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4.プレイリスト
寮の自室は、唯一心を解放できる場所だった。
机に向かって課題に取り組むとき、いつもイヤホンをつけていた。
イヤホンから流れてくるのは、動画サイトのプレイリスト。
それは、罪木が作った、『ペルソナ』の手書き動画集だった。
ファンが愛を込めて作ったアニメーション動画。
それらをまとめた、彼女だけの秘密のマイリスト。
画面には、踊ったり、一枚絵だったり…
動画に込められた、愛と熱意が、心をじんわりと温めてくれる。
『女神異聞録』や『罪と罰』、『Q』や『5』をプレイはしていない。
それでも、動画を見ることで、彼女はシリーズを隅々まで知ることができた。
「ううっ…!みんな、こんなに…こんなに『ペルソナ』を愛してるんですね…っ!わ、私も、負けてなんかいられませんから…!」
罪木は、動画を流しながら課題のレポートを書き進めた。
時折、懐かしい『ペルソナ3』の楽曲が流れてくると、彼女は思わず目をつむり、
あの薄暗いタルタロスを仲間たちと歩いた記憶を呼び起こす。
そして、大好きな足立透の動画が流れてくると、笑みをこぼした。
罪木にとって、この手書き動画を流しながらの作業は、単なるBGMではなかった。
まるで、自分の部屋に仲間たちが集まってきてくれたような気持ちになる。
動画の中で軽やかに動き回るキャラクターたちの姿は、罪木の心の中で、
まるで本当の『ペルソナ』のように、孤独と戦うための力を与えてくれていた。
「えへへ…!なんだか、私…今、ペルソナを召喚しているみたいです…!」
誰もいない部屋で、罪木は小さな声で呟いた。
それは、現実では決してできない、けれど心の中ではいつも望んでいる、
もうひとりの自分を呼び出すための呪文だった。