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別れ
晴瀬です。
ご卒業おめでとうございますって話です。
桜なんか咲かなかったし、
ぶっちゃけ学校なんか休んで家でだらだらしてたいし、
嫌いな奴もいたし、
勉強とかなくなれって感じだし、
後輩も得意じゃなかったし、
毎日が不安で耐えられなくなったときもあったし、
すっごい辛かったけど
今思えば楽しかったわ。笑
「まじで、ありがとね」
言いながら少し気恥ずかしくなって語尾を小さくさせながら私は隣で天を仰いでいた彼女に笑いかける。
「いやぁ〜?こちらこそ?」
私の言葉にそう返して、向かって笑う。
よく見れば彼女の目の端は赤くなっていた。
泣いている。
「卒業、なんだね」
「そうだよ」
私は彼女の言葉に返す。
1年生、入学して不安まみれで心が落ち着かなくてフワフワして馴染めなくて、やってけないかもって思ったときに今隣で小さく笑っている彼女と出会った。
2年生、生活に慣れて楽しむことを知る。
後輩ができてどんな対応すればいいのか悩んで初めて先輩を見送った。
3年生、受験。死にたいほど辛かった。勉強して勉強して勉強して、笑えなくなった頃に彼女から告白されて付き合い始めた。
そして、私達が見送られる側になった。
なんだか"卒業式終わり"というこの空気が切なくて寂しくて胸の奥がぐわっと持ち上がる感覚がして私は意味もなく教室を見回す。
「また会おう」
「絶対ね」
彼女と進む道は違うけれど今までと何も変わらない。
この空気感をガン無視してクラスの男子たちは教室の後ろで走り回る。
追いかけっこしてじゃれ合って大きな声で声を上げて笑う。
それを見てまだ私達も子供なんだなあとそう思った。
卒業式、ということでいつもよりしっかりとした服を着た担任が教室に入って着て「記念写真撮ろう」とそう言った。
私達は教室を出て校庭に出る。
教室を出て廊下を歩いていると隣でゆったり歩いていた彼女がふと私の手を取った。
「ん?どうしたの?」
私が訊くと彼女は「なんか寂しい」と私の目を見た。
その表情が愛おしくて私は繋がれた手を握り返す。
「浮気したら許さないから」
そう彼女が言う。
私は笑う。「するもんか」と。
私達クラス全員でまだつぼみの桜の木の前で写真を撮った。
いつも元気なあの子が泣いて、それを慰めていたその子の友達が貰い泣きして。
それを見てみんなで泣いた。
時間の進みに抗いたくて、でもできなくて私達はただ泣いた。
校庭中に私達の泣き声が響いた。
そんな時に撮れた写真はみんな泣きじゃくってボロボロでそれを見て、みんなの泣き声が泣き笑いに変わった。
「じゃあなみんな!!愛してる!!」
そう叫んでクラス1のお調子者は最初に校門をくぐって帰路についた。
それに倣ってぽつりぽつりとクラスメイトは帰宅する。
ある者は愛を叫んで
ある者は一度振り返り校舎に向かって深くお辞儀して
ある者は写真を撮るため戻ったりしながら
ある者は潔く前を向いて
未来に進んていった。
「じゃあね、──」
彼女が私の名前を大事そうに呼ぶ。
「帰ったら連絡する」
その言葉に私も頷く。
さよなら、みんな。
私は校門から一歩足を踏み出して、立ち止まった。
校舎を振り返り昨日まで当たり前のように通っていた教室を廊下を見た。
少し、考える。
思考をやめ、また視線を前に戻して歩みを始める。
視線は前。
私は忘れない。
ここで過ごした日々を
ここで出会った人たちを
学んだことを
湧き出た感情を
そして彼女を。
私は進む。
遠くない、未来を見据えて。
春を発つ/カンザキイオリ
https://m.youtube.com/watch?v=DMYIOnvHMN4
卒業おめでとうございます!
みんな、みんな頑張れ!!!