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プレゼントありがとう
温泉宿の縁側。湯上がりの夜風が、楓の濡れた黒髪を優しく撫でる。
彼女はいつものようにポケットから「手鏡」を取り出し、月の光を頼りに身だしなみを整えていた。
(よし、お風呂上がりも完璧……。あとは杉元さんと少しお話しできたら……)
その時、背後から聞き慣れた、少し低い心地よい声が響いた。
「楓ちゃん。湯冷めするぞ」
「ひゃいっ!? す、杉元さん!」
驚きのあまり、手鏡を落としそうになる。慌ててキャスケットを深く被り直すが、杉元は苦笑しながら彼女の隣に腰を下ろした。
「悪い、驚かせたな。……あー、その、なんだ。これ、さっきの街で見かけてさ。楓ちゃんに似合うかなって」
予期せぬ贈り物
杉元が差し出したのは、小さく畳まれた紙包みだった。
震える手でそれを受け取り、開けてみる。中から出てきたのは、楓の袴と同じ、鮮やかな朱色のリボンだった。
「いつもキャスケット被ってるけど、たまには髪を結ぶのもいいかと思ってさ。その……里の流行りなんだろ? 赤い色」
「…………っ!!」
楓の心臓が、二丁拳銃の連射音よりも激しく打ち鳴らされる。
杉元が自分の好みを(勘違いとはいえ)覚えていてくれた。そして、自分のためにこれを選んでくれた。
「あ……ありがとうございます……! 私、一生、一生大事にします……! お墓まで持って行きます……!」
「はは、大袈裟だな。……あ、でも、俺が結ぶのは流石に下手くそか。アシㇼパさんに頼むか?」
「いえっ! 私、自分で結びます! 今すぐ!」
楓は夢中で髪をまとめ、不器用ながらもサイドでリボンを結んだ。
「どう……でしょうか」と、上目遣いで杉元を見つめる。
「……あぁ、やっぱり似合うな。可愛いよ、楓ちゃん」
杉元のその一言で、楓の脳内は幸せの花火で埋め尽くされた。