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「あ」
「何!?」
灯があげた声に白が噛み付く。珍しく繁忙期なのに黒は同業者の依頼で外出、犬見や燕には手伝いを断られ、1人で仕事に追われているのだ。宴は暇かもしれないが、彼女に任せれば全てが破壊される。学習しない上に飽きっぽい奴に大事なものを任せてはいけない。
「暇なら手伝え!」と灯に怒鳴ってみたものの、「自分の仕事も自分でやれねえのかよ」と嘲笑され、売り言葉に買い言葉でこっちも願い下げだと啖呵を切ってしまった。今更後悔しても遅い。灯に口論で勝てるわけがないのだ。
「で、何?あんたと違って忙しいんだけど」
「この間、双子が死んだだろ?殺し屋の」
「…あー、医学の?」
「人口減らしてんだと。お前らも気をつけろよ」
「は?」
「2人組は殺しやすいんだろ、確か。あいつらもお前らもなんかおかしいし」
「大丈夫。あんたもおかしい」
「俺は2人組じゃねえんだよ」
脳味噌腐ってんのか、などと失礼にも程があるセリフを吐くので、取り敢えず殴っておいた。
「で?珍しく心配してくれてんの?」
「黒が死んだからな」
「ふーん」
PCに向き直りかけて、慌てて振り向いた。首がもげそうな勢いで、流石の灯もぎょっとして体を逸らす。
「死んだ!?」
「死んだ。…別に、巫は関係無い。別件だ」
「どこ情報?」
「犬見」
舌打ちをして、白は別のアプリを開いた。犬見からの情報なら、それは確実だ。あれは臆病だから、裏を取らないと発言できない。
「何処で死んだの?」
「門」
「は?何、あの馬鹿勝手に出ようとしたの?」
門番にでも殺されたのかと思ったが、灯の呆れた表情を見て不正解だと悟る。
「…さすがに、門に挟まれたとかじゃ無いよね?」
「そんな馬鹿馬鹿しい死に方はしたくねえだろ」
違った。それは何よりだ。
「どうせお前が掃除するんだろ。見てこいよ」
「じゃああんたも来て」
「は!?」
嫌がる灯を腕力に任せて引きずり、門へと急ぐ。
「はーい、ここはしばらく通行止めでーす!隣の地下街通って外に出てくださーい!」
メガホン片手に住民の誘導をしている彼岸にそっと手を合わせる。任期中に門が封鎖される事態が起こるなんて、やっぱり彼は不運だ。