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英国出身の迷ヰ犬×文豪ストレイドッグス! 3rd.ep_3
思わぬ言葉に、その場がしん、と静まり返った。
「…兄弟、って云った、かな…」
口を開いたのは、ルイスさん。
「…もう少し詳しく説明してくれない?」
その言葉遣いからは、驚きと、戸惑いと、それと__何だろう、読み取れない、…。
「言葉の通り、出会って少しの”敵”さんとは違って、私達は血の繋がりっていう深い絆で繋がってるわ、ねぇ、テニエル~♡」
甘い香りのしそうなそのメアリーの声。
血の繋がり、何て云ったって…それで縛り付けるのは、一寸違うんじゃないか、と思いながらも、話が最後終わるまでは口を挟まない様にしようと思った。
ちらり、とルイスさんの方を見ると、同じ事を考えていたようで...こくり、と小さく頷いたルイスさんに、私も頷いて返した。
「あら、疑うなら血液証明書を送ってあげるわよ?」
ハリエットの明るい、饒舌な話し方。
下手したらこっちが飲み込まれそうで、少し怖い。
...電話越しでも。
「…大丈夫です」
何とか、その一言を発することはできた。
けれど、これ以上この人たちのペースでの会話に口を挟めそうな気がしない。
「__別に血のつながりがあるから絆が結ばれていると言いたい訳ではないからな...まぁ、」
「テニエルー、次この形態に僕からの着信がある時迄には、そこの二人とのお別れを済ませておいて、ねっ?」
「あっおい、俺の台詞取るなっ」
「あははっ」
そこでプツリ、と通話は途絶えた。
ボスは、あの人達との直接的な会話を、全然しなかった。
「…ねぇボス、あの人たちホントに」
「桜月ちゃん、...今回は__ちょっと、ややこしい事になっているかもしれないね」
「ぇ、ルイスさん、『なる』じゃなくて『なっている』って…?」
「…その前にまだ話せていない部分を伝えるのが先じゃないか?」
そういうボスに、確かにと納得して、今までに起きた事、分かっていることを説明する事にした。
始まりは少し様子がおかしいボスを見つけた事から。
その原因は”誰か”と通話していた事で、詳細はこの私の管轄内のカフェで話す事になったこと。
あまりに焦りが募っていたような、ボスの様子。
そして、先程通話していた相手が、ボスの元仲間であった事。
その彼らがヨコハマに来る、といっていたこと。
目的は、ボスが失敗した”このヨコハマを手に入れること”。
上手く行けばボスも連れ戻すこと。
簡単な組織構成は、トップ、そしてその隣に並ぶのがボスとあと三人_フランシス、ハリエット、メアリー...その下は、ポートマフィアの数をも凌駕するかもしれない兵士と異能力者。
”ボス”という組織の頭領の呼び名は、ボスが別で持っている組織で、前動いていたのはそっちだから彼が”ボス”だった、ということ。
それが理由で今回の「彼ら」の、直接的な支援がなかったこと。
ドストエフスキーと直接やり取りしていたのは、トップだったこと。
ずっと静かに耳を傾けていたルイスさんが、ここで声を発した。
「…なんとなく話の流れで勘付いてはいたけれど…」
「…はい。前回私達の何方かが死なないといけない、という条件を課したのはトップの異能、」
【|不幸な選択遊び《Unhappy Choice Game》】
「…そして、そのトップの異能をボスの異能に組み合わせたのも」
「テニエルと同等の立場の彼らの内の誰か、ということだね…」
流石ルイスさん、話の呑み込みが途轍もないスピード。
「その異能の詳細としては、自らが選択した二人の人物に、特定の選択条件を課すことができる異能...らしいです」
「成程ね、前回姿すら現さなかった彼らの異能だから、あの時どうにもならなかったわけだ」
真剣な表情で考え込むルイスさん。
反して、ボスの顔色は未だに悪い。
大丈夫、と声を掛けようとして、少し思いとどまる。
大丈夫なわけ、ないか。
「…あの」
「どうしたの?」
どこからの辺りは聞いていたのかルイスさんに聞いたら、ボスが「俺の異能を使って、ルイス・キャロルを強制的にこの世界に連れて来た」と言った処からは聞いていたとのこと。
全部全部、省略できない重要な情報ばかり。
多分、ボスから聞いている部分は全部伝えられた。
...でも、やっぱり気にかかること。
「…ボス、本当に一旦休んだ方がいい、と思う、」
「テニエル、今は休むべき時だよ…これから忙しくなるだろうから、尚更ね」
本当に、酷い顔色。
「…あぁ、悪い…少し自分の部屋に戻って休む。お前たちは取り敢えず首領の所に…」
「たしかに、出来るだけ早くこの件についての報告も…したほうがいいだろうね」
「ぁ、私先にルイスさんが来てること携帯で連絡しておきます!」
そう云って取り出した携帯に、文章を打ち込んでいく。
「…”分かった、詳しい話は帰ってから聞くよ”だって」
「…俺の異能でいいか?」
「勿論だよ__ごめんね、突然にお邪魔することになっちゃって」
「いえっ、今回の件は私達に原因がありますから…」
ボスの顔に影が差す。
元から悪かった顔色が余計に悪くなっているように見えた。
「…取り敢えず戻るか」
「そうだね」
「じゃあ、ボス、お願い…!」
ひゅん、と。
少しのふら付きと共に周囲の景色が一瞬で変わった。
「…ポートマフィア、本部___着いたぞ」
--- 「…あ、手前ら、今まで何して…ッルイスさん!?」 ---
着いた先には丁度中也と、その手にあった数枚の書類が、中也の驚いた拍子に散らばった、そんな惨状が広がっていた。
...わぁ、新入り黒服さんの身元情報じゃん中也駄目だよ情報漏洩なんてっ(
などとのんきなことを考えながらも、これから先の動きを真剣に考えていた。