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Extraordinary ability
unknown
王都立魔法専門高等学校。ここには、偉大な魔法使いになりたい若者が集まる場所である。
現在、世界における≪魔力保持者≫は、総人口の98%を占めている。魔法を使えて当たり前。そのような世の中に、今、不穏な兆しが立ち込めていた…
第一話 その名も『異能』!
「今日は転校生を紹介する。静かにしろー」クラス1‐Bの担任であるアルゼノ先生が声を挙げた。途端に、騒がしかった教室は静まり返る。「転校生?」「男?女?」「どういう魔法使うのかなぁ」ヒソヒソとそんな声が飛び交う。
「入れ」教室の扉が開く。一人の男子生徒が入ってきた。
「皆さん、初めまして!今日から1-Bに所属します、メルト・グルーハウドと言います!気軽に、メルトって呼んでください!」儀礼的な拍手が起こる。「だそうだ。みんな、仲良くしてやれよ。」
うーい、とけだるげな声が響いた。
休み時間、複数の生徒がメルトの周囲に集まってきた。
「なぁ、メルト?だっけ、お前どういう魔法使うんだ?」「メルトくん、お金ないから貸して」「バッカお前、貧民は黙ってろや」メルトは困惑しながら周囲を見回した。
「えっと…魔法?だっけ、ごめん、俺使えないんだ....魔力持ってなくてさ」
会話に参加している生徒のみならず、他の生徒も静まり返った。耳が痛いほどの沈黙が教室を覆う。
「は…?魔力を、持って、ない…?お前、なんでうちに入学できたんだ?」
「え…?魔力を持ってないと入れないの?」メルトはさらに困惑する。それもそのはず、彼はしっかりと実技試験で正式に合格をもらっていたからだ。
「そうだぞ?」「知らなかったの?てか....どうやって入学できたの?」
教室が次第にざわつき始める。と、そこで二限目開始のチャイムがなった。ほかの生徒も、チラチラとメルトに疑惑の目を向けながら各々の席に戻っていく。
≪そうか....「実力を見せろ」って試験では言われたから、俺が魔法を使わなかったことに気付かなかったんだ≫ほっと息をつくメルト。その目は全く、笑っていない。
≪この学校にいるはずなんだ....!≫やっと掴んだ尻尾。この学校に在籍しているという。メルトはこっそり懐から写真を取り出して眺めた。写真に写っているのは、眼鏡をかけた男子生徒だ。優し気な顔だちをしているのと裏腹に、眉間のしわがそのこまやかな神経性を表している。幾度となく眺めたその写真。メルトは心の中で呟く。
≪この学校にいるはずだ....!『異能力者』が....!≫
次回、Extraordinary ability
第二話 『虚構』