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Φρούτο
あなたが煌めいて見えた。
1人、水仙の前に佇むその姿はは何処か昏いのに、その瞳は強く、目も眩むような光だった。
絶対に、手に入れたいと思った。
どんな手を使っても、なんて。柄にもないことがよぎった。
(まさか、そんなことはしない)
自分に人を愛する資格などない。存在もあやふやなままに父に呑み込まれ、恋した者も消してしまった私になど。
それでもーー
目が離せない。
あなたが、澄み切って見えた。
「お父様!あちらはどなた?」
回廊を横切った人物を指さし、幼い私は訊いた。
「ああ。コレー、あれはー」
ハデス。冥界の王であり、兄だと、父は言った。
黒い長い髪に黒い服。まるでその姿は人間の言う死神のようだと思った。
けれどー。
ふと、彼がこちらに目を向けた。
挨拶の代わりに、少しの笑みを浮かべた彼に、不意にどきりとした。
その瞳はどの色をも映す夜露のようで。
何故だろうかー
目が離せない。
帰ることになった彼女に、差し出したもの。
紅く、紅く熟れた、12粒の柘榴。
それを彼女は6つ、受け取った。
(我ながら小賢しい真似をする)
手の内に残った6つの粒。それはきっと、何も知らない彼女の、小さな遠慮。
(全て、口にしてくれたなら良かったのに)
でもきっと、それは私が愛する彼女ではないのだろう。
罪悪感と小さな不満と共に、6つの内の一粒の遠慮を呑み込んだ。
『少しくらい、食べて行きなさい』
そんな言葉と共に差し出された12粒の柘榴。
私はそれを、6つ摘んだ。
残りの6つは、彼のため。
(柘榴の粒が、私を思い出す縁になるかもしれない)
そんな微かな期待を胸にしたことを、彼はきっと知らない。
これは、何も知らない彼への小さな悪戯。
ひりついた喉を誤魔化すように、柘榴の粒を口に含んだ。
あなたは、何も知らない。
私の思いも、期待も。
でもだから、目を離せない。
END
東方と、あと書き始めたシリーズものが進まなくて逃避中の眠り姫です。
ハデペル、落ちた?ねえ、落ちた?これ読んでくれたそこの君!
まあ私なんかのじゃあ無理かあ。
文体が安定しておりません!作品ごとに変わりよる!何でだ!
でもハデペル良いの!良いんです!
これを機に検索かけてみて!
言っておきますが私のギリシア神話は創作ですから!原作のハデスもっと酷いから!酷いと言うか、何と言うか。
デメテル視点とか、ゼウスとか、ヘルメスとか忘れてた。また書くかなぁ…
(落ち着け、私)
あと最近文ストにハマっています。にわかですけど。
閑話休題。
兎に角!此処まで読んでくれたあなたに、心からの有難うを!