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FridayNightFunkinの世界に飛ばされた人間
「なんで、こんなことに……」
目の前に広がるのは、どこか現実離れしたポップでサイケデリックな街並み。色彩が濃すぎるほど鮮やかで、ネオンのような空に、浮かんだような地面。そして、頭が勝手にビートを刻みたくなるような、奇妙なリズムが風のように流れていた。
私は、ごく普通の学生だったはずだ。
いつも通りスマホでFNFのMODを漁って、かっこいいリミックスをYouTubeで聴いて、なんとなく眠くなって布団に潜った。
──それだけだったのに、目が覚めたらこの世界にいた。
「ねぇ、キミ……見ない顔だね?」
突然、耳に響いたのは、まるでシンセサイザーみたいに歪んだ声だった。
振り返ると、そこには──見覚えのある青髪の少年。
そう、彼は間違いなく「Boyfriend」だった。
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「……あの、本物?」
思わず口に出してしまった。
目の前の彼──Boyfriend(通称BF)は、無邪気に笑ってマイクを掲げた。
「マイク、持ってる? それがないと勝負できないよ!」
「ちょ、ちょっと待って……勝負って何の……?」
そんな私の困惑なんておかまいなしに、画面の向こうで見ていた通りのイントロが流れ始める。
「まさか、音ゲーの世界に入るなんて……」
夢だとわかっていれば、もっと可愛い格好してくるんだった、と意味のわからない後悔をしている間にも、ビートはどんどん進行していく。
「よし、キミもラップバトルに参加だね!」
──逃げ場なんて、ないみたいだった。
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