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布団
布団は柔らかくて暖かくて、どんなわたしでも包みこんでくれる。そんな気がした。
中学校1年生の春。13歳にもなって、こんなに駄々をこねるようなこと、する未来なんて見えなかった。ただ楽しく学校へ行って、部活をして、勉強をして、友達と遊ぶ。そんな未来しか見えなかったんだ。
「いくの?」
「…まだ、無理…」
迷っていた。
いったら、いかなかったら___
もし、あっちだったら。学校生活を味わわないまま、そのまま。
もし、あっちだったら。学校生活を苦しむか楽しむか、それだけ。
「まだいけない…」
そう言って、わたしは布団に潜り込んだ。ふわふわとした布団に、柔らかいパジャマがわたしを安心させてくれる。
いきたい、という気持ちはもうない。それだけは事実だったけど、でも__
語尾を濁して、自分の気持ちに嘘をついているみたいだった。ただただ、どっちでもない不安定な日々をグラグラと平均台を渡るみたいに過ごすだけ。学校の、社会のゴミと化しているわたしがどうなろうと、学校も社会も何も言わない。だから、わたしは今こうしている。
ふと窓の外に目をやると、割と暖かい日光が差していた。わたし以外の人にとって、布団よりも日光のほうが好きなんだろうか。そう思うと、また仲間外れのような感じがして堪らなかった。
こんなはずじゃなかったんだ。いきたくない、とか思うような人生、好きで歩んでいるんじゃないんだ。
「いきたくない…」
「ああそう」
母はそう言って、会社に向かっていった。昔なら心配してくれたのに。
壁にかかっているセーラー服を見ると、余計に吐き気がした。ビリビリに破りたくなる衝動にかられ、思わず布団を叩きつけた。
わたしは悪くないのに。
そして、わたしはスマホを手に取った。通学のために、とくれたスマホ。もう今はその目的を全うすることなく、わたしのか細い生命線となっている。
一通りネットサーフィンを終えた後、母に『やっぱいく』とメッセージを送った。
その後、裸足で階段を降りた。
引っ越してきた時の梱包用の白いヒモを探して出した。もうだいぶ解かれていて、ひとつのまとまりではなかった。
そして、
`わたしは首をつった。`
`「逝きたい」「生きたくない」という叫びは、誰のもとにも届かなかったから。`
AIに感想を聞いたらめっちゃ心配されました やさしいね