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6人目の猟犬は元組合 第肆話
「アヤカ」
アンの部屋を出て、町中を歩いているアヤカに一人の女性が声を掛けた。
「ハンナ、久しぶり」
ハンナと呼ばれた女性は、アヤカを見て驚いた顔をした。
「アヤカ……その制服、警察?」
「軍警。今は日本の軍警の部隊の一員として、仕事してる」
「そうなんだ。中学卒業してからアヤカ、学校来なかったよね。転校したの?」
その質問に、アヤカは黙り込んだ。カナダの義務教育は州によって違うが、アヤカやハンナの住んでいたノバスコシア州では14歳まで中学校に通い、17歳までシニアハイスクール(日本で言う高校)に通うことになっている。が、アヤカは14歳で猟犬に入隊し、シニアハイスクールにはほとんど通っていなかったために説明ができないのだ。
「………うん。そんな感じ。ハンナは今何してるの?」
「普通に学校通ってるよ。先週から日本に留学しに来てさ、外出てみたらアヤカに会えたから。でも全然人いないよね。なんかどっかの探偵社が指名手配されてるみたいだけど」
アヤカはまた黙り込んだ。いま自分が捜査してる案件だからだ。
「アヤカ、警察なんでしょ?頑張って捕まえてね。せっかく日本来たのに、そんな人達に殺されちゃうとかなったら私嫌だもん」
「うん。そこの所は大丈夫。心配しないで。日本留学頑張って、ちゃんと楽しんでね」
「ありがと!仕事落ち着いたら連絡してね。ご飯でも行こ!」
「了解。またね」
アヤカはハンナと別れると1人路地裏に入り、座り込んだ。
「………どうしたらいいんだろ」
猟犬に入ってからの4年間と、組合での3年間。半端なく忙しかったけど、とても楽しかった。数ヶ月前の三社鼎立の時はちょっとだけ仕事をサボったけど、今までで一番大きい案件だったから内心ワクワクしながらやっていた。でも今は、その時とは比べ物にならない程の重圧を感じでいる。福地の正体だって入隊した時から見抜いていたし、天人五衰の情報もほぼ把握している。なのに、どうすれば上手くいくのか、わからない。自分1人にという訳では無いけど日本、いや世界、というか人類の運命が握られてると言っても過言では無いのだ。
_______自分に酔っていたのかもしれない。
アヤカは唐突にそう感じた。
異能すらも作ることができる異能を持ち、14歳という若さで猟犬に入隊。組合に潜入するという仕事を任され、大きな成果は挙げずとも任されたことに誇りを持っていた。こんな作戦じゃ協力しない、考え直してからまた呼べ、などと偉そうな態度をとっていた自分が急に馬鹿らしく思えてきた。自分はそんな事を言えた立場では無い、と気づいたからだ。あそこにいた中島敦は犬猿の仲であるマフィアの芥川と協力して団長を倒した。泉鏡花は自分が猟犬に入った時と同じ年齢で35人殺した。国木田は太宰と共に蒼の使徒の事件を解決させた。江戸川乱歩は生まれながらに素晴らしい頭脳の持ち主だ。社長の福沢は異能無しで福地と渡り合える強さを持っている。異能だけに縋り、自分の力を過信していた。結局は、何が起こるか分かっていても仲間のことを助けられない弱い人間だ。そう、冷たい路地裏で考えていた。
どうも、土曜授業あるのが嫌すぎて起きられないであろうぱるしいです。今朝起きる時も謎にシンジ君の「逃げちゃダメだ」を脳内再生しまくってから7時に起きました。6時半に起きるつもりでした。ということで話題がかなり逸れましたが、4話はどうでしたか?更新頻度が遅くて申し訳ないんですがこれからテスト期間に入るのでまた更新止まると思いますが、待っていてくれると嬉しいです。