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4.期待の中に。
今日も全て上手くいった。
いつも通り。これがいつも通りだ。
そう自分の中、口にも出せない独り言を呟き繰り返した。まるで、緊張している自分を勇気づけるように。
電車の中、一人ではない空間。だから声に出せないし、泣くことも出来ない。
今日は勢い余って3〜5限まで授業を入れてしまった。そして更にそこから、教授に呼び止められ21時まで練習する羽目になった。
だから、電車の中は仕事や学校帰りの人も少なくガラガラだった。
窓から差し込まれる月の元に広がるそこそこ都会な土地の夜景、今の僕には美しいと思うことができない。
美しいと思うことができないその夜景を見ながら、僕は静かに呼吸を整えていた。
その電車の中で揺られながら。
--- * ---
「はっ……ふっ……、ふ……」
深呼吸を繰り返しても、呼吸が出来ている心地がしない。苦しくて、壊れてしまいそう。
鬱病なんかじゃない。
僕があまりに弱いだけだ。弱過ぎるだけだ。
家だけが、僕の居場所だ。
家なら、一人だったら、好きに泣いてしまっていい。
なんで自ら、大学へ行ったんだろ…そんな思いで、また涙があふれでてきた。
別に僕がいなくなってもいい。
でも、それで今まで積み上げてきてしまったもの、全て崩れたとしたら、僕は__周りの人は___。
___踊っていたときを思い出す。
微かに聞こえた、あの称賛の声。無我夢中で踊った。確かに疲れはしたけど、あのとき、嫌な気分には全くなっていなかった。
「もっと頑張れるんじゃない?」
誰だったっけ、こんなこと言った人。父だっけ、どうだったっけ。
周りからの期待。それこそが、今の僕の『負のエネルギー』をつくっているのに。今、もうあんなこと言った人とはつながっていない。失敗したら、全部、全部、すべてがなくなってしまう。
___また、踊りたい。全力を出し切りたい。
そんな気持ちが少しあることを、僕は否めなかった。
製作:むらさきざくら、ツクヨミ