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何もできない蟻の代わりに、二酸化炭素をキミに贈るよ
ある日、KanonLOVEの弟の謎発言がありました。
――何もできない蟻の代わりに、二酸化炭素をキミに贈るよ
弟はその言葉が口癖になってしまっていました。
その結果、KanonLOVEの頭から離れなくなってしまいました。
なのでスカッとするために作りました(は?)
「何もできない蟻の代わりに、二酸化炭素をキミに贈るよ」
あの夜、香坂が吐き出した言葉は、私たちの関係そのものだった。
同期というには近すぎて、恋人と呼ぶには決定的な何かが足りない。
互いの部屋に行ったこともなければ、休日にわざわざ待ち合わせをして出かけたこともない。
ただ、終電を逃した深夜のオフィスや、始発を待つ駅前の薄汚れた居酒屋で、私たちは互いの存在という「二酸化炭素」を吸い合って、どうにか窒息せずに生き延びていた。
私たちの結びつきは、好意というよりは、同じ泥沼に浸かっている者同士の、静かな生存確認に近かった。
「ねえ、昨日言ってた件、やっぱり上からひっくり返された」
金曜日の午後十時。香坂が私のデスクの横に、コンビニの紙コップを置いた。
中身はいつもの、甘すぎるカフェラテ。
「そっか。一週間、一睡もしないで作った企画書だったのにね」
私は画面から目を離さずに応じる。かけるべき言葉も見つからないし、同情する体力すら残っていなかった。
香坂は私の椅子の背もたれに軽く手を置き、そのまましばらくじっとしていた。
彼の体温が、上着越しに微かに伝わってくる。
手を伸ばせば、その指に触れることができる。抱きしめて、一緒にここから逃げようと言ってしまえば、何かが変わったのかもしれない。
けれど、私たちはどちらも動かなかった。
この大人の世界で生き残るためには、一歩を踏み出すためのエネルギーさえ惜しかった。
傷つけ合うリスクを背負うくらいなら、この「同期以上、恋人未満」のぬるま湯の中で、ただお互いの呼吸を感じている方がずっと楽だったからだ。
「……まあ、いつものことだしね」
香坂は手を離し、自分の席へ戻っていった。
私たちはそれ以上、何も踏み込まなかった。
それから三ヶ月後、香坂は会社を辞めた。
特にドラマチックな事件があったわけではない。
ただある朝、彼が「体調不良」を理由に会社を休み、そのまま有給を消化して、静かに籍を消した。
最終出社日、彼は私に一通のメールも、個別の挨拶も残さなかった。
デスクの上の飼育ケースはいつの間にか片付けられており、彼が使っていたパソコンだけが、初期化されて冷たく輝いていた。
私は泣きもしなかったし、彼の個人スマホにラインを送ることもしなかった。
大人の世界では、人がいなくなるなんて「よくあること」だ。
昨日まで隣で息をしていた人間が、次の日には他人に戻る。
それが当たり前の現実だった。
「……先輩、これ、次のプロジェクトの資料です」
新しく配属されてきた後輩が、香坂のいたデスクに書類を積み上げる。
「ありがとう。確認しておくね」
私はいつものトーンで答え、キーボードを叩き続ける。
午前二時。また、あの夜と同じ時間が巡ってくる。
仕事を終え、一人で深夜の街へと歩き出す。
すれ違う人は誰もいない。
街灯がアスファルトを冷たく照らし、自分の影だけが妙に長く伸びていた。
ふと立ち寄ったコンビニで、無意識にあの甘すぎるカフェラテを二本、カゴに入れている自分に気づく。
レジの前で、ハッとして一本を棚に戻した。
その瞬間、お腹の底が冷たくなるような、じっとりとした孤独が這い上がってきた。
私は、香坂の連絡先すら知らないのだ。
毎日あんなに近くで同じ空気を吸っていたのに、私たちは「会社のデスク」という記号を失った瞬間、ただの赤の他人に戻ってしまった。
彼が今どこで、どんな顔をして息をしているのか、私には知る術もない。
部屋に帰り、電気もつけずにベッドに倒れ込む。
静まり返った部屋の中で、聞こえるのは自分の呼吸音だけだ。
窓の外には、今日も変わらず東京の街が広がっている。
何万人もの「蟻」たちが、誰の記憶にも残らない呼吸を繰り返しながら、巨大な街を動かしている。
香坂がいなくなっても、世界は一ミリも揺るがない。
私の仕事も、締め切りも、この耐え難い静けさも、何一つ変わらない。
私は深く息を吸い込み、そして吐き出した。
私が今吐き出した二酸化炭素は、もう誰に届くこともなく、狭いワンルームの天井に吸い込まれて、ただ静かに消えていった。
それが、私たちの世界の、あまりにも退屈で、リアルな結末だった。
いかがでしょうか(((
正直に思ったことを書くとクソなぐらい時間かかりました。
中1に大人の世界を書くのは無理なことがわかりました((((
では!
ここまで読んでくださったあなたへ
Tank you!