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逃避行
あと|百六十糎《ひゃくろくじゅうせんち》、届かない貴方に手を伸ばしていた。
もう少し、もう少しと考えた脳内には暗い光しか差さない。
美味しいものも喉を通さず、苦い粉も味がない。
大抵の事は何とかうまくいくのに、計画が全て崩れていく様を見つめている。
貴方は私を見つめて笑っている。
憎くてたまらない、皮肉めいた笑顔で。
「毒々しいキャンディみたい」
なんて、ふとかけられたあだ名に涙を溢していた。
溢れ出る嗚咽に心から思うのは気持ち悪さだけだった。
数日間のことは数百年のように感じられて全ての言葉が壊れた|喇叭《らっぱ》の音に聞こえる。
|丶《ちゅ》、と重ねてリップサービス。
美味しくない、ただ何か粒を噛んでいるような|鯑《かずのこ》を吐き出して、
|釦《ボタン》に手をかけた。
あなたのことを、恨むように。
ただ、見守っていた。