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星喰いの王II ―星の継承者―
metaru
星喰いの王II ―星の継承者―
『星喰いの王II ―星の継承者―』第一章:星の祠に咲く影
星が戻った世界は、静かに再生を始めていた。
灰界はその名を捨て、〈蒼界〉と呼ばれるようになった。
空は青く、風は命を運び、人々は星に願いを託すようになった。
だが、星の光が強くなるほど、影もまた濃くなる。
ノア・アルヴァスは、〈リュミエール〉の祠で星剣を守っていた。
七振りの剣は封印され、再び災厄が訪れぬよう祈りが捧げられていた。
彼は英雄として語られながらも、静かに暮らしていた。
だがある日、祠の前に一人の少女が現れる。
「あなたが……星喰いを倒したノア?」
少女の名は〈エル・ヴァルティア〉。
リリスの名を冠した星の下に生まれた、星の巫女の“継承者”だった。
彼女は星の光と共に生まれ、星剣に導かれて祠へと辿り着いたという。
「星が……また、泣いているの。空の向こうに、黒い星が目覚めようとしてる」
ノアはその言葉に、胸の奥がざわめいた。
星喰いは滅びたはずだった。だが、世界のどこかで、星の影が再び蠢いている。
「星剣が……震えてる。何かが、来る」
その夜、〈黎明の剣〉が微かに光を放った。
封印が、揺らぎ始めていた。
『星喰いの王II ―星の継承者―』第二章:星の継承者と記憶の剣
星の祠に現れた少女〈エル・ヴァルティア〉は、リリスの名を冠した星の下に生まれた“星の継承者”だった。
彼女は星の光と共に育ち、星剣の記憶を夢に見ることで、ノアの元へ導かれたという。
「私は……リリスの記憶を持っている。彼女が見た世界、感じた痛み、そして……あなたへの想い」
ノアはその言葉に、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
リリスが消えてから、彼は誰にも語らず、星剣の前で祈り続けていた。
だが、エルの瞳には、確かにリリスの面影が宿っていた。
「星剣が……私に語りかけるの。新たな災厄が、星の記憶を喰らおうとしているって」
その夜、〈氷の涙〉が微かに震えた。
ノアは星剣の封印を確認するため、祠の奥へと向かう。
だが、そこには異変が起きていた。
封印の間に、黒い霧が立ち込めていた。
星剣の一振り――〈深淵の刃〉が、微かに黒く染まり始めていた。
「これは……星剣が、記憶を喰われてる?」
エルが剣に手を伸ばすと、彼女の瞳に映像が流れ込む。
それは、かつてノアが〈深淵の谷〉で戦った“裏切りの英雄”カイ・ルシフェルの記憶。
だが、そこには見覚えのない影が混じっていた。
「この記憶……改ざんされてる。誰かが、星剣の記憶を喰らってる」
ノアは剣を構える。
「星喰いは滅びた。でも、星剣が狙われてるなら……新たな敵がいる」
その時、祠の外に異変が起きる。
空が一瞬、黒く染まり、星が一つ消えた。
「星が……喰われた?」
エルは震えながら言う。
「新たな災厄〈影星〉が目覚めた。星の記憶を喰らい、世界の“過去”を改ざんする存在」
ノアは決意する。
「なら、もう一度旅に出る。星剣を守るために。そして、リリスが遺した希望を繋ぐために」
エルは頷く。
「私は、星の継承者。あなたと共に、星の記憶を守る」
こうして、ノアとエルの新たな旅が始まった。
星の記憶を喰らう〈影星〉との戦い。
それは、過去と未来を巡る“記憶の戦争”の始まりだった。
『星喰いの王II ―星の継承者―』第三章:黒星の目覚め
空が一瞬、黒く染まったあの日から、世界は微かに軋み始めていた。
星の祠に封印された星剣のうち、〈深淵の刃〉は黒い霧に包まれ、記憶が歪み始めていた。
ノアとエルは、星剣の異変の原因を探るため、かつて〈深淵の刃〉が眠っていた〈深淵の谷〉へと向かう。
「この地は……前よりも、暗い」
エルの声は震えていた。
かつて星喰いの瘴気が濃かったこの地は、今や“影の星”の気配に満ちていた。
空は裂け、地は沈み、風は囁く。
「記憶を喰らう者が、目覚めようとしている」
谷の奥で、二人はかつての守護者〈カイ・ルシフェル〉の残響と再会する。
彼は霧の中に現れ、かつての姿とは異なる“影”を纏っていた。
「ノア……お前の記憶が、歪められている。星剣の力が、誰かに奪われつつある」
カイは語る。
〈影星〉――それは、星喰いの残滓から生まれた“記憶の災厄”。
星剣に刻まれた英雄たちの記憶を喰らい、偽りの歴史を創り出す存在。
「このままでは、星剣は“偽りの力”に変わる。希望ではなく、虚構の剣になる」
ノアは拳を握る。
「そんなことはさせない。星剣は、俺たちの旅の記憶だ。誰にも、奪わせない」
その時、空が裂け、黒い星が姿を現す。
それは、星のように輝きながらも、光を吸い込む“逆転の星”。
「我は〈影星〉。記憶の深淵より生まれし者。星の希望など、偽りにすぎぬ」
〈影星〉は語る。
「お前たちが信じた希望も、旅も、すべては“都合のいい物語”。本当の歴史は、もっと醜い」
ノアは剣を構える。
「なら、俺たちの記憶で戦う。偽りじゃない、俺たちが選んだ道で」
エルは星術を唱える。
「リリスの記憶が、私の中にある。彼女が信じた未来を、今度は私が守る」
激しい戦いの末、〈影星〉は一時撤退する。
だが、星剣の記憶はすでに一部改ざんされていた。
「星剣を、浄化しなければ。記憶を取り戻すために」
カイは最後に告げる。
「星神の遺言が、〈記憶の聖域〉に眠っている。そこに、星剣の真実が記されているはずだ」
次なる地:〈記憶の聖域〉
そこには、星神が星剣に託した“本当の歴史”が眠っている。
ノアとエルは、星剣を守るため、そして世界の記憶を取り戻すため、新たな旅路へと踏み出す。
『星喰いの王II ―星の継承者―』第四章:星神の遺言
〈記憶の聖域〉――それは、星神たちが最後に眠った場所。
世界の中心に位置し、星剣の記憶を刻む“根源の地”とされていた。
ノアとエルは、〈影星〉によって歪められた星剣の記憶を取り戻すため、この聖域へと向かう。
「ここは……静かすぎる。まるで、時間が止まってるみたい」
エルの言葉通り、聖域は凍てついたような静寂に包まれていた。
空は星の光で満ちているのに、風は動かず、音もない。
それは、星神たちの“最後の祈り”が今も響いているからだった。
聖域の中心には、七つの石碑が並んでいた。
それぞれが、星剣を鍛えた星神の魂を宿しているという。
ノアが〈黎明の剣〉を石碑にかざすと、光が溢れ、声が響いた。
「我らは、星の理を守る者。だが、希望が絶望に変わる時、星喰いは生まれる」
星神たちは語る。
星喰い〈虚星〉は、世界の感情が形になった存在。
そして〈影星〉は、虚星の“残響”――記憶に宿った絶望の断片。
「星剣は、希望の記憶を刻む剣。だが、記憶は脆い。歪められれば、剣もまた変質する」
エルは問いかける。
「じゃあ、星剣を守るには……どうすればいいの?」
星神の一柱〈セリオス〉が答える。
「記憶を“再構築”すること。星剣に刻まれた旅の記憶を、もう一度辿り、選び直すのだ」
ノアは拳を握る。
「俺たちの旅を……もう一度、記憶の中で?」
その瞬間、聖域の空間が揺れ、二人は光に包まれる。
気づけば、ノアはかつての〈ミレナ〉の村に立っていた。
星喰いの災厄が訪れる前の、穏やかな日々。
「これは……俺の記憶?」
だが、村の空には黒い星が浮かんでいた。
〈影星〉が、記憶の中に侵入していたのだ。
「お前の旅は、偽りだ。守ったものなど、何もない」
ノアは剣を構える。
「違う。俺は、守った。リリスを、仲間を、そして未来を」
エルの声が届く。
「記憶は、選べる。過去に囚われるんじゃなく、希望を刻むために」
二人の意志が重なった瞬間、聖域の光が爆ぜ、〈黎明の剣〉が輝きを取り戻す。
星剣の記憶が、浄化されたのだ。
星神たちは微笑む。
「よくぞ選んだ。これが、星剣の真実。希望は、記憶の中に生き続ける」
そして、星神たちは最後の言葉を残す。
「〈影星〉は、星剣の記憶を喰らい、世界の歴史を塗り替えようとしている。止めるには、星剣の“原型”――〈始源の刃〉が必要だ」
次なる地:〈星の始源〉
そこには、星剣が生まれた最初の場所。
希望も絶望も、まだ分かたれていなかった“始まりの剣”が眠っている。
ノアとエルは、星剣の真実を胸に、新たな地へと旅立つ。
記憶を守る戦いは、いよいよ核心へと向かっていく。
『星喰いの王II ―星の継承者―』第五章:七つ目の剣の真実
〈星の始源〉――それは、星剣が生まれた最初の場所。
世界がまだ灰に染まる前、星神たちが希望の光を鍛えた聖なる地。
ノアとエルは、星神の遺言に導かれ、遥か北の空に浮かぶ〈始源の環〉へと向かっていた。
「ここが……星剣の始まりの場所」
エルの声は、星の風に溶けるように静かだった。
始源の環は、空に浮かぶ七つの光の柱が交差する場所。
その中心に、封印された剣――〈始源の刃〉が眠っているという。
だが、剣の前には一人の影が立っていた。
その姿は、かつてのノアに酷似していた。
黒銀の鎧を纏い、七振りの星剣の“偽り”を携えていた。
「俺は〈ノア・アルヴァス〉。お前の“可能性”だ」
影のノアは語る。
「お前が選ばなかった道、捨てた願い、抱えた憎しみ――それが俺だ」
〈影星〉は、ノアの記憶だけでなく、“選ばれなかった未来”をも喰らっていた。
その結果、生まれたのがこの“もう一人のノア”だった。
「〈始源の刃〉は、選ばれた者にしか応えない。だが、お前はもう希望を信じていない。リリスを失い、過去に囚われている」
ノアは剣を構える。
「違う。俺は、希望を選び続ける。リリスが信じた未来を、俺が生きる」
エルが一歩前に出る。
「あなたの記憶は、私の中にある。だから、もう一人じゃない」
二人の意志が重なった瞬間、〈始源の刃〉が光を放つ。
それは、七振りの星剣の“原型”――希望と絶望の境界に鍛えられた剣だった。
「この剣は、世界の“選択”を問う剣。使う者の心が、世界の未来を決める」
影のノアは微笑む。
「ならば、選べ。希望か、絶望か」
激しい戦いの末、ノアは〈始源の刃〉を手にし、影のノアを打ち倒す。
だが、その刃は彼に問いかける。
「お前は、何を守る? 誰のために戦う?」
ノアは答える。
「俺は、リリスの願いを継ぐ。星を、未来を、そして……この世界を守る」
〈始源の刃〉は、彼の選択を認め、七振り目の星剣として輝きを放つ。
『星喰いの王II ―星の継承者―』第六章:リリスの残響
〈始源の刃〉を手にしたノアとエルは、星剣の記憶を浄化し、〈影星〉との決戦に向けて準備を進めていた。
だがその夜、ノアは不思議な夢を見る。
夢の中で、彼はかつての灰界を歩いていた。空は灰色に染まり、風は冷たく、そして――その中心に、リリスが立っていた。
「ノア……あなたは、まだ迷っている」
彼女の姿は、かつてと変わらぬ青い瞳と優しい微笑みを湛えていた。
だが、その声にはどこか切なさが滲んでいた。
「〈影星〉は、あなたの記憶だけじゃなく、私の“残響”にも触れようとしている。私の願いが、歪められてしまうかもしれない」
ノアは拳を握る。
「そんなことはさせない。お前の願いは、俺が守る」
リリスは静かに頷く。
「なら、私の“残響”を受け取って。私がこの世界に遺した最後の力――〈星の祈り〉を」
その瞬間、ノアの胸に光が宿る。
それは、リリスが異世界へ還る直前に込めた“想いの記憶”。
星剣を導き、希望を灯す力。
目覚めたノアの手には、微かに輝く星の紋章が刻まれていた。
エルが驚きの声を上げる。
「それは……星の巫女の印。リリスの祈りが、あなたに宿ったのね」
その力は、〈始源の刃〉と共鳴し、七振りの星剣を繋ぐ“星の輪”を形成した。
それは、〈影星〉の核へと至る唯一の道。
「リリスの願いが、俺たちを導いてる。なら、迷う理由はない」
ノアとエルは、星の輪を通じて〈影星の核〉へと向かう。
そこには、世界の記憶が集まり、歪められた“偽りの歴史”が渦巻いていた。
「最後の戦いが始まる。でも、俺たちは希望を選び続ける。リリスがそうしたように」
エルは静かに頷く。
「そして、星を取り戻す。今度こそ、完全に」
『星喰いの王II ―星の継承者―』第七章:星の継承と新たな契約
〈影星の核〉へと至る星の輪を通り抜けたノアとエルは、世界の記憶が渦巻く空間へと足を踏み入れた。
そこは、過去・現在・未来が交錯する“記憶の深層”。
星剣に刻まれたすべての旅路が、光と影となって漂っていた。
「ここが……〈影星〉の心臓」
エルの声は震えていた。
空間の中心には、巨大な記憶の結晶が浮かび、その中で無数の声が囁いていた。
それは、世界中の人々が抱いた“忘れたい記憶”――痛み、後悔、喪失。
「〈影星〉は、希望の裏にある“忘却”を喰らって育った。だからこそ、星剣の記憶を狙う」
ノアは七振りの星剣を構える。
その刃は、彼の旅の記憶そのもの。
だが、〈始源の刃〉だけが、まだ沈黙していた。
「この剣は、世界の選択を問う剣。使うには……契約が必要だ」
その時、空間に星神たちの残響が現れる。
彼らは語る。
「〈始源の刃〉は、希望と絶望の境界にある。使う者は、世界の未来を“選び直す”覚悟が必要だ」
ノアは問いかける。
「選び直す……って、どういうことだ?」
星神〈セリオス〉が答える。
「お前の旅も、リリスの祈りも、すべては“可能性”の一つ。だが、〈影星〉はそれを否定しようとしている。だから、今ここで――新たな契約を結べ」
エルが一歩前に出る。
「私が、星の継承者として誓う。希望を選び、記憶を守る」
ノアは剣を掲げる。
「俺は、リリスの願いを継ぐ者として誓う。絶望に屈せず、未来を切り拓く」
その瞬間、〈始源の刃〉が輝き、七振りの星剣が共鳴する。
空間に星の輪が広がり、〈影星〉の核が露わになる。
「契約は結ばれた。今こそ、〈影星〉との最終決戦へ」
だが、〈影星〉の声が響く。
「契約など、意味はない。記憶は脆く、願いは儚い。お前たちの希望も、いずれ忘れられる」
ノアは剣を構える。
「ならば、何度でも思い出す。希望を、祈りを、そして――リリスを」
エルは星術を唱える。
「記憶は、誰かが語り継げば生き続ける。だから、私たちは戦う」
『星喰いの王II ―星の継承者―』第八章:虚星の残滓
〈影星の核〉――それは、世界の記憶が凝縮された空間。
ノアとエルが星剣の契約を結び、〈始源の刃〉を覚醒させたことで、空間の奥に眠る〈影星〉の本体が姿を現した。
それは、かつての〈虚星〉に酷似していた。
だが、違っていたのはその“形”。
無数の記憶の断片が絡み合い、英雄たちの面影、失われた願い、歪められた過去が混ざり合った“記憶の怪物”だった。
「我は〈虚星の残滓〉。星喰いの死後に残された、世界の忘却と否定の集合体」
その声は、かつてノアが聞いた虚星の囁きと同じだった。
だが、より冷たく、より深く、心の奥に響く。
「お前たちの旅も、祈りも、いずれ忘れられる。記憶は風に流れ、願いは塵となる」
ノアは剣を構える。
「それでも、俺たちは選び続ける。希望を、祈りを、そして――記憶を」
エルは星術を展開し、七振りの星剣を空間に浮かべる。
それぞれが、旅の記憶を宿した“意志の刃”。
「この剣たちは、誰かが願った証。忘れられても、語り継がれれば生き続ける」
戦いが始まる。
〈虚星の残滓〉は、ノアの記憶を歪め、リリスの声を偽り、旅の仲間たちの姿を模して襲いかかる。
それは、記憶そのものを武器にする“存在否定の戦い”。
「お前の旅は偽りだ。リリスはお前を選んだのではない。星剣は、ただの道具だ」
ノアは苦しみながらも、剣を握りしめる。
「それでも、俺は信じる。リリスの言葉を、仲間の絆を、そして――俺自身を」
エルが叫ぶ。
「記憶は、痛みと共にある。でも、それがあるから、希望を選べる!」
その言葉に、〈始源の刃〉が輝きを放つ。
七振りの星剣が共鳴し、空間に“記憶の輪”が広がる。
「これが、私たちの旅の証。忘れられても、消えないもの」
〈虚星の残滓〉は叫び、空間が崩れ始める。
だが、最後の一撃を放つには、もう一つの力が必要だった。
「最後の剣――〈継承の刃〉。それは、記憶を未来へ繋ぐ剣」
星神の残響が語る。
「その剣は、継承者の祈りによって鍛えられる。エル、お前の願いを、剣に変えよ」
エルは目を閉じ、祈る。
「私は、リリスの継承者。彼女の願いを、未来へ繋ぐために――この剣を!」
その瞬間、星の光が集まり、八振り目の剣〈継承の刃〉が現れる。
それは、記憶を語り継ぐ者の意志を宿した、未来の剣。
ノアとエルは、八振りの星剣を手に、〈虚星の残滓〉へと向かう。
最後の戦いが、今始まる。
『星喰いの王II ―星の継承者―』最終章:星の未来と継承者の誓い
〈虚星の残滓〉との戦いは、記憶と願いのすべてを懸けた壮絶なものだった。
ノアとエルは、八振りの星剣――〈黎明の剣〉、〈深淵の刃〉、〈焔の王冠〉、〈氷の涙〉、〈虚空の刃〉、〈幻夢の刃〉、〈終焉の剣〉、そして〈継承の刃〉を手に、記憶の怪物に立ち向かった。
「我は、忘却の化身。お前たちの希望も、祈りも、いずれ誰にも思い出されなくなる」
〈虚星の残滓〉は、世界の“忘れたい記憶”を武器に変え、二人の心を試す。
ノアは、リリスとの別れを何度も見せられ、エルは自分が“偽物”であるという幻影に囚われる。
だが――
「俺は、忘れない。リリスの言葉も、仲間との旅も、すべてが俺の剣だ」
「私は、継承者。誰かが忘れても、私が語り継ぐ。それが、私の使命」
二人の意志が重なった瞬間、〈継承の刃〉が輝きを放つ。
その光は、記憶の深層を貫き、〈虚星の残滓〉の核へと届いた。
「記憶は、消えない。誰かが願い続ける限り、星は輝き続ける」
ノアが〈終焉の剣〉を振るい、エルが〈継承の刃〉で未来を刻む。
八振りの星剣が共鳴し、〈虚星の残滓〉は叫びながら崩れ落ちた。
そして――
空が光に包まれ、世界は静かに再生を始める。
星々が再び輝き、灰界は完全に〈蒼界〉へと変貌した。
ノアは剣を祠に納め、エルは星の巫女として新たな時代を導く者となった。
「リリス……お前の願いは、俺たちが継いだ。星は、もう迷わない」
夜空には、二つの新しい星が輝いていた。
一つは〈希望の星〉――リリスの名を冠した星。
もう一つは〈継承の星〉――エルの祈りを宿した星。
人々はその星を見上げ、願いを託ようになった。
そして、星剣の伝承は語り継がれる。
「星を憎んでいた俺が、今は星に祈りを捧げてる。……変わったな、俺も」
ノアは微笑み、エルと共に新たな時代を歩き始める。
エピローグ:星の継承者、そしてその先へ
世界に星喰いはもういない。
だが、記憶と願いがある限り、星剣の物語は終わらない。
いつかまた、誰かが星を見上げ、旅を始めるだろう。
その時、ノアとリリス、そしてエルの物語は――
新たな“星の章”として語られる。
―完―