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愛という名の呪い。 1話
新シリーズ始動。
「…あいつって呪われた子だっけ?」
「近づいたら4ぬんじゃね?w」
「不気味…」
「関わりたくないなぁ」
そんな言葉は今までも当たり前のように浴びてきた。
呪いって言っても、全然不自由でもないのに。
そもそもこの世の中は魔法も使えるっていうのになんで怖がるの?
全てが嫌になって…どうしようもなくなって…
「誰か、私の呪いを治してよ…」
俯いて、呟いた。
「助けを求めるの最適例なの?」
「え?」
顔を上げるとそこには黒髪ロングの少女…いや、同じ学年であろうやつが立っていた。
「だから、助けを求めるのが最適例なのかって聞いてるの。」
「…どうせあんたも自分で治せって言うんでしょ?そんなの目に見えてる。」
「その通り、自分で治したらいいんじゃない?」
「そんなの学校も退学しなきゃいけないからな…」
「でもあなたは魔法能力が高いでしょ?なんなら私も手伝いたいからね。」
「…なんでそれが分かった。」
「魔法能力が視えるからだよ。」
「その能力って…」
魔法能力が視えるのは私の家…美藤家以外で使えないはず。
「その能力は、私の家でしか使えない能力じゃないのか。」
「そうだね、流石『美藤アイヌ』は推理力も高いね、すごいよ。
…私は|清藤《きよふじ》ライヴ。呼び捨てで呼んでね。美藤本家の分家の娘!」
私の名前も|美藤《みふじ》アイヌで合ってる。
分家、か。苗字は違うんだな。
視てみると…ライヴも魔法能力が高いな。
「で?話は戻るけど、私のことを手伝って何する気?」
「聞き方が悪いよ。…私にも呪いがかかっている。
そのせいで本来の魔法能力を使えないんだ。一緒に治したくて…ダメ?」
「退学する程の覚悟はあるの?」
「…いつの間にか自分で治したいって思うようになったんだね。
家の親は放任主義だからきっと許してくれるよ。学校は嫌いなんだよね。」
「親がいるだけいいな。私は1歳になる前に親に捨てられて1人で生きてきた。」
「そんな…美藤家とはもう20年関わっていなかったから…
こんなことになっていたなんて知らなかったよ。
あ、でも私の家も私のことなんて子供だとも思ってくれないし、
その親は喧嘩ばっかりだから、別に羨ましくはないでしょ?」
「この話はもう詳しく話をしたくないんだ。明日またここで集合な?」
「分かった。」
「それと、退学届を提出すること。」
そうして私:美藤アイヌと清藤ライヴの旅は始まる。
次の日、昨日の場所へ行ってみるとライヴは先にいた。
私が歩き始めるとライヴも付いてきた。
旅が始まると察したんだろう。
「そんなに早く自分の呪いを治したかったのか。」
「いや、家を出るって言ったのに家にいるのが気まずかったんだよね。」
「許可は出たことだし、今日の目的地に行くか。」
「うん。でも目的地ってどこ?」
「私たちの先祖の墓だ。」
「お祈りでもしていくの?お墓より神社とかの方がいいんじゃないかな?」
「神社だと願い事を知らない神様に託すことになる。だから初詣以外で神社や寺に
行こうと思ったことはない。」
「自分たちの先祖を信じたいんだね。」
「そういう変な信教をするつもりはない。
で、その後は近くの森で魔法使って家建てて休む。」
「え?お墓の近くって村があったけど…そこら辺と交流するとかはないの?」
「私はそんなコミュ力も語彙力も高くないし、何なら器用じゃない方。」
「そうかな?」
「…でも、村に行くのもいいかもな。この2人だけだと呪いを解くに当たって
戦力とかいろいろ不便だから、仲間を集めるのもあり。」
「じゃあ、お墓言ったら、仲間集めに行こうか!」
村に行ってみると、同じ顔をした少女2人が気の強そうな集団にいじめられていた。
「お前らだけ強い魔法が使えるとかずるいぞ。俺らは血のにじむような努力を
してきたっていうのにな!お前らもそう思うだろ?」
「それなー」
「魔法能力高いのは認めるけど、あんたらがその才能あるっていうのがムカつく。」
私も、同じような言葉を浴びて生きてきた。
でも、同情が私の心を突き動かす。
「…同じような目に会っているあの2人を助けていいか。」
「まさかアイヌも同じ考えだったとはね。アイヌって思ってた何倍も優しいね。」
「褒められても何も出ないからな。ほら、早く行くぞ。」
「…アイヌ1人で行ってきた方がアイヌのためになるよ」
「どういうことだよ、それ」
「まあ、とりあえず1人で何とかしてきてほしいな」
「分かった分かった…」
あの子たち、魔法能力強いって言ってたよな。
いじめから助けて仲間にするのもありか。
「何だよその顔!何も整ってる要素なんてないし、誰にも告られないよねー」
「うわぁ、かわいそw」
「…私たちの事、責めないでよ…なんでそうやって理不尽に責めるの…」
「はぁ⁉理不尽でも何でもないし!魔法が強い時点で私らの方が理不尽だ!」
「怒っても魔法を打って来ないなんて…俺らの事そんなに好きか?」
「…そんなことして楽しいのか?」
私の言葉にいじめっ子たち、そして2人が私の方を見た。
…確かに視たところいじめっ子たちより2人の方が魔法能力が何倍も高いな。
「そんなことしたところでお前らは成長できるのか?」
「な、何だよお前。邪魔すんじゃねぇ。」
「そんなことしたところでお前らの魔法能力が高くなったりするのか?」
「…あんたら、行くぞ、ここから逃げるぞ」
「え、逃げるだって?私、魔法能力凄く高いんだぁ。逃げるなんて無理な話。
『|拘束の鎖《チェーン》』」
私がそう口に出した瞬間、いじめっ子たち全員の両手が拘束された。
「…お前ら、同じ学校か?w今すぐ先生に言ってやるよ。
学校名言わないと首も拘束する。そしたら4んじゃうよ。どうする?」
「くそ…」
「学校名言わないとやばいんじゃ…ないのか⁉」
「りゅ、流星学園、だ…」
流星学園は、普通よりも少しランクの上の学校だ。
「流星学園か…先生、『|召喚《カモン》』」
「もう俺ら終わりだ…」
「うわっ…!ここは…あぁ、あなたが勝手に召喚魔法を使ったんですか!」
「勝手にすみません。私が今拘束魔法で縛っている子たち、いじめをしてたんです。
…この2人がいじめられてて…2人を一時的に預からせてください。」
「いじめ…⁉あれだけ注意をしていてまた再発とは!あなたたち次は処分ですよ」
どうやらこのいじめっ子たちは過去にもいじめをしていたようだ。
「御協力ありがとうございます。あ、この2人の親御さんには連絡しておきますので
どうぞ預かってください。
本当にご協力ありがとうございます。」
「いいえ…君たち2人、こっちに来て。」
「は、はい…」
「分かりました…」
これだけ怒鳴っておけば怖がられて当然か。
「ライヴ、2人を助けて連れてきた。」
「私も見てたよ。まさかあんなに怒鳴るとはねw
…そういえば君たち、お名前を聞いてもいいかな?
ちなみに、私は清藤ライヴ。隣にいるのが、美藤アイヌだよ。」
「ふ、|双葉《ふたば》めありです。」
「めありの妹の|双葉《ふたば》えみりです。」
「双子か」
「はい…あの、私たちに何か用でもあるんですか?」
「私たちは、旅をしているの。といっても今日からだけどね。
めありちゃん、えみりちゃん…私たちの旅について来てくれたりする?」
「ライヴさんとアイヌさんは何で旅をしているんですか?理由が聞きたいです…」
「理由が分かればついて行こうとも考えます。」
「私は生まれてからずっと、呪われてきた。それを解くために旅をしている。
しかも、呪われてることでさんざん暴言を浴びて生きてきたんだ。
だから、めありたちが同じようなことをされていて、助けたくなった。」
「私も…何年か前に呪いをかけられて、使える魔法能力が制限されたの。
それを治すために旅に出ているわ。」
「…えみり、この人たちの事信じる…?」
「分からない。とりあえず家まで連れて行こう…?
すみません、お母さんたちに許可をもらいたいので、一緒に家まで来てください!」
「分かった。」
「まだ信じきれないのも分かるよ。私たち、そこまで短気でもないから安心してね。」
ライヴが2人に笑いかけると、2人も少し安心したような笑顔を見せた。
私たちの旅は、これから人数も2倍になってもっと楽しくなるのかもしれない。
…私、楽しさが無くてはならない物のように感じたのは初めてで…
ライヴたちにいい意味で変えられてしまったのかもしれない。
次話をお楽しみに!
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