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File No.2
【登場人物】
白…掃除屋
黒…掃除屋
灯…仲介人
宴…殺し屋
燕…運び屋
そもそも、掃除屋の仕事はあくまでも“掃除”…即ち、後始末だ。
人の復讐のお膳立ては専門外である。そういうのは、復讐屋や情報屋、探偵どもが得意とする。復讐屋なんて、それだけを専門にするのだから。
当然、白も黒も復讐相手の名前は知っていても、居場所なんて知る由もない。死体の処理が専門の白はもちろん、映像の書き換えなど電子的な処理を専門をする黒も、調べものは不得手だ。黒は、基本的にシステムの破壊しかしない。非力なくせに物騒な女性なのだ。
「情報屋に頼んでもいいんだけどさ、取り分減るのはな…」
「どうせ正規料金以上取るんだからいいだろ」
「部外者は黙っとれ」
「名前と住所はわかってるんでしょ。じゃあ、尾行でもしたら?てか、自宅で殺せば良くない?」
黒の無神経とも取れる台詞。白はまた黒の頭を殴った。
「馬鹿?馬鹿だな??尾行がどんだけ大変だと思ってんの?そもそも、あたしらは簡単には外に出れないんだが??」
「燕に頼めばいいじゃん!!」
ぴたりと白が振り上げた拳を止めた。
「…そっか。あいつなら外出し放題だし…いっそ、燕に復讐相手お届けしてもらう…?」
「それでいいじゃん。楽だし」
「あいつにそんな仕事できんのかよ。頭弱いぞ、あれ」
灯はざっくり毒を吐く。
燕の頭脳が大して良い働きをしないのは重々承知している。それでも、彼は言われた仕事はきちんとこなすのだ。もしかすると、本来は知能が高いのかもしれない。猫を被るのは彼にとって通常運転だし。
「連絡先売ろうか?」
「もう持ってるからいい。あんた、帰ったほうがいいんじゃない?」
「そうする。ここ、タバコ臭えんだよ」
「人の癒しに文句言わないでよ」
「喫煙が癒しなの?w」
「だから黙れ」
殴られすぎて黒は頭が少々おかしくなってしまったのだろうか…。いや、彼女の場合元々こういう性格なのだろう。
電話をかけた数分後に、燕が通気孔から降ってきた。
「あ、灯ちゃんだー♡おひさしぶりで〜〜す!!」
「うるせえんだよクソガキ」
「傷つくんですけど〜。ま、いっか!んで…えっと…復讐相手を持ってくればいいんですよね?」
「ちゃちゃっとお願い。あ、殺さずに持ってきてね」
「燕、人殺せません!w」
可愛らしく笑って見せ、燕は普通に玄関から出て行った。
この家で燕の帰りを待つのも馬鹿馬鹿しくなったのか、灯もさっさと出て行く。
「燕が帰ってきたら、依頼人に連絡して…あ、どこで復讐させよう…」
「その辺の空き部屋でいんじゃない?」
「ブルーシート引いとこ」
「それ絶対依頼人ビビるってw」
案内されて行ってみたら、ブルーシートが引かれた部屋に復讐相手と刃物。いっそ笑えそうだ。殺す前にブルーシート引いておけば後始末が楽です☆なんて、そういうライフハックは要らない。
「じゃ、ちょっとブルーシート引いてくる」
「いてら〜」
ブルーシート片手に一番近い空き部屋に行くと、既に先客がいた。
「あ、白ちゃんだ〜〜!!!」
全身を返り血で赤く染めた宴が駆け寄ってくる。
「抱きつくな!!!汚れる!!!」
「えー」
パステルカラーだったはずのジャージはどす黒い赤になってしまっていた。可愛さ半減、どころの話じゃない。髪についた返り血はどうやって落とすのだろうか。ちょっと気になる。
「ちょーどお仕事終わったから帰ろっかなーって思ってたの!白ちゃんに会えてよかった〜!」
「…掃除屋の依頼は、今日はもう受けないからね?」
「ん、お掃除は会社の人がやってくれるんだって。だからね、思いっきりやっちゃった!」
その結果がこの惨状。普段の倍は暴れ回ったんじゃないのか、この少女は。
そもそも、爆殺がメインの彼女の仕事はかなり荒っぽい。掃除も大変だ。今回は特に、壁にまで血痕や肉片が飛び散っている。…流石に、三宅にここまで徹底的に殺害する能力はないだろうが…壁にもブルーシートを貼った方が良いだろうか。
取り敢えず、ここは使用不可、ということはわかった。他の空き部屋を探さなくては。