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地震の中、君達と出会った⑥
「……あ、皆さん。お、お風呂お借りしました……」
湯気と共に脱衣所から出てきたちぐは。
貸し出された大きめのシャツ一枚に、湿った長い髪。
国宝級の美貌が、上気した肌と相まって、直視できないほどの純真な色香を放っていた。
リビングにいた三人の時間が、物理的に止まった。
「……おい。お前、その格好……」誠一が真っ赤になりながら視線を逸らす。
だが、指の間から覗く瞳はちぐはの細い脚に釘付けだ。
「……風邪をひきます。早く髪を乾かしてください。……私が、やります」健三が、震える手でタオルを手に取り、ちぐはの背後に回る。
無表情を装っているが、首筋まで赤みが差しているのを、ちぐはは「お風呂の熱気のせい」だと思い込んでいる。
「ねぇ、ちぐは」まどかが、座っていたソファから立ち上がり、ちぐはの正面に立った。
いつもより低い、熱を帯びた声。
「……僕の記憶(ログ)が、君で埋め尽くされてバグりそう。……ねぇ、これってどういう現象か、不器用な君でも分かる?」
「……え、故障ですか? まどか、大丈夫……っ」心配して顔を覗き込んだちぐはの腰を、まどかが強引に引き寄せた。
「……鈍感すぎるのも、罪だよ(ですよ)」その瞬間、誠一と健三が割って入る。
「まどかさん、抜け駆けは許しません。彼女の髪を乾かすのは私です」
「どけよ二人とも! こいつをこんな無防備な姿にさせたのは誰だ!」三人の男たちが、ちぐはを取り囲む。
不器用なちぐはは、彼らの「独占欲」という熱に当てられ、ようやく自分の心臓がうるさく鳴っていることに気づき始めていた。
「(……どうして。嫌われていると思ってたのに、こんなに……優しくて、苦しい……)」地震という災害で出会ったはずの彼らが、今やちぐはにとって、世界で一番近くて、一番危険な存在に変わっていた。