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4話 特務AI捜査班とは
「ブレイン・ネットはソラがちょっといじって入れたから大丈夫だ。それじゃあ、セキュリティエリアまで送るぞ。…レディ〜ゴー!」
『ティロリン♪』
機械が、古めかしい音を鳴らした。途端、mが呟く。
「なるほど…コードタイプか」
カタカタと滑らかなタイプ音が響き渡る。
「速い…」
誰かが思わず声を漏らす。だが、その声はmには聞こえていない。
「mにはこのぐらい朝飯前だと思いますよ。彼は、警視庁のセキュリティを易々と破っていましたからね」
A.I.D.A.が後ろから声をかけた。書類整理はもう終わったようだ。
そうこう言っているうちにmがエンターキーを叩いた。と、同時にパキンとガラス細工が割れたような音がした。画面には砕けたガラス片が写っている。
「完了っと…!」
「全く歯が立ちませんね」
そう言いながら、水無月もラストのギミックに取り掛かろうとしているところだった。
「ははっ!いいじゃないか。ようこそ。特務AI捜査班へ」
「ア、ドウモ」
天堂が握手をしようと手を伸ばすと、mは美桜に戻ってしまい、そそくさとA.I.D.A.の後ろに隠れる。
「美桜さんは人と話すのが苦手なようです」
「…美桜って呼ぶな」
唐突に、まるで話題を逸らすかのようにA.I.D.A.が言う。
「そういえば、美桜さんは本部の最新のテクノロジーに興味を示していましたね」
「あっ!そうだ。でも、こんなボ、ボロいとこに…」
「実はここが全部じゃないんですよ」
美桜は背後から聞こえてきた声にビクッと身を震わせる。雲居が帰ってきたのだ。
「ここの紹介は僕に任せてください!地下室があるんですよ…」
美桜がゴクリと唾を飲む。
「地下室…!」
そこには、その年齢に見合った笑顔が浮かんでいた。
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ギィィ…
重苦しい音を立てて木製の大きな壁が動く。ここは、はじめに天堂が座っていた椅子の後ろだ。一見何もないように見える壁を押し開いたその先は、先ほどまでとは全く違う景色が並んでいた。一面がうっすらとブルーライトに照らされており、サイバー犯罪対策課のような機器がズラッと配置されている。美桜は、あちこちに配線が散らばっているこの空間が大好きだった。
「うわぁ…ま、じ、かぁ…!あっ!あれってパナックの最新版モニターじゃん…!え?こっちはソナーの過去最高傑作とも言われているスピーカー!これもう出回ってないんだよなぁ…」
雲居のメガネの奥がキラリと輝く。
「やっぱりあなたには分かりますか!いやぁ〜ここではこの価値が分からない人ばっかで…葵さんは少し分かるんですが、このソナーのものなんてオークションでうん十万で…」
ゴツンッ…!
「それは後にしなさい。まず、|説明《せ・つ・め・い》」
雲居に水無月のげんこつが落ちる。
「はいぃ〜」
雲居は涙目だ。よほど痛いのだろう。
「コホン!え〜…まず、ここの存在は警視庁のトップとサイバー犯罪対策課の面々しか知りません。それは、私達が皆、かつて犯罪者だった経歴を持つためです。橘さんも秘密にしておいてくださいね。次に、私達に経費というものはありません。その代わり、事件を一つ解決するとその事件に見合った金銭が支払われます。その資金は何に使ってもいいのですが、3分の2以上がこういったデジタル機器に使われています。さらに、先ほども言った通り私達は秘匿された存在です。基本的に行動は隠密で行い、警察の力が必要な場合は特務AI捜査班という名前を借りて動きます。最後に、私達はサイバー犯罪組織Teriosを追うために結成されました。Teriosは、水面下で動いているのであまり世間には知られていませんが…」
「知ってる。その説明はいい。A.I.D.A.に聞いた」
「ああ、そうだったな。ソラ、美桜は独自でTeriosを追っていたんだ。だから、A.I.D.A.に勧誘を頼んだ」
天堂が美桜の頭の上にポンッと手を置く。
「半強制だったけど」
美桜はムスッとして天堂の手を払う。
「俺はあんたらより多くの情報を持ってる」
「勘違いしないでくれ。ただの犯罪者に全ての情報を与えると思うのか?」
いつの間にか隠し扉付近に背の高いスーツを着た男性が立っていた。外国人のような鼻が立った顔立ちに綺麗な金髪、角度によっては青色に見える黒い瞳を持っている。