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パッと思いついてちょっと書きたくなっただけのやつ
「__潜入、ですか」
「うん、年齢的に君が一番適任でね…もう一人、少し経ったら人員が割けるはずだから、それまでは一人で頼んだよ」
「__分かりました」
潜入なんてかなり久し振りだ。
うまくやれるだろうか。
おまけに私でも…経験、したことのない潜入先だからちょっと不安。
「…が、学校…」
教科書などは既に用意してあるとのこと。
そして大事な制服は…かなり自由度が高いらしい。
指定のワイシャツを着ていれば、式典以外はブレザー着用義務もないらしく、スカートもセーターもベストも普段は自由らしい。
「…わからない……」
こういうのは学校に行っている人じゃないと可愛い組み合わせとかわからないし…どうしよう。
「…あ」
--- …一人、適任な人、見つけた…! ---
---
「だからナオミを一寸借りてもいいですかー!」
「勿論ですわ!!桜月の服選びなら幾らでも!!」
お菓子とお茶でもてなされてしまって、少し申し訳ない。
そんな大した用で来たわけでもないのに…
「桜月ちゃんの服選びだって!?ぜひ私も同伴し」
「黙れ!お前は先週から溜め続けている書類を全て片付けるまで外出は許さん!!」
「ひー、国木田君ったら、そんなんじゃ労働基準法に違反していると訴えられてしまうよ?」
「黙れこの唐変木が!貴様が初めから仕事をしていれば俺はお前の世話など初めからしていない!!」
ナオミと谷崎さんと顔を見合わせて苦笑する。
そういえば、敦くんとお姉ちゃんは外回りだろうか。
賢治くんや与謝野先生の姿も見当たらない。
「うん、二人ならついさっき出て行ったよ〜、与謝野さん達は買い出し」
「乱歩さん!」
何時も通り飴玉を口の中で転がしながらのんびりとしているその姿に、相変わらずだなぁ、と何処か和む。
なるほど、買い出しには賢治くんが欠かせない。
「それじゃあ…ナオミ、少しだけお借りしますね」
「私も連れて行っておくれよぉ〜」
背後から亡霊のようについてくるその声は、聞かなかったことにした。
歩き出しても尚幾度となく国木田さんの罵声も聞こえてきたから、きっと流石におとなしく…
「…は、ならないかぁ」
「あの太宰さんですものね」
既視感を覚えながらも苦笑いすると、ナオミはそれじゃあ、と先陣を切って歩き出した。
「このお店は特に制服の取扱量がいいですわ」
曰く、普通の女子高生の中でも“なんちゃって制服”というものがあるらしく、私服可能な高校では自分の好きなように制服をカスタムしたり、好きなものを選んでオリジナルの制服を作るらしい。
あまりよくわからないけれど。
「こんな風にしたいというイメージは?」
「んー、そもそも制服をあんまり知らないから…」
「なら一度店内を見て回って気に入ったものを見ていきましょう!」
テンションの高いナオミに手を引かれながら片っ端からお店を見て回る。
セーラー服からブレザー、吊りスカートもあるんだ、全然知らなかった。
全部ナオミのようなものかと思ってた。
そういえば思い返せば、街中ですれ違う女子高生もさまざまな格好をしていたっけ。
「…これ、可愛い…!」
ふと私の目に留まったのは、薄いブラウンとほとんど白に近いくらいの桃色のアーガイルチェックのベスト。
縁にも細いラインが引いてあって、可愛い。
「ふふ、桜月に似合いそう!リボンやネクタイもこんな風な系統が合うと思いますわ」
その後暫く二人で悩みに悩んで、結局ベストの色味に合わせたリボンと普通のチェックのスカートになった。
「…でも、これ着て外を歩くの、一寸緊張する…」
「大丈夫ですわ!試着して似合ってましたもの」
「そ、そう、かな…」
「ええ!…折角だし、“慣れ”の為に少し着て一緒に探偵社まで戻りましょう」
「ひぇえっ、む、無理だよぉ…」
「店員さん!これ、タグ外してもらえませんか?」
「ナオミちゃーん!!」
「ううう…」
「とっても似合ってますわ!!」
「そもそも私年齢的にどうなの…」
「あら?14歳でも16歳でも可愛いから大丈夫、素敵ですわ」
襟にラインが入ったブレザーも丁度いい感じ、らしい。
なるほど、これはいい感じなんだ。
その後、帰り路には普段の着こなしを教えてもらっていた。
ブレザーは前を開けておいたり、正スカートを折ることやスクールバッグについても。
キーホルダーは沢山つけていて可愛いらしい。誕生日に色々な人からもらったからそれをつけようかな。
「桜月ちゃん!ナオミちゃん!お帰りなさ…い?」
「…桜月、可愛い」
「ありがとう…お姉ちゃんもいつも通り可愛いよぉ…」
そして太宰さんはというと、どうやら私たちが探偵社を出てすぐに消えてしまったらしく。
なんとなく分かってはいたけれど、こっそり尾けていたらしい。いや、ストーカーか。
「だって桜月ちゃんが余りにも可愛いんだもの」
「だってじゃないです!可愛くきゅるんってしながらそんなこと云っても!貴方はいい大人なんですから!!」
とりあえずお姉ちゃん、小刀仕舞おう。
にしても流石というか、太宰さんがこっそりついてきていたなんて全くもって気づかなかった。
今度尾行教えてもらおうかな。
私苦手なんだよね。誰かしら何かしらを引き寄せちゃうから。
またもや怒られる太宰さんを最後に、マフィアビルへ戻った。
「…あ、この格好のまま帰ってきちゃった」
「…桜月?桜月!?めちゃくちゃ似合ってるじゃないですか其れ!」
「ひ、ひ、ひ、ひぐっちゃん落ち着いて!!」
そして彼女が賑やかになると_
「あ?って桜月、そのカッコ…あぁ、潜入があるって云ってたっけ?」
「…素敵です」
__黒蜥蜴を呼び寄せる。
そして黒蜥蜴が来たら、
「あァ?手前ら仕事し__桜月!?」
中也が来て。
中也が来たら__
「おお!!桜月は制服姿も愛いのう!」
紅葉姉さんまで呼び寄せちゃった。
やっぱり私、引き寄せる才能か何かがあるのかもしれない。
---
「初めまして、編入する綾瀬鏡月です!よろしくお願いします」
苗字は適当。
鏡月と云う名前は__以前に「あの人」との一件の潜入で使った名前を使いまわした。
「えー、めっちゃ可愛い」
「よろしくー!ねぇねぇどこ中だったの?」
「てゆかすっごい童顔だよね!?なんかもう可愛いんだけど」
ひくっ、と表情筋が引き攣った。
こわ、勘が良すぎてこわい。
童顔…ってことでいっか。
ちなみに今回の目的は、先生に紛れて学校内で闇取引をしているという話が持ち込まれたから、その件で。
公的機関で、しかも教育の場でそんなことになっているなんて、本当に世も末かもしれない。
「えーっ、私!?いや私よりずっと、えーっと…へぇ、美奈って云うんだー!美奈の方が可愛いから!これ法律で決まってる(?)」
「えーっと、多分他県からきたからわかんないと思う!ごめんっ」
「童顔かぁ、よく云われるんだよね…一寸大人っぽい方が憧れるなぁ」
周囲の席の子達と話していると、休み時間はちらほらと他のクラスからも何人か話しに来た。
うん、大丈夫、これならやっていける。
お昼も美奈達と一緒に食べようと声をかけられて。
__うん、大丈夫。
不安要素の一つだった授業も、なんとかある程度は追いつくことができて大丈夫そうだった。
一安心…
「じゃあ、また明日ー!」
「明日ねー!」
「バイバーイ」
「ほんと今度絶対一緒にあのお店行くよ!?」
「分かった分かった!それじゃあ、部活がんばってね!」
部活のあるみんなとは別れて、私は職員室へと向かう。
今日一日過ごして、大体の目処はついた。
真坂、担任が一番怪しいとは。
「あ、ああ、泉。今日はどうだった?」
「みんな優しくて、先生も授業がわかりやすくて、本当にここに来て良かったです」
「そうか、なら良かった!」
人当たりが良くて優しい先生だと生徒からもかなり人気を得ている。
…まだまだ調査が必要。
「その、部活動なんですけど」
「各顧問にも話は伝わっているから、興味のあるところを色々見て回るといい」
「本当ですか…!ありがとうございます!」
仕事が早いのか、それともこれが普通なのか。
どうにも学校という場所の勝手はわからないけれど。
早速、色々な部活動を見て回ることにした。
「サッカー部はマネージャーが2人、部員は13名、かぁ…」
任務のことももちろんそうだけれど、せっかくだから学校生活も楽しみたい。
興味のある部活動、というより、あちらこちらを見て回って、楽しそうなところにしようと思ってる。
理由はどの部活がどんな風な部活か見当もつかないから。
「野球部はマネ1人、部員12名…」
…人、少なめ?
「男バスはマネージャー3人、部員19名…」
やっぱり人気なのだろうか。
「女バスはマネージャー4人、部員15名…」
…今日は「オフの日」らしい。女子会してる。楽しそう。
「男子バレー部は人が多い、と」
マネージャーは2人で、忙しそうにパタパタと駆け回っていた。
「女子バレー部は…」
先生が怖そうだった。
「り、陸上…」
あれ、人多い。
やっぱり種目の幅が広いのもあるのだろうか。
「ん?君転入してきた子?」
「あっ、は、はい!」
先輩らしき人が来た。えっ、あちこち見て回って初めて話しかけられたんだけどっ
「良かったら一寸体験して行かない?好きな種目やってみてよ」
「ぁ、えっと、あまり種目わからなくて…」
「じゃあ…走るのと跳ぶの、どっちがいい?」
「と、跳ぶ方で!」
幅跳びや棒高跳びを見たけど、棒高跳びは初心者には少し危険らしい。
高跳びになった。
結果。
「…やっぱり君、陸上部以外を選ぶ道なんてないよ!!是非是非陸上部に!!!」
「いやいやそれだけの運動能力があったらバスケ部でも」
「ここはバレー部でセッターでしょ!!いやこの素早さに小柄な体躯ならリベロでも…」
…先輩怖い。
私スポーツなんてやったことも見たこともほとんどないんだよなぁ…
「す、すみません!とりあえず文化部の方も見てから決めようと思ってるので…」
「あァ?手前こんなところにいたのか」
「…へ……?」
ギギギ、と音を立てて声の方へ首を回す。
「嘘でしょ中也?」
「俺じゃわりーかよ!?」
「制服似合ってるねー!」
「…そうか?」
あ、照れた。中也照れた。
「桜月も似合ってるじゃねーか」
「えっ、ありがとうっ!」
嬉しい。
にしても真坂人員が中也だったなんて。
吃驚したぁ…
「転校生2人って付き合ってたんだ知らなかった」
「いや知ってるわけないじゃん」
「やっば美男美女じゃん」
「女子可愛すぎな」
「男子の方イケメンすぎてやば」
…いや、初日から色々噂作りすぎてて面白い。
--- 後半へ続く 。 ---
久し振りな気がする。
一人称視点にこだわって書いたの。
そして誰だよ22歳の大人に制服着させたの(
作者ではある。
けど多分マフィアの人たちはノリノリで色々な制服着させてるんだろうなーって思う。
というかそうであってほしい(