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神隠異変ノ章 後編
打尤さんの後をついていく。ここは本当に、目を5秒でも閉じたら迷いそうなくらい、複雑で入り組んでいる。
無朝迷路異変の時、これがさらにどれくらい複雑になるのだろう。そうやって想像すると色んな意味で鳥肌が立つ。
「いた」
「えっ、いたんですか」
「静かに。ここは儂が引き付ける、下手にお主が出たらそれは儂もお主も由有も困る。ここは静かに」
うぅ…ほんと、怖すぎる。
暗くて迷路、というところもまた恐怖だ。
「でも、儂もどうすればいいか…そうだ!言技『三人よれば文殊の…』」
「由有さん、今いないですよ!?」
一気に信用度がガタ落ちする。
「うーむ…鬼に金棒」
「みつさんも夜叉鬼姫さんもいませんよ…」
いや、そもそもあのお二人が来たらこうやってしないで住むのだけど。
「じゃあやぶから棒。これでお主の攻撃をしかける」
「まあ、いいですけど…大丈夫ですか?」
最初に言ってるのとちがうんだけど。
「ピンチになったら窮すれば通ずで思いつく。儂も口は災いの元で災いを招くから大丈夫」
「本当に…?」
大丈夫なのかな…
「言技『やぶから棒』」
「おらっ!」
「あっ!?」
連続攻撃…
これなら、きっと一発は当たる。
「秘術『化け狐の牡丹』!」
「おらあっ…!!」
うっ、避けていてもやっぱり弾幕が当たっちゃう…
やばい、このままじゃやられちゃ…
メルが…
「飛符『天駆ける一撃』!!」
「わっ!?」
ピンチのときに現れたのは__
「あのねぇ…まあ、ごめん。打尤みたいな攻撃力皆無のやつと、秘技もろくに使えないあんたに先を任せたのがミスだったわ。妹の方だったらもう少しマシだったんだけどねぇ。ま、取り敢えず攻撃するから、突破しなさい。奥の方にいるって言ってたから」
「わかりましたっ!」
急がなきゃ、メルが…
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「いたっ、メル!」
「草花もいた。お主ら、怪我はないか」
「だいじょうぶです」
奥の茂みに隠されていたのだろう。
「よかった…今、由有さんが元凶とたたかっているの」
「そうなんだ、お姉ちゃん…」
取り敢えず、無事でよかった。
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「クソっ、強い…!!」
「由有さん!」
「あ、来たの!じゃ、手伝って!!」
メロたちが戻ってきた。よかった、こっちも正直きつかったから。
「…あれ、狐恋は?」
「元凶、狐恋さんっていうんですか」
ったく、なんで知らないのよ草花…
「秘術『化け狐の牡丹』!」
「メロッ…!?」
なんでメロが…
「草符『リーフストリート』!」
ばああん、とバリアが貼られた。
「危なっ、ありがと」
「勘符『インスティンクル・アサルト』!」
「きゃあっ!?」
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狐恋はぐったりとしていた。
回復してあげると、正直に告げた。
「究極の妖狐になれると思った。そのために、手当たり次第人をさらって力を吸収した。なのに、なのに…」
「はー。ったく、人の気持ちも考えなさいよ」
「すみません…」
まあ、素直に謝ってくれたところは評価するけどさ…
さて、森を抜けよう。倒した後、狐雨にもきっちり言ったからね。
「さあ、メロ。酒をもらおうじゃぁないか」
「あぁ、そうでしたね…」