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雪炎異変ノ章 後編
「久しぶりじゃの、李子。なぜ呼んでくれなかったんじゃ」
いつの間にか、女性が来ていた。
「え…」
「紹介するね、こいつが地名伊代」
「ふぅん…よろしく」
見るからに胡散臭いやつだ。
「こちらこそ。それで、今日はどこへ行くのじゃ?」
「地霊殿。博麗大結界を超えなきゃいけないけど、いける?」
「かなり強い結界じゃが、乗り越えられるじゃろ」
偉そうな態度が気に食わない。まあ、これで異変が解決するなら。
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「こんにちは」
ピンク髪で、ふわふわした目が浮いている。
「あっ!?ここが、ジレイデン?」
伊代に問いかけても、フッと笑うだけ。
「わたしは古明地さとりです。何か要件を」
「雪町翠って知らないか」
「雪町翠…はい、わたしの地霊殿で働く幽霊です」
確信した。
「そいつが、異変を起こしてるんだ。こっちの世界で、寒い異変が起こってる」
「そうなんですか…。なるほど」
何がなるほどなのか、あたしにはわからない。
「あとで言っときますね。たぶん、気まぐれでしょうね。しっかり言っときますから」
「じゃあ助かる。お願いだ」
「はい」
礼儀正しそうな人だった。
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すっかり暖かくなった。由有の風邪も普通に治った。
「ね、だから言ったでしょ?ぼったくられなくてもいいって」
「はいはい。分かったよ。それより、また行こうよ、地霊殿。そこの幽霊の幽以ってやつが、由有のこと知ってたらしい。今日来るってさ」
「はあ?準備できてないから」
翠が、「由有さんってすごい人って噂!」と言っていた。たぶん、どこかで幻想郷に行った時の噂だろう。
「よしと、迎えに行きますかね」
「もう行くのか?」
「まあ、つまらなかったからね」
布団から身を起こした由有は、微かに笑っていた。その微笑みは、間違いなく、誰かにもとめてもらっているという意識からだった。