公開中
夜明け前
いつもより早く目が覚めた。
「……」
時刻はまだ4時半。……こういうのを夜明け前、っていうのかな。
わたしは、カーディガンを羽織って外に出た。
*
すっと息を吸う。
誰も歩いていない外の空気って、ちょっと好き。空気の独り占め、できるから。
その代償みたいに、後ろ向きなこと考えちゃうけど。
授業で当てられてうまく答えられなかったこととか。
昨日も1人きりで学校に行って、1人きりで帰ったこととか。
お母さんに、昨日も迷惑かけちゃったこととか。
うまく話せない。うまく生きれない。
正直、そんな自分が嫌で。
正直、なんで生まれちゃったんだろうって。
正直、今すぐにでも消えちゃいたくて。
……なんて。
わたしは、暗い気持ちを振り切るように歩みを進めた。
*
金木犀が、道を彩っていることに気づいた。
……いつもは咲くの、10月頃じゃなかったっけ?
顔を近づけなくてもわかる甘ったるい匂い。
まだ早朝と言っても日は昇っていない。
昇らない。
*
「……」
修学旅行の班決め、今日だったよね。
どうでもいいことを、ぼーっとした頭で思い出す。
修学旅行なんて行きたくない。……また誰か、困らせちゃうだけでしょ。
「……もう、やだな」
今日起きて初めて口から出たのは、そんな言葉。
もう、やだな。
もう、やめちゃいたいな。
……もう、
*
結局、どこにも行く果てがなくなって、6時半頃には家に帰ってきた。
……でも、2時間くらいは散歩してたってことだよね。
外は少しだけ明るい。少しだけ、ちょっとだけ……日の光が覗いている。
意味もなくベランダに立った。
意味もなくラジオを流した。
意味もなく、ただ、街を眺めた。
*
「…………ぁっ、」
*
太陽が、
*
昇った。
*
「……」
早起きが苦手なわけじゃないけど、普段めったに日が丁度昇るときを見ることはない。
見よう、なんて思わないし。
でも、
でも。
……綺麗だったな、って。