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その夢を待ち、輝く【request】
僕は花火だ______。
一件厳しそうだけど優しいおじさんが僕を作ってくれた。僕が"花火"だということを教えてくれたのはおじさんだった。
おじさんは花火職人という人らしい。
「ねぇおじさん!なんで僕たちをずっと作ってるの?」
「それは来年の花火大会の日に綺麗なみんなをみる為だ。」
「へぇ〜。花火大会の日になると僕たちって綺麗になるんだね!」
「あぁ、そうだよ。……じゃあ私はそろそろ時間だから。」
おじさんはいつも暗くなると「時間だから」って言って消えてしまう。もっとおじさんと話していたいのに。まだ僕についてわからないことがいっぱいあるから。
でも、日が沈んでからは自分より先におじさんに作ってもらった先輩花火と毎日色々なことを話しているから退屈はしない。
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「後輩く〜ん♪もっと話そうよ〜。な、いいだろ?」
「先輩…!距離近いですって!!あといつも何で僕ら花火はお酒飲めないのに飲んで酔っ払ったフリをしてるんですか!!」
「え〜…いいじゃんか〜、そんなにカツカツしないでよ」
先輩はちょっとだけ拗ねた。
「……まぁ、想像…したいからかな。」
「想像…。」
「綺麗になるってどんなかなって考えるのと同じさ。ちょっと夢をみたくて、みたいな。あはは。」
「夢…、先輩って夢、あるんですね」
「あるよ、そりゃあね。花火大会で1番輝く夢。」
「1番…輝く、ですか。そんなこと僕には思いつかなかったな。綺麗ってどんなのかなって考えちゃうくらいだから。」
「そっか。………後輩くんも夢作ろうよ。」
「じゃあ先輩と同じ夢にします。先輩のこと、好きなので。」
花火だから顔は無いが、先輩の頬が赤く染まった気がした。
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お祭りのワイワイとした雰囲気、水の音。
僕たちはおじさんと一緒にボートに乗っていた。
はじめて外に出て、僕たちが綺麗に弾ける日。
今日は花火大会だ。
「よ〜し、絶対1番綺麗に輝いてやる!」
先輩が意気込んでいた。でも僕だって、1番輝きたい。
「今日で君たちともお別れか。いままでありがとう。」
そう言っておじさんは僕たちを撫でた。
ボートが止まる。いよいよ輝くのか、僕たち。
他の花火たちがひとつずつ打ち上げられる準備をしていた。まだかまだかと待っているもの、向こう岸にいる人間が食べている焼きそばに興味をもつもの、怖くて震えているもの。花火にも性格は色々あるのだ。
「先輩、先に行きます?」
「いや、いいよ。後輩くんの輝いている姿をみたい。」
「え」「いいんですか?先輩の最後がこんな僕の姿をみたという記憶で。」
「いいんだよ別に。」
「そうですか。…なら、良かったです。」
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僕は筒に入れられた。
おじさんに火を投げ入れられた。
僕は打ち上がる。
空から地上の方をみてみる。
花火大会のお祭りの明かりが綺麗だった。
先輩を探す。
居た。真下だ。
「おーい!!先輩!!おーい!!」叫んでみた。
先輩には多分聞こえないけど、それでもいい。
…そろそろかな?僕が先輩より綺麗に咲けますように。
と思った次の瞬間、僕の意識は途切れた。
リクエスト「花火」です!気づくのが遅くなりましたが書かせていただきました
とても楽しい題材でした、ありがとうございます!!