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誰も知らないよ6
はなは、病院へと歩き出した
特に信用も置いてないのに
あのお兄さんに会いたくて
(人に会いたいって感情、初めてかも…。)
人は、壊れてしまったらまず、沢山のものを失う。
人とは違く感覚を覚える。また嫌われる。また自分を嫌いになる。悪循環から彼女は抜け出せるのか。
「はな。どこ行くの。」
お母さんに呼び止められた。
「あ…えっと…、病院。」
彼女は正直に言った。肩がすくむ。恐怖心にあう。
「なんで?この前行ったとこじゃない。あとあんた1人で勝手に行くのやめて?」
お母さんは少しだけ怒った。そりゃそうだ…とも思うが。
「お願い。会いたい人がいるの。」
それだけ言い残して彼女は走った。
ピロン
彼女のスマホが鳴る。
『誰?せめてそれだけ教えて』
彼女は迷ったが、正直にいうことにした。
『救ってくれた中学生のお兄さん』
秒で既読がつく。
『…怖いわ。それに、救われたって何?あんたやんでんの?』
これには彼女も黙るしかない。いつも自分を隠してきてたうえに、自意識過剰な彼女にとって、病んでるなんて言えば未来がなくなる。
『病んでない。私は健全じゃん。救ってくれたって言うのは、楽しいお話ししてくれたって意味だよ』
そう返信した。
既読無視で終わった。彼女は病院へ急いだ。
雨が降ってきた。夕立である。
ドンっ
「あ、…すみません。」
「あ、君はこの前の…。」
そう、たまたまあの時のお兄さんに会えたのだ。
「あ、あの!私、お兄さんに会いたくて病院に行こうとしたんです。」
彼(お兄さん)はにっこり笑った。
「本当かい。それは嬉しいな。ありがとう。ほら、あそこの屋根の下のベンチ行こう。」
彼女らは走った。
「話…聞いてもらえますか。とは言ったものの…何を話すのかぐちゃぐちゃで…」
「うん、いいよ。誰だってそんな時はあるよ。」