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①
お婆さん「・・・と言うことがあり、私は妖怪の町を見ることができたのです」
目の前で淡々と話を続けるお婆さん。それをじっと聞いていた|姫澤優亜《ひめさわゆうあ》は、信じられないと言う顔をしていた。
この日、優亜の高校では|虹天《こうてん》市に昔から住むお婆さんに来てもらい、この街に伝わる伝承を語ってもらっていた。その伝承が、『|妖怪天生《ようかいてんしょう》』。人間と友好的な関係を築いていた妖怪が、その特殊能力を持ったまま人間に生まれ変わり、結界で隔てられた町に暮らしている・・・というものである。
このお婆さん・・・|竹内伊予《たけうちいよ》さんは、実際に妖怪の町に行ったことがあると言う。
優亜(絶対嘘だろ)
優亜はこう言う話は信じないタイプ。帰ってから|竜王大和《りゅうおうやまと》に話をする時も、嘘だと思っていた。
大和「・・・妖怪天生、か」
優亜「正直信じられないけどね。あんだけ言うなら嘘とは思えないけど・・・けどなぁ」
辰哉「そーいや、俺のばーちゃんもその現象に遭遇した言いよったな」
|黄瀬辰哉《きせたつや》が口を挟む。辰哉の祖母は、数年前に亡くなったばかりだった。
大和「たっつんのおばあちゃんも?それなら本当かもな・・・」
優亜「じゃぱぱは信じんの?すごい嘘くさい話なのに」
辰哉「なんかロマンあるやん?それにその妖怪人間に会ってみたいわ!」
優亜「相変わらず厨二だなお前」
乃愛「なんのお話してるんですか?」
たまたまリビングを通りかかった|桃井乃愛《ももいのあ》が、話に加わった。
大和「妖怪天生って言う伝承の話。知ってる?」
乃愛「あー、知ってますよ。大学の時に書いたレポートで、その伝承を調べたことがあるんです」
辰哉「わざわざ調べたんか⁉︎すごいなぁのあさん!」
乃愛「初めて知った時に、なんだか興味深いなって思ってたんですよ。あまり信じないタイプのゆあんくんには、まだ早い話かもしれませんね」
優亜「そういうもんなの?」
辰哉「まぁまぁ、もし結界石?を見かけたら、触らんようにすればええ話やん?単純なことやで」
優亜「その結界石がどんなのかわかんないんじゃん!」
大和「あはは・・・一旦静かにしようか?」
その時は大和に諌められ、話は終わった。
優亜は、どうしてもこの話に納得できなかった。