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#03
--- 数日後の球技大会---
グラウンドでは、クラス対抗のドッジボールが行われていた。琥珀はベンチで応援しながら、少し離れたところで仲間と話している簓の姿を目で追う。
「簓、楽しそうやな……」
ふと漏らした独り言に、隣に座っていた結衣が「あんたも好きだねぇ」とニヤニヤしながら琥珀の肩を小突いた。
「な、なに!?」
「いやいや。付き合い始めてから、ほんまにわかりやすくなったわ。簓くんのこと、目線で追いかけすぎやって
「そ、そんなことあらへんもん!」
慌てて反論するが、顔が熱くなるのを止められない。
結衣は「はいはい」と笑って流し、再びグラウンドに目を向けた。
その時、グラウンドで簓が大きな声で笑い、手を振っているのが見えた。
「…ん?どうしたん?」
そう言って琥珀がグラウンドを見ると、簓が大きく手を振っている。
「琥珀〜!俺が活躍したら、ちゃんと見ててや〜!」
簓の声が、グラウンドいっぱいに響き渡る。周りの生徒たちが、一斉に琥珀の方を振り返った。
「っ……!ば、ばかぁ!なに言っとんの!」
琥珀は真っ赤になり、顔を手で覆う。結衣は腹を抱えて笑い、琥珀の背中を叩いた。
「簓くん、やるなぁ!公開イチャつきやん!」
「ち、違う……!」
顔を赤くして否定する琥珀だったが、簓は楽しそうに笑っている。
試合が始まると、簓は持ち前の身体能力を発揮して大活躍。相手のボールを華麗によけたり、鋭いボールを投げ込んだりするたびに、グラウンドからは歓声が上がった。
「流石やな、簓……」
琥珀は顔を赤くしながらも、その姿を誇らしく思った。
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休憩時間になり、簓が琥珀の元へとやってくる。
「どうやった?琥珀、俺の勇姿、ちゃんと見ててくれた?」
汗をかいた顔で、楽しそうに笑う簓。
「……別に、普通やったし」
素直になれずにそっけなく答える琥珀だが、簓はお見通しというようにニヤニヤしている。
「嘘つけ。顔真っ赤やん。俺のこと、見すぎたんとちゃうか?」
「そ、そんなことないもん!」
「はいはい。ほな、なんか奢ったるわ」
簓が顔を近づけてくる。
「な、なに……?」
ドキドキしながら琥珀が尋ねると、簓は琥珀の耳元で囁いた。
「今日の帰り、一緒にアイス食べに行こ」
くすぐったい声と息遣いに、琥珀の心臓が跳ね上がる。
「もう……!からかわんといて!」
琥珀が軽く簓を叩くと、簓は笑い声を上げた。
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その後、閉会式が終わる。
琥珀が片付けをしていると、簓が近づいてきた。
「琥珀、後で校門前で待っててな」
「うん」
頷く琥珀に、簓はにっこりと微笑む。
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放課後、校門前で簓を待っていると、後ろから声をかけられた。
「琥珀、待たせたな」
振り返ると、少し照れたような、けれど優しい顔をした簓が立っている。
「ほな、アイス食べに行こか」
そう言って、簓は琥珀の手を握った。
「……うん」
琥珀が握り返すと、簓は琥珀の手をきゅっと握り直した。
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「そういや、今日のアイス、どれにするか決めた?」
「……まだ考えてへんかった」
琥珀が顔を赤くしながらそう言うと、簓は琥珀の頭を撫でる。
「ふふ、じゃあ俺のおすすめ教えてあげるわ」
「もう、からかわんといて!」
琥珀が簓の胸を叩く。
「なぁ、今日さ、俺の家でたこ焼きパーティーせーへん?」
「え?」
「二人きりやで?」
いたずらっぽく、耳元で囁く簓の声に、琥珀の心臓は再び跳ね上がった。
終