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四葉の誓い
神無月
この世界で僕だけ、俺だけが覚えてる。
今日もまた夢を見る。
赤髪の子が2人、黒髪の子が2人。
いつも同じ場面を俯瞰して見せられる。
「桜真、蓮華!あんまりはしゃぐなよ、怪我するぞ!」
「まぁまぁ、いいじゃないか四葉。ほら、俺たちも行こう。」
「ちょ、緋彩!ひっぱんな!」
四葉と呼ばれた黒髪の少年が、赤髪の少年、緋彩と共に少女たちの元へ向かう。
「ちょっと!お兄ちゃん遅い!」
「あっ3人とも!見て!」
そう言った赤髪の少女、桜真の目線の先には、花畑が広がっていた。
それを見た黒髪の少女、蓮華は目を輝かせる。
「お兄ちゃん!お花!いっぱいあるよ!」
「……綺麗だな。」
「そうだね……孤児院だと、あまり外に出て遊ぶことは無かったから。」
「お父さんのおかげだね。」
4人は花畑へ向かう。
そこからはダイジェストのように映像が流れる。
花冠を作ったり、鬼ごっこをしたり。
蓮華を抜いた3人は、見た目に反して大人びているようだった。
その映像は、ある場所で止まる。
「いいか?俺たちは孤児院のころから、4人で1つだ。みんなで幸せに。」
「今更だね、四葉。私たちはもう苦楽を共にしてきた仲でしょ?」
「今までも、これからも。みんなで支え合って生きていこう。」
「お兄ちゃんも、緋彩にぃも、桜真ねぇも!みーんな家族だもんね!」
大きな花畑の真ん中で、それぞれが作った花冠を交換した。
幼い少年少女の、誓い。
破ることのないよう、破られることのないよう。
花に誓い合った約束。
暫くして、それは破られた。
睡蓮は散った。
英雄は殺された。
……桜は消えた。
残されたクローバーは枯れることを望んだ。
後悔、憤怒、悲壮、自責。
ありとあらゆる負の感情が、四葉を包んだ。
暗闇の中に飲み込まれそうになる。
そのとき
どこからか、桜の花びらが舞い落ちてくる。
人の暖かさと、少しの虚無感を持って。
目を覚ます。
いつもと同じ夢、いつもと同じ結末。
いつもと同じ感覚。
「……最悪の気分だ。」
「四葉…?大丈夫ですか?顔色が悪いですが…」
「…桜真、敬語。」
「あっ…ごめん、まだ慣れなくって…。」
「いや、すまん。俺も強制する気は無かった。少し気が立ってるみたいだ、気にしないでくれ。」
「う、うん…わかった。」
その後四葉は、記憶をなくした桜真を敵組織から取り戻した。
……しかし、彼女は何も覚えていなかった。
戸籍の情報から自身の名前は分かったが、それ以前のことは、何も……。
四葉は日々考える。
『こいつは本当に桜真なのか』、と。
そしてそれに伴って、嫌な結論にたどり着く。
『あの日々は本当に存在していたのだろうか』
今となっては、あの日々を証明出来るのは四葉の記憶だけ。
そう、記憶だけなのだ。
写真も何も残っていない。本当にあったのかも分からない。
あの日々は、本当は妄想だったのではないか?
本当に自分たちのしていることは正しいのか?
「……本当に最悪の気分だ。嫌になる。」
《理想には程遠い》
それは真か幻か。