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第九話 『新入式』
「‥」
アリスは真剣な顔付きで前を向いていた。
姿勢を正し、視線を動かしたりもせずに前を。
だが心の中では‥
(これ、いつまで立ってればいいの‥?)
すごくしょうもない事を考えていた。
---
「‥まずは|私《わたくし》の自己紹介をさせていただく。」
さっき式開始の礼をした人が一歩前に出てくる。
「|私《わたくし》は《《リラ》》。魔法少年No.302209だ。302161から302220の世代に入隊した。」
「‥」
え、魔法少年ってそんな前からあるの?
いや、そう言えば僕が産まれた時から魔法少年の番組、名前なんだっけ‥‥あぁ、《《エスペランサ》》だ。あれがやってたな‥じゃあ、結構長く続いてるのかな?
「‥|私《わたくし》の紹介はこれで終わりだ。そして、特別部隊ルーチェのトップの紹介に移る。」
トップ‥どんな人かな。
男の人だよね‥身長は高めかな、低めかな。
髪の毛長いのかなぁ‥それとも短い?
髪色は何色だろ‥普通の黒髪とかなのかな。
--- コツ‥コツ‥コツ‥ ---
「ぇ‥」
壇上に現れたのは思っていた姿とは掛け離れた存在。
身長は160台、髪の毛は長いツインテール、髪色はまさかのピンクだった。だけど、黒のスーツに白のワイシャツ、赤のネクタイと大人びた服装だ。
顔だけ見れば幼い子。
容姿からしてスーツを着た小学生に見える。
「‥初めまして第八代目魔法少年達よ。」
マイク越しに聞こえる声も高く、子供っぽい。
だけどやっぱり、立ち方や話し方は変に大人びている。
「私は《《マリー》》。貴方達魔法少年のトップであり指示官。よろしくね。」
そう言い、マリーは優しく微笑んだ。
微笑む姿は幼い子供のよう。彼女の年齢はいくつなのだろうか。それが凄く気になってしまう。
「‥早速だけど、選ばれた貴方達はこの国‥日本を破滅させない為に存在している。我々がしくじればこの魔法少年の世界‥《《グラン》》から怪物が溢れ出し、日本へと侵入を始める。そうすれば誰も止める事が出来なくなる。そのままにしとけばいつかは海を渡り、海外まで侵略していき、人類が消える可能性がある。‥いや、消える。」
魔法少年になってからずっと自覚してこなかった責任感が今、背中に重くのしかかった。
僕らの肩に、人類の命が乗っかっている。それを自覚しろ、と。そう言われている気がした。
「‥まぁ、貴方達には期待している。《《伝説の世代》》のような世代になれると、ね。」
「‥伝説の世代‥?」
マリー以外に誰一人として声を発しなかったこの空間に誰かの声が聞こえた。
「そこのお前!まだマリー様が話しているのだから静かに___」
「気にしないで、リラ。私も説明不足だったからね。‥伝説の世代について知らないって事は、ニュースとかエスペランサを見ていない人?」
「‥まぁ。」
「そう、やっぱりね‥」
‥マリー(様の方がいいのかな)の表情が歪む。
何かを我慢するかのような表情で‥
「あー!もう!!」
急に爆発した。
「私やっぱり堅苦しいの似合わない!今から緩くやってこー!」
急に雰囲気が変わってギャルみたいになった。
さっきまでの大人しさはどこへ。
「えっと、伝説の世代、またの名を《《謎の世代》》と呼ぶ世代の事だよね!んー‥リラ、後よろしく!」
え、凄い雑‥じゃなくて、急に辞めるんだ‥
‥この人、本当にトップ‥?
「‥分かりました、マリー様。‥‥では、引き続き話をしていく。伝説の世代、それは|私《わたくし》達‥No.302161〜302220の世代の事だ。」
伝説の世代。
その言葉が僕の記憶の何かに結びつく。
何にか分からない。だから違和感を感じる。
「この世代では、当時一番凶悪だった怪物側のリーダー個体を殺した。その魔法少年達の活躍により怪物が消えていき、暫くの間怪物による被害が無くなったのだ。」
怪物、リーダー個体、活躍、被害‥
全部頭に響く。
何の記憶に引っかかってる?エスペランサの映像?それとも別の何か?
「この個体殺しの活躍者は‥|私《わたくし》の親友、《《ヒロ》》と《《リウ》》だ。彼らは誰よりも戦った。」
ヒロ、リウ‥
僕は知っている。エスペランサで登場していた。
でも、それだけなのか?
もっと、何かを知っている気がする。
ヒロとリウの、何かを‥
「彼らのお陰で犠牲者はゼロのまま戦いが終了した。英雄だと誰もが思ったさ。」
英雄‥ヒロとリウが英雄?
違う。英雄じゃない。
違うってなんだ?僕は何を知っている?
「そう、戦いでの犠牲者はゼロだったんだ。」
「‥戦いでのって事は、戦いの後に誰か亡くなってしまったんですか?」
リンが質問をする。
「あぁ、さっき活躍したばかりの二人‥ヒロとリウが、戦いのすぐ後に近くの廃ビル内で死体になって発見された。」
「‥二人の死因って、なんですか。」
死因が、気になった。
それがもしかしたら、僕が引っかかってる部分なのかもしれないから聞いた方がいいと思った。
「‥ヒロは自分の武器である銃で頭を撃ち抜いて自殺。リウはヒロの武器である銃で同じように頭を撃ち抜いて自殺‥二人とも即死だ。」
なんで自殺したんだろう?
二人ともヒロの武器である銃を使って、その武器じゃなきゃいけない理由でもあったのかな。
「自分達を脅かす存在は消えたのに、何故死んだのか‥それが分からないから、《《謎の世代》》とも言われているのだ。」
「謎の世代‥」
ヒロとリウ。二人について、それと僕の何かについて深く考え込んでしまったら、もう、リラさんの声は聞こえなくなっていた。
僕は何に引っ掛かっている?
僕はあの二人の何を知っている?
僕は、
『死なないでくれ、《《ヒロ》》!!』
僕は何を忘れている?
沢山言葉が出てきましたね。
あとでメモ投稿します‼︎
あと長いですよね、分かります(
途中で切ろうとしたんですけど「やっぱ書いてから終わりにするか」と思ったら2420文字になりました☆
それではおさらば(・◇・)/