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蒼色ストライクス 3話「濡れた服、揺れた心」
体育倉庫には薄い灯りが灯っていた。
金属の匂いと、少し湿った木の香りが混ざっている。
二人は濡れたジャージを軽く絞り、壁に寄りかかった。
「……寒くない?」
光希が先に口を開く。
「平気。お前は?」
「んー、ちょっと寒いかも」
光希は両腕を擦りながら小さく震える。
それを見た麻成は、気づけば自分のジャージを脱ぎ、光希の肩にかけていた。
「麻成……?」
「風邪ひかれたら困るから」
「困る……?」
麻成は返事ができなかった。
光希はジャージを握りながら、じっと麻成を見つめる。
「ねえ。麻成ってさ、時々すごく優しいよね」
「時々ってなんだよ。俺はいつも——」
言いかけて、照れ隠しに口を閉じる。
光希はふわっと笑った。
「分かってるよ。麻成のそういうところ、好きだなって思う」
胸の奥が跳ねた。
倉庫の薄い灯りが二人の影を重ねる。
「……お前、簡単にそういうこと言うなよ」
「簡単じゃないよ」
光希は少しだけ近づく。
距離が縮まるにつれて、麻成の鼓動が大きくなる。
「本当に思ってるから、言ってるんだよ」
麻成は視線を逸らせない。
光希の瞳に、自分が映っているのが分かる。
「麻成が投げたボール受けるとね、胸があったかくなるんだ。
一緒にいると、安心するし……ちょっと緊張もする」
「……緊張?」
「うん。だって——」
光希の声が、少しだけ震えた。
「麻成のこと、特別だって思ってるから」
倉庫の空気が変わった。
雨の音だけが遠くで響く。
麻成は一歩、光希に近づいた。
肩にかけていたジャージの隙間から、光希の温度が伝わる。
「光希……」
その名を呼んだ瞬間、光希の表情が柔らかくほどけた。
「麻成も……少しはそう思ってくれてる?」
麻成は迷わず頷いた。
「ずっと、言えなかったけど……俺も、お前のことが——」
言葉の先は、光希の笑顔に溶かされていった。