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4 笑ってないわ
みやめお #meo
私がベンチから立ち上がると、子供たちはわらわらとそれぞれのお店に戻っていった。
「お嬢様はやはり、気がお強いのですね」
「そんなのことはないわ。私、笑えないんだもの」
リリははっとしたような顔をして、ぺこりとお辞儀をする。
「すみませんっ!」
「えっと……どうしたの?」
私はリリを連れて町の中へ入った。
町の中は私の心とは裏腹にワイワイとしていて、気分が少しほぐれる。
こんな時にシェイとか殿下が来たらな、と思うと背筋がぞっとする。
「何か欲しいものとか、ある?」
私がリリに聞くと彼女はほっとしたような顔をして、「はい!」と答えた。
「言いにくいんですけど……」
彼女はそう言って私の耳に口を近づける。
「正直言って、今のメイドと執事の人数じゃ、仕事が終わらないんです。人数が少なすぎて」
「えっ」
メイドと執事はこれでも多いほうなんだけど……。
それでも王宮と比べたら比にもならないわ。
「奴隷でも買うことにしましょう」
なんでもお金で手に入っちゃうから貴族はいいのだけど、嫌なのよね。
私たちが奴隷店に入ると強烈な殺気を感じた。
あら、私たちが助けてあげると言っているのだから少しはおとなしくすればいいのに。
「どうぞ」
犯罪奴隷ではない、貧しくて自分を売っている奴隷の方に行く。
「リリが決めていいわよ」
「え、じゃあ……。この中で家事が得意な人を鑑定させていただきます」
リリがそういうと大半が手を挙げる。
連れて行ってもらいたいだけね。
リリはそれでも懲りずに一人ひとり鑑定していった。
でも私の場合見ればわかる。
一番家事ができそうな人は、私に一番近い手前のエルフの女の子。
水色のストレート髪でちゃんと整えたら絵になりそうだわ。
でも、メイドとしていやっていくには品が足りないし、何より年が低すぎるわ。
目からも強烈な殺気を感じるし……。
リリはこの子が一番使えるとわかってもほかの人を選びそうね。
私は私で勝手に買っちゃおうかしら。
「ねえねえ、あなた、なんていう名前なの?」
私が彼女に話しかけると彼女は小さな声で答えた。
「ネオ」
「ネオっていうのね。苗字は? ないなんて言わせないわよ」
いかにも悪役令嬢の発言だわ。
本当に私、聖女としてやっていけるのかしら。
「ない」
「ないなんて言わせないわよ」
私は暗い笑みを見せる。
「……前は、フィバレットだった」
「そう。じゃああなたの名前はネオ・フィバレットね。……よろしく、ネオ」
「私のことを買うの?」
「ええ、そうよ」
私は牢に貼ってある値段表を見てぎょっとする。
「あなた、安いわね」
「子供だし、犯罪奴隷の女と犯罪奴隷の男の娘だから」
「あら、そう」
私は店主から鍵を受け取ると、ガチャリと牢を開ける。
「よろしくねっ……危ないわね」
私が手を出した途端彼女は隠し持っていたナイフで私のことを殺そうとする。
この子、本気だわ。
「お嬢様!」
「こっちは魔法が使えるのよ」
拘束魔法で彼女を捕まえるとナイフを奪い取る。
「んーっ、ん"!」
「あなた、犯罪奴隷になりたいの?」