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風変わりなシニカルジョーク
※雑
仄暗くも、どこか少年心を擽られるゲームセンター。
アニメチックな立て看板の脇に数台ながらも設置されたゲーム機。
奥には数名の高校生が見えるカウンター。銃声と酷似したゲーム音。楽しそうに笑う白衣を着た男。
男はゲームセンターの中で浮いているように白が基調された白衣を纏い、下に白のある黒髪に切れ長の赤茶色の瞳、瞳の下に泣き黒子をしているが、顔つきは端正で魅力を感じられた。
楽しんでいるのはシューティングゲームのようで、その整った顔つきからも楽しさは感じられる。
「フハハハ…!!どうした、この程度なのか?!」
そんな一言をかけては対戦相手の焦りや恐怖が見えるようだった。
上城渚はそんな男を一目見て、不思議そうに思った後、横にある別のシューティングゲームを見て、手を伸ばした。
後ろから男の熱中する声が続き、しばらくしてその声が止んでいく。
後ろであるというのにただならぬ雰囲気をひしひしと感じられ、ゲームへ手を伸ばすことがいやに怖気づいた。
聞こえる高笑い、対戦相手の悲鳴…やがて、それが誰かが逃げるような足音に変わり、玩具の銃声が鳴り止んだ。
男が渋々シューティングゲームをやめ、こちらを振り向く。
そのなんとも奇妙で綺麗な顔立ちに目を見張った。
そして、その男は開口一番、「今から俺と勝負しろ」と持ちかけてくる。
あまりにも身勝手なそれに開いた口が閉じず、そのまま男のペースに乗せられていく。
淡々と自己紹介をされ、北里基良と名乗る彼の顔と声が近くなる度に胸の鼓動が速くなり、耳まで赤く染め上げるような体温が上昇する感覚に包まれる。
そのまま会話が曲がりに曲がって、『連絡先』『交換』という単語が脳の中へ流れ込む。
うまくその言葉を理解するほど噛み砕けないまま、彼の手が携帯越しに触れ、口角が自然とあがる。
そうして、彼が口を開いた。
「お前が連絡を無視しても、地の果てまで追いかける」
その言葉に嫌な予感と、微かな嬉しさを感じた。
直後、同じような白衣の男が彼の名前を呼び、『研修医』と口にする。
彼がそれに反応して、去り際に「冗談だ、ではな」とだけ呟いた。
携帯に映る『北里基良』という名前と、触れた手に天にも昇るような幸福感を感じた。
それと同時に彼の終始、愛しいものでも見るような瞳が不思議に思った。