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焔凍不鉄-1
「『焔乃神は凍乃神と共に地に降ちて、脅威と成生る外来を処すた____。その姿は踊の様に美うある。』
…やーめた。読書はつまんねえ。」
|菓子谷勇也《かしたにゆうや》は本を置いた。
「それよりさ、校舎裏でココアシガレット吸わねえ?」
「ありだぜ」「蟻だな」「フハハハミロ風紀委員がゴミノヨウダ」「なんかラピュ◯王いね?」
「俺本戻してくるから先行っててくれ」
友たちが図書室を離れるのを見届けてから、菓子谷は本を手に立ち上がった。
何か違和感___いや、その『焔乃神と凍乃神』を。
何故だか
「何処かで会った様な気がしてならない。」
「よ。茶飲みに来たぜ。」
「おう、おかえり勇也!!待って待って、今から沸かすから」
「オレの家ここじゃねえよー?」
「バレたか…」
年季の入った廟は手入れが行き渡っているせいか、綺麗ではある。古いが古い様には見えない。
菓子谷は放課後、此処にくるのが日課になっていた。
街外れの小さな神社。
この場所と言うより、此処にいる人達に用がある、と言う方が適切かも知れない。
神社の神主の2人。
(______彼等の名前、を、オレは知らない)
知らないが、何故か、何故か何度も何度も何度も言った事がある…いや、見た事がある気がする。
「ほいほいお待たせそしておかえり勇也…うわもう冷めてる!?」
「お前ら兄弟性格そっくりすぎるだろ、ここオレの家じゃねーよ」
「うーん、バレたか…んでどうしよ菓子谷…お茶冷めててもいい?」
「もーまんたい。センキュ」
廟の石段に腰掛けて飲む茶。そよそよと髪を揺らす秋色の風はまだ夏を捨てきれないみたいだ。
だが生暖かい風が落ち葉だまりを散らすその様はなんとなく猛暑の終わりを感づかせる。
「菓子谷先輩とれつひょう、いるー?」
「いるぜよ」
「坂本龍馬…」「おかえり」
「ただいまー。まさかこんな所に坂本龍馬が居るとは思わなかったな…」
そう言って|瀬野《せの》はトランペットのハードケースに腰掛けた。
「|奏架《そうか》もお茶いる?」
「んーにゃ俺はコンビニでココア買って来たから大丈夫。おかげで全財産が20円を切ったぜ…」
「おつかれ、ドンマイ」
「くっ…そ……そ、そう言う菓子谷先輩はどうなんすか」
「2500円」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?ちょっとくださいよ2000円くら…つべたっ!何!?」
「まあまあお二人共落ち着いて…俺と烈火兄貴の出番なくなってるよ」
「え?何?呼んだ?」
「ごめんって…ほら2人に買ってきたジュースあげるから」
「え?菓子谷先輩‥俺の分は」「ない」