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虐
【ーATTENTION!ー】
下記の小説は俺の師匠の星屑師匠(二重?)のネタ帳をこっそり覗いた悪い弟子が不遜にもぺろりといただいて書いたものとなっております。
誤字脱字に文章の書き方や名前のセンス、そしてもちろん放送禁止用語や言葉の意味の違いなど、なんじゃこれポイントがありましたら何卒俺をしばいてください。
{ーーー ここで速報です}
{|屋名町《やなちょう》殺人事件について、新たな情報が入ってきました}
{|屋名《やな》|警察署《けいさつしょ》が、先日発見された|遺体《いたい》をこれまでに起こった二件の殺人事件と|同一犯《どういつはん》によるものだと正式に発表しました}
{これを受け、警視庁は一連の事件を“連続殺人事件”と見なし、犯人の|逮捕《たいほ》に向け慎重な捜査を行っていく|模様《もよう》です}
{繰り返します ーーー}
プツリ
テレビの音が消えると、窓の外で降り続ける雨の音が|一層《いっそう》大きくなった気がした。うるさくて仕方ないけれど、このまま殺人事件のニュースばかりの番組を|延々《えんえん》見続けるのも気が|滅入《めい》る。
ぐだりとテレビの前に寝転がっている私の姿の方が、まあ、見ただけで気が|滅入《めい》りそうだけど。
ごろりと寝返りを打てば、フローリングの床に散らばったまっさらな宿題が目に入った。白さが|眩《まぶ》しくて、思わず|眉《まゆ》が|歪《ゆが》む。リビングの机から何かの|拍子《ひょうし》に落ちたんだろうけど気づかなかった。
そんなにテレビの音、大きかったっけ。
「…宿題、しなきゃ」
これが、“|小倉《おぐら》 |杏《あん》”の何も変わらない|日常《にちじょう》だ。
---
|漠然《ばくぜん》と死にたいと思い始めたのはいつからだったろうか。
幼稚園で、名前があんこみたいだからとあだ名がおばあちゃんに決まった時か。
家で、おばあちゃんの息が弱まっていく|様《さま》を見届けた時か。
はたまた。
中学で、|面《めん》と向かって悪口を言われても涙が出なくなった時か。
思い当たる機会はいくつかあるものの、未だ“|漠然《ばくぜん》”の|域《いき》で踏みとどまれているのは間違いなく、
「|杏《あん》ちゃ、何ぼーっとしてんだにゃー?」
…後ろからの声に我にかえればもう授業は終わっていて、クラス中が笑いと|喧騒《けんそう》に溢れていた。
そして、座っている私の背中をつんつんとつつくのは、後ろの席の|尾崎《おざき》。私の背中のつつき心地が気に入ったらしく、こうしてつつき回しては私をからかって遊んでいる。
先ほどの言葉を続けると、私が今ここで生きているのは少なからず尾崎のおかげだ。この女が私を|此《こ》の|世《よ》の|淵《ふち》からにゃーにゃー言いながら引っ張り戻しているのだと思う。
多分、そんな感じ。
「あ、もしや|杏《あん》ちゃも事件のことが気がかりかにゃー?そうだよねぇ、現場はここら辺ばっかだもんねぇ」
「気になってはいるけど…みんなは気になってるってより、なんかこう、ビビってるっていうか」
「あ、にゃーもそれ分かる!にゃーのにゃにゃにゃアンテナがにゃにゃっとにゃーんってしてるにゃー」
「にゃーの大渋滞じゃん」
「まーまー冗談はともかく、そりゃビビる気持ちもわかるけどちょっちビビりすぎな気もするんだにゃー」
ビビる気持ちのカケラも無さそうな尾崎の顔に少しだけ気が抜けた。尾崎にはもうちょっと|危機感《ききかん》を持って欲しいな。
「むー…にゃにゃっ!にゃーの天才的な検索センスで何とも|興味深《きょーみぶか》い記事を見つけたにゃー!」
「尾崎のバカ、スマホバレたら|没収《ぼっしゅう》だよ」
「何事もチャレンジだにゃー!
…ふむ?書き込みを見るに不審人物の目撃情報が集まってるらしいにゃー。お、地図みっけたにゃ!」
「私|庇《かば》わないからね…?」
そう言いつつも尾崎のスマホをのぞいてしまうのは人間の好奇心の悪いところである。地図は|屋名町《やなちょう》のところまでズームされており、不審者情報を示すと思われる赤いピンは学校に|程近《ほどちか》い住宅街に集中していた。
「おっそろしいにゃー…にゃーは当分ここは避けて通るにゃー。|杏《あん》ちゃはどうするにゃ?」
尾崎は、にやりと笑った。
「むしろ、突っ込んでいくかにゃー?」
「…突っ込んでいくなんて危ないじゃん」
「ま、そーだよにゃー」
「ちゃんと下調べするよ」
「およ?なんだかあらぬ方向に?」
---
その二日後。
私は|件《くだん》の住宅街のど真ん中に立っていた。
下調べすると尾崎に言ったものの、情報をまとめるのはそれほど手がかからなかった。何せ、すべての情報が気持ちが悪いほど一致していたのだ。
黒フードの背が高いやつが走っていた、と。
下調べが手詰まりになったあたりでヤケクソになって現場に|突撃《とつげき》してしまったのは間違いなく私が悪い。ただ、いくら|目撃情報《もくげきじょうほう》が多いと言ってもそう都合よくいるわけではなかった。
そもそも、あのにゃーの|権化《ごんげ》みたいな尾崎が探してきた情報という時点で|信憑性《しんぴょうせい》がアレなのであって…あれ、私はどうしてこんなところにいるんだっけ。
あれ。
なんで私は殺人犯を追ってるんだっけ????
考えれば考えるほど自分の行動が|意味不明《いみふめい》に感じられる。何してんだろう、私。
なんだか面倒くさくなってしまって、私は|踵《きびす》を返す。いいや。帰ろう。
家に帰って、また日常に戻ろう。
これはちょっとしたバグみたいなものだったんだ。
そう、ただの、バグ。
すぐ直ってしまう。
…かぁん、と鉄の音が聞こえた気がした。
その時にはもう、私の目の前は真っ暗になっていた。
そんなこんなで、コンクリートの部屋で目が覚めたのがたった今だ。
きいきいと頭の上でランプが揺れている。虫などはいないし、かなりじめじめとしているのでおそらく地下室だろう。
|案外《あんがい》|気絶《きぜつ》とは時間を感じさせないもので、ここに一瞬でワープしてきたような気分だ。違いと言えば、明らかな|後頭部《こうとうぶ》の痛み。これ血が出てるんじゃないだろうか。くも|膜下《まっか》|出血《しゅっけつ》、だったか?痛そうだから嫌だな。
ああ、それと。
違いはもう一つ。
木製の椅子に、きつく|縛《しば》られていること。
足は一本ずつ椅子の脚に縄でぐるぐる巻きになっていて、手は椅子の|肘掛《ひじか》けに、これまたぐるぐる巻き。なんともご|丁寧《ていねい》な|扱《あつか》いだ。
そして、目の前には冷たそうな地面に黒フードが座り込んでいた。
どうやら私は運良く、あるいは運悪く出会ってしまったようだ。
|巷《ちまた》を騒がせる、殺人犯に。
自然と体に力が入り、少し過剰とも思えるような縄がぎしりときしむ。途端、黒フードが顔を上げた。
ガバリ、という効果音がつきそうなほど激しく顔を上げたせいでフードが取れてしまっている。ランプの光の元に|晒《さら》された顔は、私の声を掠れさせるのには十分だった。
「ぉ、ざき?」
「お、意識ははっきりしてんのにゃー。|杏《あん》ちゃ、さすがだにゃー!」
目の前に縛られた人間がいるというのに、尾崎は何も変わらない気が抜けた顔でにゃーにゃーしていた。
信じられないし、信じたくない。
だけど、これは誰の目にも明らかだろう。
「…一応言うよ。|縄《なわ》、|解《ほど》いて」
「ふふふ、やだにゃー」
尾崎はあっけなく認めた。
私を|縛《しば》った張本人だと、あっさりと。
「それにそれに。
天才|杏《あん》ちゃはもう《《にゃーが殺人犯だとわかっちゃってる》》とみたにゃー。
つまりっここで|杏《あん》ちゃの縄を解いちゃうと!か弱いにゃーはみすみす|杏《あん》ちゃを逃がし、にゃんという間に|檻《おり》の中、というわけなんだにゃー」
「今のはもう自白じゃないの?」
「?そうだにゃー?|親愛《しんあい》なる|杏《あん》ちゃには全てを話せると思っているにゃー!」
それに、と尾崎が続けた。
「|杏《あん》ちゃが知ったとて、ここから出られるとでも思ってるのかにゃー?」
にゃははウケると笑いながら、尾崎は黒い服の内側をごそごそと探る。まるで友達に話すような口調だから|勘違《かんちが》いしてしまいそうだけど、私たちはあくまでも殺人犯と次の|死体候補《したいこうほ》だ。私に息をする以外の行動は許されていない。
だけど、これも人間の好奇心の悪い癖なのか。
私は|迂闊《うかつ》にも、聞いてしまった。
「ねぇ」
「んー?なんだにゃー?」
「なんで、人殺しちゃったの?」
「にゃー、改めてそう聞かれるとよくわかんないにゃー」
目的のものが見つかったのか、尾崎は服を軽く整えてこちらに近づいてきた。どうやら近くで答えを聞かせてくれるらしい。
「それはにゃー…」
ぶつっ。
「とりあえず、|杏《あん》ちゃが逃げる気を無くすまで考えさせてほしーにゃー!」
そう言って、尾崎は|躊躇《ちゅうちょ》なく私の腕にカッターを突き立てた。
あ
赤い
いた 今 さ え、 かいの とまん い あ ああ あああああ あああああ ああ
「あ、ああ、ああああああああ???」
「あは、|杏《あん》ちゃが壊れたロボットみたくなっちゃったにゃー」
ぐちゅり。
あ
ああああ
ああああああああああ
「あ“あ”あああ”あ“ああ“あ“あ”あ“」
ずぷり。
あが
ぎあ あああぐあ ああうああああがあああががががががああああぎぎいあ
「にゃはは、面白いにゃー」
「今度こそ長く|保《も》つように頑張るんだにゃー!」
---
「おはよーにゃ、|杏《あん》ちゃ!はいここでクイズです、今日は|監禁《かんきん》何日目かにゃー?」
あ ああ ああああ あ
「ぶぶー、|残念《ざんねん》|無念《むねん》にゃー。正解はぁ…【わかんにゃい】だにゃー!もう|杏《あん》ちゃを捕まえた日は忘れちゃったにゃー」
あああ あ ああ ああああ
「にゃ!今日はついにほっぺの皮を|剥《は》がしていくにゃー!手の皮も足の皮も綺麗に|剥《は》げたからチャレンジにゃ!
調子に乗ったにゃーは誰にも止められないにゃー!」
あ あああ ああああああ
「お、なんだか元気になったにゃー?これはにゃんとも|縁起《えんぎ》が良い、今日の皮も綺麗に|剥《は》げそうだにゃー」
ああああ ああああああ あ あ
「にゃー、それにしても腕の皮はいくら待っても治らないにゃー。|自然治癒力《しぜんちゆりょく》だったか、仕事してんのかぁ?どうなんだよぅ、うりうり」
あ ああああ ああ”あああ“ああああ”ああ
「おーおー、元気になったにゃ!」
あ ああ あああ あ
「…ね、|杏《あん》ちゃ。今死ぬの怖い?」
あ ああ あ
「イエスとな。そりゃそうだにゃ」
あああ あああ あああ
「助けて欲しいかにゃ?いくら天才的なにゃーでも傷は治せないにゃー」
ああ あああああ
「|杏《あん》ちゃは変わったにゃ。前は|如何《いか》にも生に興味はないでーす、って|澄《す》まし顔だったのに、今はすっかり生を|渇望《かつぼう》するようになって…尾崎、感激だにゃー!」
あああ ああ
「|杏《あん》ちゃは忘れちゃったかもしれないけど、最初の質問に答える時がきたにゃ。
多分、その目が嫌いなんだにゃ。」
あ あ
「その、死を恐れない自分に酔っぱらった、死ぬ覚悟もない癖にしょーもない冗談に引っかかって殺人犯に会いに行っちゃうようなお前の、すっかすかのぺらっぺらなその目が、《《心底大っっっっっ嫌い》》」
ああ あああ ああああ
「だからね?みんなに生きる素晴らしさを思い出して欲しかったんだと思うんだにゃ。
みんなに。
本気で。
本心から。
生きたい、って思ってもらってから。
お望み通りに殺してあげるのにゃー。
さて、|杏《あん》ちゃはどの|段階《レベル》かにゃ?」
あ“あ
「…にゃに言ってるかわかんにゃーい。はい、|雑談《ざつだん》タイムは終わったのではぎはぎ始めるにゃー」
あ あああ あああああ ああああ ああ
「|焦《あせ》ってるかにゃ?いいよー、もっともっと|焦《あせ》って欲しいにゃ」
ああああああああ ああああああああああ
「もっと、生きたいと思ってにゃー」
ぐりゅ。
みぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢ。
あああ ああ ああああ ああ あああ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ“あ”あ”あ“あ”
パチン
{ーーー ここで速報です}
{|屋名町《やなちょう》殺人事件について、新たな情報が入ってきました}
{二日前に山中から発見された|遺体《いたい》の身元が判明しました}
{遺体は【小倉 杏】さん 14歳です}
{これで本件の被害者は4人目となりました。また、未成年が被害者となったことで警察の捜査能力を疑問視する声が上がっています}
{繰り返します ーーー}
尾崎
「えー、本日は晴天なりぃ。どもども!みんな大好き尾崎だにゃー!
まず、この話はどんな事件もモチーフにしていにゃいにゃー!
どんな事件も模倣していない、にゃーだけの大切な思い出をせっかく話したのに、どっかの知らないやつの真似っこ、とか言われるのは
スーパー不快だにゃ。
にゃーも信念持って殺してるんだにゃー。だから、にゃーの記録は誰の真似でもないことを知ってて欲しいにゃー!
そしてっにゃーのかっこいい姿に心打たれちゃった、ってお友達はぜひぜひお手紙送って欲しいのにゃ!
そうしたら!
迎えにいくにゃー!!」