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打てば打つほど重くなる1/wrwrd
「bang」をみんなで唱えましょう(?)
今から約五年ほど前、俺たちW国は負けた。
正直負けるとは思っていたが、まさか本当に負けるとは思っていなかった。
そこから総統であるグルッペンの首を取られ、
他メンは次々と他の国の奴らに首を取られた。
俺と大先生は必死でここまで逃げてきた。
「この辺まで来れば大丈夫やろ…」
「僕ら、いつか死ぬんやなぁ…」
「そんなこと言わんでや…」
そんな会話を交わしてから大先生とは会っていない。本当にもうあいつは終わったのか…?
あんまりそういうことは考えたくない。
この始まったばかりの終わりはいつ本当の終わりを迎えるのか。
そして俺たちもそれと同時に終わる。
…まだこの軍基地にはあいつらの部屋がまだ残ってる。
その部屋の中にはまだあいつらの香りが漂っている。ときどき疲れているのだろうか、
幻覚すら見えてしまうことだってある。
「もうこのまんま床になっちゃってもええわこれ〜…」
一体どれだけこんな辛くなればいいのだろうか。
よく言うだろう?|糸《縁》を切ることは簡単だが、繋がることはないってさ。きっともう、
|糸《生》は千切れている彼らは戻らない。
二度と俺の前には笑顔を見せてくれないんだ。
「あーあ。やっぱりどうしようもないわァ…」
『そんなところで寝てへんで早よ起きや』
ふと、聞き馴染みのある声が聞こえる。
あぁ、次は幻聴か。もう俺もダメなのかもしれないなぁ〜なんて考えていれば、
『シッマァ!遊ぼうぜ〜!だから早よ起きてや〜!』
「うるさいな寝てるんやからちょっと黙ってや…」
……うるさい?俺は、本当にうるさいと思うのか?
『シッマ、まだ起きへんの?繧セ繝?が退屈しとるで』
「あぁ!だからうるさいって言っとるやん!!
1人にさえさせてくれへんのか!?お前らはどれだけ俺のことを気にかけるんや!!やから、
もう、ほっといてや…」
俺はそう言いながら耳に手を当てて聞こえないようにした。
だけれど、無意識なのかわからないがちょっと手を耳から外して彼らの声が聞こえるようにしてしまった。
静かな部屋で流す涙は、どこか重たい。
自然と下を向いてしまうのはなぜだろう?
まるで重力に逆らえないようで、顔を上げようとしても下がってしまう。
『先輩、そろそろ起きないと殺しますよ』
「…構ってやれなくてごめんな」
と俺はもう愚痴を言うのはやめて、彼らにしてやれなかったことを一つ一つ告げて反省することにした。
「構ってやれなかったし、練習も付き合ってやれなかった。それにあいつの休みを少し潰してしまってまでも仕事をしてもらったし…。いろいろ先輩としてダメダメやな…」
『そんなことないですよ』
と、俺の言ったことに対して言う彼は、姿は見えないのにどこかに存在しているような暖かさがあって。
俺は本当にこいつらの仲間でよかったのだろうか。俺が足手まといになってたんじゃないか、
俺が迷惑を沢山かけていたんじゃないか、
みんなができるようなことを少し前まで出来なかったから、困っていたんじゃないか。
全ては劣っている俺のせいだけれど。
そう、信じたいけど。
「まだ俺だけがこんなこと引きずってるなんて、きっついなぁ…w」
いつも大先生がふざけて俺の頭にやっていたことを目の前のドアに向かってやる。
指先で銃の形を作り、こう言うんだ。
「くらえ、bang!」
そしたら手を打った時のように軽く上に向ける。それを何度も繰り返すんだ。
「bang」
たとえそれが呪われているように何度も繰り返して気持ち悪くても、
「bang!」
それが俺にとってのおまじないであって勇気の言葉であるから。
「bang!!」
これを繰り返して自分の感情を押し殺して我慢するんだ。
「…大先生じゃないと、やっぱダメなんやなぁ」
俺は何度もおまじないを唱えた。が、
涙が止まる気配はなく、それどころか思い出して泣いてしまう。
俺はそのとき、ふと鏡の前に立ってみた。
俺の顔は今涙を流していてとても醜い顔になっている。
「なんか言えば」
なんて何も答えることのできない鏡の向こうの俺に話しかける。
もちろん応答があるはずもなく。
「本当に俺だけが引きずって生きてるなんてきっついなぁ……」
時が戻ればいいのにといつからか思うようになっていた。でももう、戻れない。
治らないこの|後遺症《 お も い》を抱えながら生きていくしかない俺は、また涙を流す。
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いつしか、こんな生活にも慣れてしまった。
けれど俺は少し嫌だ。あいつらがいない生活に慣れてしまう俺が。
「どこの誰だろうね、いつだって頼っていいよって、寂しくなったらこいよって言ったのはさ」
誰かが言ってくれた言葉を思い出す。
この言葉は今でも鮮明に覚えている。が時間が経てば消えてしまうだろうか?
こんな俺でも約束事をしてくれるあいつらを忘れてしまったのは何故だろう。
大先生以外綺麗に忘れてしまった。
なぜだろうか?心にすっぽり穴が空いてしまったような感覚は前にも体験したことがある気がする。いつだっただろうか…
ーあれは、12年前くらいの話だったはず。
俺は昔孤児院にいた。孤児院の中では結構扱いが難しいとか言われてる方で、よく物を噛んだりして壊したりするから「狂犬」とか言われてた。
『No.055.狂犬、今日のノルマタスクだ。やっておけ』
「わかりました。」
俺はいつも、わかりました。かありがとうございます。とかしか言わなかったやつだ。
「今思えば変なやつやなぁ俺」
『ねぇシッマ、いつまで寝てるの?起きてくれん?僕お前の隣でまた頑張りたいわ…』
俺の隣で頑張ってくれる彼の名前すら忘れそうな俺は、もういっそ消えた方がいいと思う。
正直短所がありすぎるからだ。
それでもあいつらは俺をこの軍においてくれたのは、見た目だけだろうか。
それなら昔と変わらない。
飾りだけの|王様《 お れ 》を誰か救ってはくれないだろうか。
あいつらを思い浮かべながら。
誤字脱字は見逃してください!!
続きは待っててくださ〜い