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だけど、弱い IIII
ミルク🍼💚
…………「…っ、ダメ!」
「え?」
「あ、の、呼び捨ては…やっぱり辞めましょう。お店でそういうのは、よくないと思いますし…。すいません、急に、さっきまでいいとか言ったのに…。」
「あぁ、そうだよね…、君が謝ることじゃないんだ。ごめん、強引だった。そうだよね…。…じゃあ愛彩さん、って呼ぶね。」
「はい…すみません。高倉さん。」
彼の背中を見つめながら少し寂しい空気に包まれていく。彼はもう一度振り返り、眉を下げて私に小さく笑顔で手を振り帰って行った。
「あぁ、もう分かんないよ…」
誰もいなくなった店内で目から溢れる雫と一緒に事実を吐く。好きでなくならなければならないのに一緒にいると楽しいし、もっと話したいと思ってしまう。バレたら終わり、奈帆はきっと、許せないほど怒るだろうし、この関係は崩れるだろうと思う。それだけで背筋が凍るように冷たくなる。そんなの嫌だ。二人の関係は崩すわけにはいかない。奈帆は私を助けてくれた恩人だから。唯一、私と嫌な顔一つせず一緒に居てくれるから。奈帆まで私の周りからいなくなったら私は何も出来なくなる。生きていけない程、どん底に落ちてしまう。そんなこと死んでも起きてほしくない。起こしたくない。呼び捨てで呼んでほしかった。嬉しかったのに。
「もう、見ないようにしよう。」
また見てしまったら、話してしまったら、もう好きを抑えることなんて出来なくなる。今にでも漏れてしまいそうなのに、これ以上溜めてはいけない。絶対見ないと心に決めながら店を閉め、家へ帰った。