編集者:ナイト
ポンコツ探偵事務所として町に噂される「春凪探偵事務所」。
そこに所属する探偵見習いのハルキと、怪力でお騒がせな助手見習いナギサは、ドタバタしつつも人の悩みを放っておけないコンビだ。ある日、ナギサが理由もなく連れてきた俯きがちな高校生、レイとの出会いをきっかけに、二人は日常の裏に潜む小さな謎や人々の事情に巻き込まれていく。
未熟ゆえに失敗続きだが、不器用な優しさと奇妙なひらめきで事件を解き、困っている誰かを救おうと奮闘する——そんな、笑えてちょっと心温まるポンコツ探偵たちの物語。
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目次
#00 キャラ設定
キャラ紹介をお先にします。
名前:|杉原 ハルキ《すぎはら はるき》
性別:男
年齢:21歳
性格:冷静(?)
その他
探偵見習い。推理力は人以上ある。
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名前:|藍野 ナギサ《あいの なぎさ》
性別:女
年齢:20代
性格:ツンデレ
その他
探偵助手見習い。身体能力が高い。行き当たりばったりなところがある。
---
名前:|水無瀬レイ《みなせ れい》
性別:男
年齢:16歳
性格:ネガティブ思考
その他
何かと不運な少年。事件ある場所に彼がいる。
順次、キャラは増えていきますので、ご了承ください。
ようこそ、ポンコツ探偵事務所へ
「ハルキ!依頼来たよ!!」
ここは『春凪探偵事務所』。近所の人たちからは『ポンコツ探偵事務所』として知られている。
僕の名前は『|杉原 ハルキ《すぎはら はるき》』。この探偵事務所の探偵見習いをしている。探偵見習いと言っても、もう21歳の成人だけど。
大きな声を上げて、事務所のドアを開けた彼女は『|藍野 ナギサ《あいの なぎさ》』。探偵助手見習いだ。持ち前の馬鹿力でドアを壊しかける。
「ナギサ……ドア壊れっから強く開けんなよ……」
「だってだって!見て!」
ナギサが足元の方を指さすと、よく見れば人がいた。ナギサに引きずられてきたのだろうか、お気の毒に……
「うぅ……ちょっと、引きずらないでくださいよぉ……」と、弱々しい声をあげる少年。恐らく高校生くらいだろうか。
「で、ナギサ。こいつはどうして連れてこられてんだ?」
「この子が、ずーっと下見て俯いてたの!だから連れてきた!」
……は?
「はぁーっ!?」
「な、なによ!悪いことしてないじゃない!」
トンデモ理由で引きずられてきたこいつに同情しかない……。
「ゴホンッ……で、何で俯いてたんだ?」
尋ねると、少年は赤い顔をして答えた。
「あ、あの……財布落としちゃって……。地面ずっと見てたら……この人に……」
「なるほど……それでナギサに連れてこられる羽目になったんだな……」
俺が少年に同情の目の向けていると、ナギサが勢いよく胸を叩く。
「そういうことなら任せなさい!落とし物探しは得意!昨日もハルキの靴下片方見つけたし!」
「いやそれはそもそもお前が隠しただけだからな?」
「そ、そんなことないし?」
「あのなぁ……!」
また口喧嘩ガ始まりそうになった時、少年が口を挟んだ。
「ま、まぁ、とにかく……僕の財布探し手伝ってくれますか……?」
「も、もちろん!!ねぇ!ハルキ!」
「はぁ……ったく、わぁーたよ」
こうして、よく分からないまま探偵事務所の新たな“事件”(?)が始まった。
---------
「それはそうと、お前の名前ってなんなんだ?」
「確かに!聞いてなかった!」
(お前が連れてきたんだろ……)
そんな不満はグッと堪え、少年に尋ねる。
「あっ、僕の名前?僕の名前は……|水無瀬 レイ《みなせ れい》です」
「水無瀬レイ?」
繰り返すように名前を唱える俺とナギサ。
「分かった、覚えとくね!」と、ナギサが元気よく言ってから尋ねる。
「んで、その財布とやらはどんなんなんだ?」
「えっと……黒い二つ折りの財布で、中に学生証と図書カードと、あとお小遣いがちょっと……」
レイが指で小さく四角を作ってみせる。その仕草がなんか小動物っぽくて、ナギサは「かわい…」と呟きかけて咳払いした。
「黒い二つ折りね!任せなさい!」
「いや、だからお前はまず落とした場所とか聞けよ……」
俺がそう言うと、レイは「あっ」と声を漏らした。
「そういえば……落とした場所、多分分かります」
「最初に言えよ!」
俺とナギサのツッコミが綺麗にハモったが、レイは気にせず話を続ける。
「学校の帰り道で……商店街を歩いてたら、急に前から犬が来て……」
「犬?」
「はい。人懐っこい感じの。で、避けようとしたらバランス崩して……カバンがひっくり返って……」
「それで財布が落ちた可能性がある、と」
「はい……多分、ですけど」
ナギサが腕を組んで「うーん」と唸る。
「その犬、どんな犬だった?」
「白くて、耳がぴょこってしてて……首輪してました。赤いやつ」
「うーん……犬かぁ……」
ナギサは妙に真剣な顔で顎に手を当てる。
こういうときのこいつは、妙な思い込みスイッチが入る。
「よし!犬を追う!」
「はぁ?なんでだよ」
「だって、その犬が咥えてった可能性あるじゃん!」
「犬を泥棒みたいに言うなよ!」
レイが不安そうに目を泳がせる。
「そ、そんなことってありますかね……?」
「大丈夫!犬の気持ちなら任せて!」
「お前、犬じゃないだろ!」
……と思ったらナギサは急にレイの方へぐいっと顔を寄せた。
「商店街って、どのへん歩いてたの?」
「え、えっと……パン屋さんの近くです」
「パン屋の近く……あっ!」
ナギサが勢いよく手を打った。
「その犬、知ってるかも!“しらたま”って名前で、商店街のおばあちゃんが、パン屋の近くをよく散歩させてる犬だ!」
「知り合いかよ!」
「かわいいんだよー、しらたま!」
レイは少し安心したように笑う。
「じゃあ……もしかしたら、おばあちゃんが拾ってくれてる可能性、ありますか?」
「あるかもな」
俺は頷いた。そしてその後、ナギサが大きく宣言する。
「よし、決まり!春凪探偵事務所、第231件目の依頼!“しらたま捜索大作戦”だ!!」
「いや財布探せよ!あと、依頼のほとんどはお前が勝手に作ったやつだからな!?」
店内にこだまする俺のツッコミをよそに、ナギサはすでに玄関へ向かっていた。
「レイくん、行くよ!ハルキも早く早く!」
「おい走るなって!ドア壊れるから!」
しかし案の定、ナギサは勢いよくドアを開け――
ドンガラガッシャーンっ!
「…………」
「……ご、ごめん……ハルキ……」
俺はため息をつきながら、ドアの金具を確認した。
すると見事に、ドアの金具は折れていた。
(ざけんな、ナギサ……!)
ただでさえ金欠なのにドアまで壊され、涙目で睨みつけた。
「ご、ごめんて……私も少し出すから…」
「2回目は許さねぇからな……」
「え、あ、大丈夫……ですか?」と、若干引いた目を向けるレイ。
「ま、まぁ!事件解決と行こうよ!」
「ったく……マジ切り替えだけは速ぇんだから」
本当にこいつのポジティブさには呆れる。
「よし、じゃあ!」
「――春凪探偵事務所!エイエイオー!」
「お、オー?」
こうして、財布を探すだけのはずが、なぜか犬探しから始まることになった。
次なる舞台は――商店街。
そこには、レイの財布の手がかりと、しらたまという白い犬、
そしてついでにドアの修理代が待っていた。
(続く)