうね!」
洋平もこころなしかうれしそうだった。
一ヶ月後、わたしと洋平は結婚式にむかった。わたしのドレス姿をみて、「かわいいね」といってくれた。でも、なかにはいるなり、洋平はちがうへやへといってしまった。Carbon図としてのサプライズがあるから、準備をするらしい。
弘樹とナンシーが入場してきた。ふたりともとてもきれいだ。
「スピーチをお願い致します。」
Carbon図のベース、神崎力哉が壇上にあがった。
「こんにちは。ぼくは弘樹くんとおなじ、Carbon図というバンドでベーシストをやっている、神崎力哉です。弘樹はあかるくて、裏をかえせばちょっとかるいところもありました。でもバンドのこととなるとほんとに一生懸命なんです。」
おおきな拍手がおこった。つぎはシェリーが壇上にあがった。
「こんにちは、ナンシーの姉のシェリーです。ふたりとも結婚おめでとうございます。ふたりのあいだにはこどもがいます。はやくそのこのかおをみるのがたのしみです。ナンシーはわたしににてくらいところがあり、それにくわえて帰国子女ということもあり、友だちが全然いませんでした。でも、となりのへやにすんでいる女の子が、ナンシーを変えてくれたのです。わたしたちはおーちゃんとよんでいるそのこが、UKロックであるCarbon図の路上ライブに連れて行ってくれたのが、弘樹さんとしりあうきっかけでした。日本人も、イギリスの文化にあこがれをもってくださっているのがわかると、ナンシーはいっきに自身がつきました。おーちゃん、ありがとう。」
つぎは洋平が壇上にあがった。
「Carbon図というバンドでボーカルをしている神田洋平です。弘樹のおかげでCarbon図がなりたっています。そして、ふたりとも結婚おめでとうございます。末永くお幸せにします」
つぎに壇上にあがったのは、弘樹によくにたひとだった。
「こんにちは。弘樹のあにの野田瑛太です。ふたりとも結婚おめでとうございます。弘樹は明るくて、ご覧のとおりかみいろもあかるくて、みみにはピアスがあり、ふだんはネックレスをしています。いつもかれのイニシャルである、Hがプリントされた服を着ていて、ださいったらこのうえありません。でもそれはぼくもおなじです。ぼくも金髪で、みみにはピアスがあり、ネックレスをしていて、いつも自分のイニシャルであるN.eがプリントされている服を着ています。…ということは、ぼくもださいということになりますね。ぼくは、水商売のボーイをしていて、恋というのが信じられなくなってしまいました。だからカノジョもいません。だから、弘樹が無事に結婚してくれて、とても嬉しいです。弘樹、自分のなかに芯をもて。そして一人でも行動できるひとになれ。そしたらきっと幸せになれるから。…さあ弘樹、出番だぞ。」
弘樹がせきをたつと、まくがひらき、バンドのセットがあった。
「バンパイアとI love youをうたいます。聞いてください。」
弘樹は珍しくテンポがみだれていた。きっとないているのだ。
演奏がおわると、教会の外にでて、ふたりがかねをならしにバージンロードをあゆんだ。ナンシーが不意に、ブーケをはなった。きづくとわたしがキャッチしていた。
結婚式の一ヶ月後、わたしの友人、奈緒と力哉が結婚することがきまった。
力哉と奈緒が入場してきた。今回もCarbon図のサプライズがあるので、洋平はCarbon図として用意されたせきにいる。
「スピーチをお願い致します。」
奈緒の家族やしりあいからのスピーチがおわったあと、Carbon図のメンバーがスピーチをすることになった。
「こんにちは。ぼくは力哉くんとおなじ、Carbon図というバンドでドラムをやっている、野田弘樹というものです。ふたりとも結婚おめでとうございます。一ヶ月前、ぼくの結婚式に力哉くんはきてくれました。力哉は、ぼくと見た目はにていますが、うるさいぼくとちがっておとなしいですそんな力哉が、ながい前髪をきって、短髪にし、かみを金色にブリーチしてきた日がありました。つまり、ぼくみたいな髪型にしたのです。その理由が、ぼくにあこがれていたからだといってくれました。とてもうれしかったです。末永くお幸せに。」
洋平が壇上にあがってきた。
「こんにちは。力哉くんとおなじ、Carbon図というバンドでボーカル&ギターをやっている神田洋平と申します。いちおうバンマスでリーダーです。奈緒さんはあかるい性格だと、力哉からきいています。そんな奈緒さんとあったかい家庭を築いてください。それでは、Carbon図でバンパイアとI love youをうたいます。どうぞ聞いてください。」
さいしょは、会場のいろんな方向に視線をおくりながらうたっていた洋平が、「I love you」になると急にわたしとめをあわせてくるようになった。そして、めがあったときににっこりわらった。「これからもずっとそばにいてほしい」という歌詞を歌っているところだった。
後半部分の設定が自分でもぐちゃぐちゃになり、よくわからない小説になってしまいました…。自分がさいしょにかんがえていたストーリーとはかなりちがったものとなりました。読んでくださってありがとうございました。