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8 - 釜茹で
「さあ、この|釜《かま》の中に入れ」
|彫《ほ》りの深い、真っ赤な顔をした男が あなたにそう命令します。
釜の中には|沸騰《ふっとう》した熱湯がぐつぐつと煮えたぎり、熱気が|漂《ただよ》っています。
あなたは戸惑い、男の顔を見ます。
どうやら、あなたは罪人のようです。
「ええい、さっさと入らんか」
男が|苛《いら》ついたように急かします。
あなたは、言われた通りに釜の中に入ります。
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あなたの皮膚に、|瞬《またた》く間に無数の水|脹《みずぶく》れが走り、|爛《ただれ》ます。
爛れた皮膚は破裂し、血が吹き出します。
吹き出した血と血の|隙間《すきま》から、肉が|覗《のぞ》いているのが見えます。
肉は熱湯に触れ、固まります。
体中の水分が沸騰し、あなたの体は|膨《ふくら》みます。
あなたは痛みも感じません。
「あはははっ」
あなたは笑います。
「いい湯だねぇ……!」
あなたは笑います。
その瞳は、次第に空洞を映します。
その体は、爛れ、破れ、固まり、原形を留めることなく崩れていきます。
まるで、——— 化け物かのように。
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それを見て、男は驚いたように目を見開きます。
真っ赤な顔に似つかわしくなく、間抜けたようにポカンと口を開けています。
男は、左手を上げました。
そして、口を開きました。
「もうよい。そなたは———|現世《うつしよ》に|還《かえ》れ」