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宇宙人の妹
「これ美味しい!何て料理?」
「カレー」
「かれぇ?へぇ~夏には最高だよ、スパイシーで」
「お気に召したようでよかった・・・で」
秀は06号を睨みつけた。
「あうう・・・そんな怖い顔で睨まないでぇ・・・だって、行くところがないんだもん!」
「・・・ないの?」
「ないの」
沈黙の時間が過ぎる。秀は少し考えた後「しょうがないか・・・」と言い、提案した。
「分かった。ここに住んでいいぞ」
「まじ!?!?やったぁ!」
06号は飛び跳ねて喜んだ。ピンクの髪が揺れる。
「あ、そうだ、シュウっていわゆる学生だよね?」
「はぁ」
「私も行きたい!!!」
「うぇ?」
秀は驚きのあまり、おかしな声が出た。
「だって、学生ってほとんどの地球人が通る道なんでしょ?そんなの試してみないとでしょ!」
06号の熱意に負けたのか、秀は不愛想に「勝手にしとけ」と言った。
「でも、制服は?あと、その格好と名前、目立つぞ」
「制服はニャ星から送ってもらえるよ。名前は偽名を決めるとして、恰好・・・」
「髪は染めれば?」
「無駄。染めてもピンク色になっちゃうから。猫耳もしまえないんだよね~」
特殊な髪のせいで、変えられるのはたった一つ、名前だけになった。
「シュウが決めてよ。私、地球人の名前詳しくないから」
「えーと・・・苗字は取り合えず・・・鹿嶋、とかは?」
「え?苗字は八尋でよくない?」
「なんで!?!?」
八尋というのは秀の苗字だった。同じ苗字だと、ややこしいことになりかねない。
「あ、言ってなかったか。私たち同じ家に住むんだし、いっそ兄妹ってことにすればいいかなって・・・」
「何で今更妹が転校してくるんだ?」
「シュウって見たところ親御さんと離れて暮らしてるでしょ?親の方にいた妹がこっちに来たってことには出来ない?」
秀は驚いた。この可愛らしい少女から、こんな賢い嘘が出てくるとは思わなかったからだ。
「お前、もしや賢い・・・?」
「失礼な!!それより、下の名前どうする?」
「あー、適当につけていい?」
「ほんとに失礼だな!?・・・いいけど」
決めてもらう側の06号は、あまり強く言えなかった。
少し考えた後、秀はなにか閃いたように顔をあげた。
「アル」
「ある?」
「八尋アル・・・は?」
「ある、アル・・・」
06号は黙り込んだ。気に入らなかったのかと秀が心配しだした数秒後、
「いいね!可愛い!!」
06号・・・アルは笑った。その笑顔を秀はぼんやり見つめた。
「シュウ?どうしたの?」
「・・・あっ、なんでもない・・・」
「?・・・まぁいいや。明日から通うつもりだから、心の準備しといて!」
「はいはい(学校なんかに行くなんて・・・)」
秀にはアルの気持ちが分からなかった。だが、少しだけ、学校に行く意味が見つかったような気もした。
今回も楽しく書かせていただきました!やる気あるときにバーッと書いて、失踪しないようにしています!見てくれてありがとうございます!