一歩一歩

「お前、なんもしゃべんねーよな。ほんと何思ってるのかわかんない。」 まあ、そりゃあそうだよね。引っ込み思案の私の事情なんて、 元気な人気者の道下君には、なんにもわかんないよね。 でも、共感してくれる人が欲しい。 「私だって変わりたいよ…」 そう呟いてしまった。道下君が 「なんか言ったか？」と聞いてきた。うわあ、言いたくないな…。 でも、私だって…変わる！！答えてみるしかない。 「私だって、元気な子に変わりたいの！どうしたらいいと思う？」 そう答えた。そしたら、 「正々堂々としてればいいんだよ。ほら、夢香って頑張り屋さんなんでしょ。俺の幼馴染で夢香の友達の美雪に聞いた。例えば、体育の時、ハードル走で失敗したときも、うつむいていないでいるとか。美雪に話は聞いてる。夢香ならきっと出来るはずだ。」 気付いた時には、私には大粒の涙が流れていた。そうか、まだ私には難しいこともある。 けど、正々堂々としていればいいんだ…！！勇気よ！私に力をください…！ 「道下君、ありがとう」 笑顔で私が言ったら、そしたら、道下君が二ッと笑った。私もこの笑顔になれるかな。 私―。実は道下君のことが好きだ。誰にも言えないけど。 でも、また一歩踏み出したい。そう思った。もっと、道下君と仲良くなれるように―。 「あのさ、夢香、夢香は笑っている方が可愛いよ。」 こそこそっと道下君が話した。とても嬉しい。 私と道下君は釣り合わないかもしれない。でも、私が道下君のことが好きなのは変わらない。 それから、私は元気な子にかわっていった。道下君のおかげだ。 道下君と会話することも増えた。ある時…。 「夢香、俺さ…夢香のことが好きだ。付き合ってほしい」 と道下君が昼放課の私たち以外誰もいないところで私に言った。 嘘だ。信じられない！嬉しすぎる…！ 「私も言うつもりだった…！」少し嘘かもしれないけど、本当のことだ。 また、一歩一歩進んでいきたい。「一歩一歩」は、私の好きな言葉だ。 この言葉のように、私も進んでいくんだ…。