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『きまぐれ化学者と女の子_2』
「私は啓さんの作った薬によって生成されたクローンということですね?」
「うん、そういうこと。
さすが文系の僕。理解が早いな」
「それほどでも……っじゃなくて!!!」
「クローンってことは私、数時間後に消えるとかありませんか?
なんか映画で見たことあるんですけど」
「ん~もしかしたら消えるかも」
「やっぱり!!嫌ですよ、せっかく生まれたのに数時間で消えるだなんて!」
「まあまあ、落ち着いて……
ちゃんとクローンの状態維持用のクスリも用意してあるよ」
「これを飲めばたぶん消えないから飲みな」
「たぶんって…まあ飲みますよ消えたくないですからね」
「どうぞどうぞ、一口で飲んじゃってね」
啓が青紫色のいかにも怪しそうな液体の注がれた小瓶を差し出した
「それじゃあ、いただきます…」
ゴクッ--- 小瓶に注がれた怪しい液体は見た目に似合わずさわやかな苺風味の味だった。
私は飲み干した小瓶の口をつけた部分をそっと拭くと、
空になった瓶を啓に渡した。
「何か変わったところはある?」
「というか、どうやったら効果があるかわかるんですか」
「クローンは何もしなければ通常は数時間で消えるんだけど
クローンが誕生した後の君の寝てた時間が結構長かったから
もうちょっとで通常のクローンの消滅するタイムリミットなんだよね
その時間になっても消えなかったらさっきのが効いたってことだね。」
「確かめる方法他にないんですか…?」
「無い。」
「うぅ……万が一消えちゃったらどうするんですか?」
「どうにもこうにもねぇ……
消えても一応復活させる術はあるんだけど、全部同じように戻るとは限らないんだよ」
「そうですか。じゃあタイムリミットの時間を待つしかないですね…」
「うん。あと6分ぐらいだから様子を見てみようか」
「6分ってもう結構短いんですね
ドキドキしてきた…」
---あと30秒
---あと20秒
---あと、5秒
『5、 4、 3、 2、』
『1!』
「良かった…消えなかった」
「クスリがうまく効いたみたいだね、良かった」
「ヒヤヒヤしましたけど、ひとまず生き残れたので一安心です」
「ぼくへの信頼は少しはできたかな?」
「私が貴方のクローンということは信じ難いですけど
先ほどの薬が効いたので
少しは信頼ができたかもしれません」
「そっか。そういえば布団もかけずに寝てたから寒かったでしょ。
今あったかいお茶いれてくるからそこらへんに座って!」
啓はラボの中に置いてある透明な椅子を指さした。
「お菓子もあるけど、クッキーとパンケーキ、どっちがいい?
パンケーキなら今焼くけど…」
どっちも大好きなので究極の二択で考えた末にパンケーキにしてもらうことにした。
「パンケーキお願いします!」
そう言うと啓は部屋の奥の方にある入り口へと入っていき、少し狭そうな部屋で料理を始めた。