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多面的人格論 #5
**第五話 夜半、滞る。**
夜半。虹野黎は、目を覚ました。
「ん……あぁ。熟睡したな。まぁ、最近は徹夜し続けてたしな……」
ふぁ、と欠伸を噛み殺す。
「で、明日は学校にいかなきゃいけないのか……はぁ。準備、するか」
さっさと準備を終わらせようと、黎はベッドから降りた。
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「……参ったな」
準備を開始し、十分ほど経った頃。黎は膨れ上がった鞄を前に嘆息した。
「学校、全く行ってなかったせいで、何持ってけばいいのか分かんないや……」
というわけで、とりあえず要りそうなものを詰め込んだ結果、こうなった。
「んー……もうちょっと整理したら、それでいいや」
流石にこの量は持っていくのが大変そうだったので、仕方なく少し調整することにした。
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「よし、これでいっか! 大分減ったし、いいよね」
自分を納得させるように二、三回頷き、椅子に座り込んだ。
そこで、自分がパジャマ姿だということに気づく。
パジャマと言っても、パーカーにズボン(どちらもダボダボ)というザ・部屋着みたいなコーデというだけなのだけれど。
「流石に着替えなきゃ、か。何日もこの服着てるし……」
服を脱ごうとして、あ、と留まる。
今更だが、藍の別人格には男も女もいる。藍は女だからもちろん身体も女だ。
(……一応、止めといた方がいいかな?)
まぁ実質、多重人格だからどの人格も女であり男でもあるようなものなのだけれど、他の自分に批難されそうだ。
いくらなんでも、自分の身体に興奮することはないと思うけれど。
「えっと、次は……明だったか。うん、それなら女子だからいいだろう」
着替えは次の子に任せるとして、黎は残りの自分の時間を小説に充てることにした。
黎は机に向かい、ゆっくりだった思考を加速させる。
それはもうぐるぐると、呪いのように考えだした。