𝐈𝐟〈桃太郎〉4

「鬼退治のお供になってくれるなら、きびだんごをあげるよ」 桃太郎はそう言いました。 「もちろんです！　ぜひお供させてくださいな！」 犬はそう言って、桃太郎と一緒に歩き出しました。 しばらく歩いていると、今度は猿に出会いました。 「桃太郎さん桃太郎さん、お腰につけたきびだんご、1つ私にくださいな」 それを聞いた桃太郎は、猿にきびだんごを ▷渡した ▶︎渡さなかった ……「渡さなかった」を選択しました。…… 渡しませんでした。 桃太郎は、おばあさんが作ってくれたきびだんごが、鬼ヶ島に着く前になくなってしまうのではないかと、心配したのです。 「ごめんな、もうすぐきびだんごがなくなってしまいそうなんだ。鬼退治が終わったら、おばあさんにたくさん作ってもらうから、それまで待っててくれ……！」 「——そうですか。分かりました。じゃあ、約束ですよ……！」 「うん。必ず渡すから！」 そう言って、桃太郎は猿と別れました。 そして、桃太郎は犬と一緒に鬼ヶ島に向かいました。 ☆★☆ 「ここが、鬼ヶ島か……」 「そうみたいですね……」 鬼ヶ島に着いた桃太郎と犬は、どのように鬼を倒そうかと考えました。 「君は——、大きな声で吠えて、鬼を誘き寄せてくれないか……？」 「分かりました。そこから、桃太郎さんはどうするのですか？」 「僕は、鬼が君に気を取られているスキに、不意打ちで鬼を倒そうと思う」 「それはいいですね！　じゃあ、さっそく始めましょうか？」 「うん、そうしよう」 桃太郎と鬼は、作戦を開始しました。 「——ワンワン！　ワンワンワン！」 犬が思いっきり吠えます。 「ウワン！　ワンワン！　グァン！」 ——いいぞ……！　このままいけば……！ 桃太郎は思いました。 「ワンワン！　ワオーン！」 犬が大きく吠えたその時。 「…………だ」 奥から、微かに声が聞こえました。 「——ッ！」 「ワンワンワン！　ウワォーン！」 「……か……のか…」 「な……、…れな……」 「だれ…が……にきた……」 「ワンワン！」 「——んだよ！」 ——ギィー……。 「お前は誰だ！　どこから来た！」 と、大きな門が開き、大きな鬼が言い放ちました。 「グワン！　ウワン！」 「んだてめぇ。犬一匹で何しに来た」 「ウォン！」 騒ぎを聞きつけ、奥から数人の鬼が出てきました。 鬼たちは、犬を見るなり 「は？　なんだこいつ」 「いぬ……？」 「犬じゃねぇか。やけに攻撃的だなぁ」 「俺らを倒しにきたのか？」 「さすがにこいつ一匹じゃあ無理だろ」 と、口々に思ったことを話し始めました。 みんな犬に興味津々です。 ——桃太郎さん、今ですよ！ 犬は。心の中でそっと言いました。 ——分かった。ありがとう！ 犬の思いが通じたのか、桃太郎は薄く微笑みました。 そしてすかさず 「————」 鬼たちの中に入っていきました。 そして、一人の鬼をねじ伏せました。 「うわああっ！？　な、なんだよぉ！」 「おま、どこから出てきやがった！」 「こんなやつ、いなかったじゃねぇか……」 いきなり飛び出した桃太郎に、鬼たちは面食らっています。 「と、とりあえず戦え！」 「お、おう！」 「そうだな！」 鬼たちは、体制を整え始めました。 しかし、桃太郎の方が有利なのは変わらず。 「お、お前はなんでここに来たんだ！」 鬼が、桃太郎に問いかけます。 「それは——」 ……それはっ。 「——あんたら鬼が、みんなに迷惑かけてるからだろ！」 「————」 鬼たちは、押し黙りました。が、しかし。 「なんだよ！　そうでもしないと俺らが生きていけないんだよ！」 「こっちのことも考えろ！」 と、開き直って攻撃してきます。 桃太郎1人に対して、鬼たちは大勢。 だんだんと、体制を整えた鬼たちの方が優勢になっていきます。 と、その時。 「——おいおい、なんだよこの騒ぎは」 ……門の中から、偉そうな鬼が出てきました。 「——ッ！」 「あぁ？　なんだこいつ」 その鬼は、桃太郎を見るなりそう言いました。 すると、他の鬼が答えます。 「こいつは、俺たちに恨みを持ち、攻撃して倒そうとしてくるやつです」 「はあ。なんだよそれ。こんなやつに手こずってんのか？」 「そ、それは……」 「こいつなんか、俺が始末してやるよ」 「——！　なっ」 そういうなり、偉そうな鬼は大きな金棒を振り上げました。 「ちょ！　ちょっと待ってくれ！」 「っるせぇな。お前は俺の敵。消すしかないだろ」 そして、桃太郎に躊躇なく振り下ろします。 「——ッ！　お、おま……」 「チッ、まだ生きてやがる。何なんだよこいつ」 「ぼ、僕は、まだ……」 「うるせえっつってんだろ！」 「…………」 「これで、終わりだ——」 ——黒い。黒い黒い黒い。 真っ黒な世界で、犬が吠える声が微かに聞こえました。 彼にはそれが、「ごめんなさい」て言っているように聞こえました——。 --- ▶︎渡した ▷渡さなかった ……「渡した」を選択しました。…… 渡しました。