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3 優しすぎるわ
みやめお #meo
「……ねえ、リリ。私、これからどうしたらいいのかしら」
リリは少しの間だけ黙り、そっと私の髪を撫でながら微笑んだ。
「お嬢様が何を望むのか、ゆっくり考えればよろしいかと。焦る必要はございませんわ」
「でも……このままじゃ、気持ちのやり場がなくて……」
「ですからこそ、お嬢様にふさわしい未来を、ご自身の手で選んでいただきたいのです」
その言葉はまるで、重たい霧の中に差し込む一筋の光のようだった。
たしかに、私は誰かに選ばれるのを待ってばかりいたかもしれない。
「……リリ。私、ちょっとだけ歩きたいわ」
「かしこまりました。支度を整えてまいります」
リリは立ち上がると、手早く外出のための羽織を用意してくれた。私はその間にゆっくりと立ち上がり、鏡の前に立つ。
「私も、愛しているわ」
リリに聞こえないような小さな声で心を込めてそう言った。
もしかしたら、聞こえていたかもしれないけれど、リリは気にかけないでいてくれた。
外に出ると、私たちの婚約破棄のうわさが村中に広がっていた。
「ミリアーナ様よっ!」
「ミリアーナ様!」
「婚約破棄されたの?」
「シェイ様が悪いの?」
子供たちが私たちのところに集まってくる。
親はにっこり微笑んでいる人も少しはいたが、私の心を気遣ってか、「こら」と戻す人が多かった。
「いいんですよ。……あのね、シェイは悪くないわ?」
「そうなの!?」
「ままー、お話聞きたいー!」
私は近くのベンチのところに座ると子供たちが戯れてくる。
「私のお父様が勝手に決めちゃったことなの」
「ミリアーナ様はシェイ様のこと、まだ好き?」
一人の子供が私に質問してくる。
私は少し迷ってからこくりとうなづいた。
「ええ。愛しているわ」
婚約が解消されたのに、と思った親も多かったかもしれない。
でもこんな小さい子たちになら本音を言えると思った。
子供たちは目を丸くしていたが、一人の女の子がにっこりと笑っていった。
「ミリアーナ様みたいにかっこいい人になりたい!」
かっこいいかしら、と少し困りながら私はにっこりとほほ笑んだ。