"ちゃんと"きょくぱろをします。

今日、俺はーー 飛び降りようと思う。 漣)…っ 触れる風が異様に冷たくて 遠くには住宅街と、海が見えて あぁ、俺は…こんな綺麗な街で生きてたんだと実感した。 でも、そんな今気づいた美しさとも今日でお別れだ。 最後に…優羽、会いたかったなぁ… フェンスに手をかけた時。 優)れん…っ、！！ 漣)っ…！？ゆ、ぅ… 後ろから響いた大好きな声に、今会いたくて、今会いたくなかったな、と意味がわからないことを 思った。 優)なぁ漣…今から飛ぶん？ 漣)……__うん、__ごめん、 優)いや、なんで謝んねん、！笑じゃあさ… 俺も一緒に、飛んでもいい？ …出る訳ない言葉に、思わず理解が追いつかなかった。 漣)は、なんで… 優)ははっ、止めてくれるとか思った？俺が漣にそんなことするかぁ？ 確かに。 優羽は、いつでも俺のことを考えてくれてた。 少なくとも俺の中では…1番の親友、そして…1番、好きな人だった。 そんな優羽が…俺がなんで死のうとしてるのかも聞かずに、止めるわけがない。 優)じゃー、手ぇ繋いで飛んでみる？ 優)ピースとかしようや！笑 そう目の前で無邪気に笑う優羽に、 俺の心は一瞬だけ、揺らいでしまった。 優)あれ、俺なんか忘れてね？ いきなりそんなことを言い出した優羽。 顎に手を当てた優羽を眺めていると、不意に「あぁぁっっ！！」と声を上げた。 優)今日遊ぶって言ったやん！！！！ 漣)…あれ…そうだっけ、 死ぬことしか考えてなかったから、気づかないうちに返事をしてしまっていたっぽい。 優)やっぱさ！飛ぶの後でにしよ！？今日〇〇のガチャ来るって〜！！ 漣)…！ 手を引かれて、そのまま階段を駆け降りた。 俺の人生は、今日で終わりではなかったらしい。 優羽の手の暖かさを感じながら、少しだけ…「生きたい」と思ってしまった。 優羽の家に着いて、部屋へ連れて行かれた。 ばんっ、とドアが閉まった瞬間。 優)っ、う… 漣)っぇ、ゆう…、！？ 優羽がいきなり、泣き出してしまった。 優)な、んで…っ、 優)なんで、しのうと…してっ、 漣)…… 一緒に飛んでくれる、なんて、少し安心してしまった自分を殴りたくなった。 こんなに俺を好いてくれているのに俺も好きなのに。 悩みを相談しないで、何が親友だ。 それから俺は、優羽に全てを話した。 俺が、自分と同じ男子を好きになること。 優羽のことを好きになってしまったこと。 告白したら引かれると思って、出来なかったこと。 こうして口に出してみれば、こんなので死ななくてもよかったのでは、と思ってしまった。 優)…… 漣)…ごめん、 漣)やっぱ…気持ち悪いよな、 優)っ…んーん、 優)全然、？気持ち悪くないし、なんなら… おれもいっしょ、 すき、 そう言って抱きついてきた優羽。 一緒に飛ぶ、と言われた時は、あんなに理解が追いつかなかったのに 今のすきは、すぐに理解ができた。 あぁ、 おれは、 こんなにいい人に恵まれてたんだ まだ、死にたくないな そう思った。 いつのまにか俺も泣いていて、 二人して大泣きした日になった。 そして、俺が初めて…生きたいと思った日になった。 漣)っ、おれも…だい、すきっ… 優)っ…はっ、笑 　　おれのがすきだから…！