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今日も明日も、君の隣で #3
***
長い長い、夢を見た。
突き落とされた私を、大河が助けてくれる夢。
「ほの」じゃなくて、久しぶりに「ほのか」って呼んでくれる夢。
「ごめんな……ほのかのこと傷つけて……」
大河は私に謝った。
昔の大河は、何かあるとすぐ飛んできて、自分のせいだと私に謝っていた。
ちょっと、昔に戻った気分だった。
***
「んっ…」
真っ白な天井。独特の、鼻につく消毒液の匂い。
「あら、起きた?階段の下の踊り場で落ちてたらしいから、びっくりしたわよ〜。」
優しそうな声が聞こえ、ここが保健室だと、そう認識する。
ああ、そっか。私、階段から突き落とされたんだ。
ん?
「らしい」?先生が運んでくれたんじゃないの?
私の不思議そうな顔に気が付いたのか、保健の先生はにこにこと口を開いた。
「えっと、皇くん?だったかしら。が、保健室まで連れてきてくれたのよ〜。いい彼氏ね♡」
「えっ…大河が?」
ってことは、夢じゃなかった?
そこまで考えたところで、私は我に返った。
「っていうか、か、彼氏じゃな……」
「ええっ!!まだ付き合ってないのぉぉぉ!!先生、もう付き合ってるかと思ってた!!」
一気にテンションが高くなった先生に弁解するべく、私は体を起こす。
「やっ、普通に幼馴染なだけで…」
「えっ、そう?
なんか進展あったら絶対言うのよ?
先生、そういうの大好きだから!!」
「もうっ、先生ぇ…」
いつもおっとりしている先生の意外な一面を見つけ、驚いていると急にふらっとめまいが襲ってきた。
「……っ」
「あらあら、ほのかちゃん。
今は身体中が痛いはずだから、ゆっくり休んどくのよぉ」
横になりながら、自分の腕や足を見つめる。
高い階段から落ちたせいで、身体中にあざや傷がなっていた。自分で言うのもあれだけど、結構ひどい。
身体中の痛さと生々しさに顔をしかめたとき、保健室の戸が「トントン」とノックされた。
「失礼します。2-3の皇です。」
「はぁーい」
えっ、大河ぁ?!!
突然の訪問にあわあわする私をよそに、先生は返事をしてしまった。
「ほ…須藤さんの様子を見にきたのですが。」
「ああっ、ほのかちゃんなら今奥のベットで休んでるわよ。」
先生の図らいにより、あれよあれよという間に面会の場がセッティングされてしまう。
「あああっ!そうだ!!
先生用事思い出しちゃったから、あとは2人でゆっくりしていってね!」
「はいわかりました。」
ちょっ、先生っ!!
なんで行っちゃうのっ?!!
っていうか大河も、なんで真面目に「分かりました」なんて言っちゃってるわけ?!!
語尾に♡マークがつきそうな勢いでそう言った先生と、そんな先生に至極真面目な声色で言った大河に、思わずそう叫びたくなった。
その間にも、大河の足音はどんどん近くなっていく。
ええーい、もうどうにでもなれっっ!!
やけくそで毛布を全身に被った直後、カーテンがシャッーと開いた。
「ほの、起きてるか?」
ほら、「ほの」って言った。
あれはやっぱり夢だったのかな。
「……うん……」
ギシッっと、ベットがなる音がする。
その傾きから、大河が座ったんだとわかった。
「ほの、なんであんなところで落ちてたんだ」
急に確信をつくその問いに、私は慌てて毛布から顔を出した。
「やっ、別に……
階段で足を滑らせちゃっただけだよ?」
「本当に?」
「……うん。
っていうか大河、授業は?」
「ばか、今休み時間だろ」
「……っ、あっ、そっか
で、でも、もうすぐ戻ったほうがいいんじゃない?先生にも「具合が悪いから休む」って伝えておいてほしいしっ。」
大河に嘘をつくことに少し抵抗があったけど、私の今の現状を知られるよりはまだマシだろう。
大河が保健室の戸を開けたときにチラッと見えた、あの少し困ったような、悲しそうな顔は、私の気のせいだと信じたかった。
読んでくれてありがとうございました(*´꒳`*)
最近なかなか書けてなかったもので…
「今日君」#4もお楽しみに〜(*´∇`*)
*さくらいあゆ*